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天才小学生と真選組の方々。

作者:沖田
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総悟の苦悩

 
前書き
前回の「悲しみとかすかな希望」も、今回も総悟sideです。
前回前書きに書かずに更新してしまったので、一応書いておきましたが、今一度ここで書かせていただきます。
どうもすみませんでした。 

 
俺たちは一旦家に帰ると、作戦を綿密に練った。
ちなみに小五郎さんは「ヨーコちゃんのドラマがある」、関西弁の女の子とロングヘアの女の子は「夕飯の支度」、ショートカットの女の子は「恋人と電話するから」とそれぞれ理由をつけて参加していない。
作戦はこうだ。
まず少年探偵団が、恋奈の病室に入っていく男の人を見つけたら、「ハンカチを落としましたよ!」と言って接触する。
そしてそのあと、恋奈(今は怜愛だが)の記憶をなくす前のことについて聞く。
それを聞かせてもらったら俺たちが出て行き拘束し、朧の居場所や動機などを聞き出す。
そうしたらそこに奇襲をかける。ただそれだけだ。
それだけなのに…
俺はなかなかやる気を出せなかった。
はかせの家から出て行く時、土方さんに
「気が進まないならやらなくてもいいぞ、総悟。」
って澄ました顔(俺が一番嫌いな顔)で言われた。
ムカついたけど、確かに、とも思った。
気が進まない理由だってちゃんとわかっていた。
けれど、恋奈のためにもやらなければいけないってわかっていた。
そして気づけば、昔の記憶に浸っていた。

それは俺がまだ5歳の頃。「姫」と呼ばれる夜兎族の女の子がいると町の噂で聞きつけ、その子の元へ行った。
そして負けた。
けど、悪い気はしなかった。むしろ嬉しかった。
「姫」と呼ばれているからには高嶺の花のような存在だったのに、その子に剣術を教わっている。そして、友達のように接してくれている。
嬉しさでいっぱいだった。
しばらくすると俺たちは唯一無二の親友になり、二人っきりで外に出歩くことも多くなった。
恋奈の本名も知って、俺は恋奈のことで知らないことはもうないと思っていた。
けれど違った。
2人が10歳だったある日のこと。
俺はいつもの待ち合わせ場所で恋奈を待っていた。
けれど、恋奈は来なかった。悲しむというよりも、驚いていた。待ち合わせに遅れたりするのには恋奈はずいぶん敏感で、自分も遅れたり来なかったりすることがなかったからだ。
恋奈の身に何かあったんじゃないか。そう思って次の日、恋奈の家に行った。
そこには恋奈の兄である阿伏兎しかおらず、俺が阿伏兎に恋奈はどこにいるかと尋ねると、
「ああ、あいつなら裏山でお父さんと特訓してるぜ」
と澄ました顔で言った。いつものことだ、とでも言うように。
裏山に行くと、そこには特訓というより、暴力を受けている恋奈がいた。お父さんだけじゃなく、他の夜兎にまで。
助けたい。そう思ったが、自分の足が動かなかった。
それで夕方頃になってやっとお父さんたちがいなくなると出て行って、自分の家に連れ帰り看病をした。
姉上は何も聞かずに看病してくれて、それもあってか恋奈はすぐに良くなった。
やっとの事で起き上がった恋奈が口にした言葉は、「私を看病してたらあなたたちまで危なくなる。私を外に戻して。」だった。
俺と姉上は動揺した。外に戻せば、危なくなるのは俺たちじゃなく恋奈の方だ。
けど、姉上は言った。
「そう。あなたはそれを望んでいるのね。」
とたった一言だけ。
その時俺は見た。恋奈が張り裂けそうな目をしたことを。
本当は私だってこんなことしたくないのよ、という目をしたことを。
その後恋奈は結局俺たちの家に残ることになった。
剣術も家の中で教えてもらった。
ご飯も一緒に食べた。
幸せだった。
けれど、そんな幸せがいつまでも続くはずもなく、俺たちが留守の時を見計らって、恋奈はお父さんと夜兎族たちに連れ去られてしまった。
俺は自分を責めた。恋奈がどんなに怖かったかを想像した。そして強くなることを決意した。
それから月日が経ち、強くなった俺は土方さんとともに真選組をやっている。
そして途中から恋奈が入ってきた。
成長した恋奈は、多くの苦しみを抱えていた…。

俺は我にかえった。いつの間にか俺たちは隠れ、少年探偵団が日乃下黄河(高野黄河)と見られる人物に接触しているところだった。
俺は昔の記憶の全てを振り払うように首を振った。そして目の前のことに集中する。
探偵団バッジが光り始めた。聞き込み完了、の合図だ。
俺たちは顔を見合わせて病室に入り、日乃下黄河を捕らえる。
「武装警察真選組でさぁ。おとなしく降伏しろぃ。」
「し、真選組!?し、しかし朧は…」
聞く前から吐いてやんの。こいつ、事情聴取は大変じゃなさそうだな。
手錠をかけ、病室から連れ出そうとした時…
「お父さんを」後ろから恋奈の声が聞こえた。「どこに連れて行くつもりですか?何かしたんですか?」
みんな答えられなかった。
今の恋奈にとっては日乃下黄河(このひと)は自分の親であり、一番信頼の置ける人なのだ。
その人を、なぜ突然現れた子供達と黒い軍服を着た男の人たちに捕まえられなきゃいけないのか。とても疑問に思っていると思う。何て言葉に出したら恋奈が傷つかないか、みんなは一生懸命考えていた。
「あのねお姉さん」コナンが静かに言う。「今ここにいるお父さんは、本当のお父さんじゃないんだ。本当の保護者は僕たちだし、お姉さんが記憶をなくす前は怜愛(れいあ)じゃなくて恋奈(れな)って名前だった。ここにいる人はお姉さんから記憶を奪った張本人。だから逮捕しなくちゃいけないんだよ。」
後ろを振り向くと、恋奈は納得したように頷くと、そのままベットにもたれてしまった。 
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