FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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真価
前書き
今週のFAIRYTAIL読んでやってみたくなった会話。
シャルル「はいこれ、ウェンディのだけど」
シェリア「ありがとうシャルル。あれ・・・きっつ・・・」
ウェンディ「・・・」
シリル「じゃあ着るな!!」
シェリア「ちょ!!ごめんごめん!!お願いだから着させてください!!引っ張らないで!!」
っていう感じのことをしてみたい(笑)
『ガジルです!!どこからともなく現れたガジルが、大ピンチのシリルたんを救いました!!』
「ガジルさん・・・」
目の前に現れた黒髪の青年を見て、どこか安堵した表情を浮かべるシリル。ガジルはそんな彼に構うことなく、金色の髪をした少年の方を向く。
「お前ら長く戦いすぎなんだよ。ちょっと暇過ぎるから、俺が相手してやる」
肩をコキコキと回しながら笑みを浮かべているガジル。彼はシリルに目も向けずに話しかける。
「おめぇはちょっと休んでろ」
「ひ・・・1人じゃ無理ですよ!!」
もはや人が戦えるのか疑問なレベルにまで強くなってしまったレオン。そんな彼に無謀にも1人で挑もうとするガジルにシリルが声を張り上げる。
ガジルはそれに対し、指を3本立ててシリルに見せる。
「3分だ。3分だけ時間を作ってやるぜ」
「さ・・・3分?」
「そうだ。その3分でなんか対策考えろ」
そう言った彼の頬から、何かが地面にポタッと落ちる。それを見てシリルは察した。ガジルも自分ではレオンには勝てないとわかっているのだと。
ただ、彼は比較的傷も少なく、ローグとの戦いも早々に片をつけていたためにある程度魔力も回復している。倒せなくとも、時間を稼ぐことはできる。その間にシリルがレオンを下す作戦を生み出してくれると信じての行動なのだ。
「俺相手に2人がかりとか、買い被りすぎでしょ」
「だろうな」
表面上は余裕綽々なガジル。だが、心の中では相当にビビっている。その証拠に、額から流れ出る汗が止まらない。今までそんな彼の姿を見たことがなかったシリルは唖然としていた。
「鉄竜剣!!」
不安な気持ちを振り払うかの如く、速攻を仕掛けるガジル。レオンはそれを軽く頭をずらしただけで交わしてしまう。そこから、彼はガジルの視界からいなくなる。
「がはっ!!」
いなくなったのと同時に、ガジルが口から血を吐き出す。その彼の背後には、目の前にいたはずのレオンが仁王立ちしていた。だが、そんな彼にも先程までとは違う現象が襲っていた。
「っ!!」
右手を押さえ、表情を歪ませるレオン。彼の手は少しではあるが赤くなっていた。
「モード・鉄影竜!!」
彼がそうなった理由はこれだ。ガジルがローグの影を取り込んだことにより、手に入れた形体。その姿は全身が鉄で覆われており、通常時のガジルよりも防御力が上がっていたからだった。
「鉄影竜の・・・咆哮!!」
怯んでいたレオンに対し、すぐさまブレスを叩き込む。レオンは完全に周囲に対する警戒を怠っており、一瞬のうちにブレスに飲み込まれてしまった。
「ギヒッ。どうだ!!」
自分の技を命中させたことに得意気な態度を取るガジル。彼のブレスは強烈で、周りにポツポツと残っていた建物をいくつも貫くものだった。それなのに・・・
「すごいなぁ。シリルとほとんど変わらないパワーだ」
レオンは平然と、ブレスを受けた位置から一歩も動くことなく立っていた。それも、腕をクロスさせてガードしていただけで、魔法などは一切使っていた様子はなかった。
「マジで化け物みてぇになってんじゃねぇか・・・おい・・・」
この発言にはみんな「お前も人のこと言えねぇよ」と内心思っていたが、それを口に出すものはいない。だって本当にレオンが化け物のように強くなっているのだから。
「ならこいつはどうだ!!」
影へと体を変換し、地面に消えていくガジル。レオンは予想外の出来事だったらしく、辺りをキョロキョロと見回し、見失ったガジルを探していた。
「鉄竜棍!!」
レオンの背後に回り込み、影の中から鉄竜棍を打ち出すガジル。それは本来であれば、レオンの後頭部を捉えられるはずだった。
パシッ
「!?」
しかし、その攻撃はあっさりとレオンに交わされ、あろうことか彼の手に捕まれてしまう。
「レオンの奴・・・戦闘力だけじゃなくて勘まで鋭くなってるの!?」
2人の戦いを見ていた少女のような少年が驚愕しながらそう言う。
鉄の棍をガッチリと掴んだ金髪の少年は、両手でそれを持ち直すと、背負い投げでガジルを影から引きずり出す。
「ごはっ!!」
影から引きずり出されたガジルは背中から地面へと落とされてしまう。背負い投げもかなりの威力で、彼が叩き付けられたその場所は大きく凹んでしまっていた。
「チッ・・・クソが・・・」
体を起こそうと力を入れるガジル。だが、あまりにも衝撃が大きかったようで、なかなか起き上がることが出来ない。それを見下ろしているレオンは余裕の表れなのか、彼が起き上がるのを何もせずに待ち構えている。
「やっぱりタフですね、妖精の尻尾の皆さんは」
「ギヒッ。当たり前だろうが」
ようやく起き上がることができたガジル。しかし、彼はすでに全身ボロボロ。出血量も多いため、かなりふらついている。
「そろそろ本気で来た方がいいですよ。じゃないと俺なんかに負けちゃいますから」
「望むところだ」
過去のトラウマのせいで全く自分の力をわかっていないレオン。自分が圧倒しているのは相手が弱いからでも油断しているからでもない。ただ、彼が強すぎるからなのだ。
「鉄竜棍!!」
腕を鉄に変え、レオンの腹部を狙うガジル。しかし、それすらもあっさりと避けた少年は、魔力を足へと集めて回転蹴りをお見舞いする。
「氷結!!」
「ごはっ!!」
鉄でできた体をあっさりと粉砕し、敵に直接的なダメージを与える。その強烈な蹴りに意識が飛びかけてしまった鉄の竜は、たまらず尻餅をついた。
「ゴホッ・・・ゲホ・・・」
咳をするたびに彼の口からは血のしぶきが吹き出す。それを遠目から見守っていた水髪の少年は、懸命に頭の中で作戦を考えていた。
(どうしよう・・・どうすればレオンに勝てるんだ・・・)
まだ本気を出しているようには到底思えない氷の神に、恐怖心が芽生えない訳がない。戦っている青年も、次に戦う少年も、手の震えが収まらない。
それでも黒髪の男は立ち上がり、必死に時間を稼ぐ。それぐらいしか今の自分には出来ないのだとわかっているから。もし何か突破口があるなら、それを見出だせるのはシリルしかいない。
(くっ・・・魔力の流れならなんとか見えるかも知れないけど・・・動きが速すぎて反応が・・・)
そこまで考えて少年はある文章を思い出す。
「『相手の魔力の流れを見極め、動き、魔法の強さ、種類を見切る。さらにはその魔力の流れを自らのものに出来ればその魔法に“似た”魔法を使える・・・可能性がある』・・・だったかな?」
ポーリュシカから与えられた自分宛の魔導書。その一文を思い出した彼の頭の中に、1つの作戦が浮かぶ。
(魔力の流れを見極めることができて、自分の魔力も同じように扱えればその魔法に近い技を繰り出せる可能性があるんだったな・・・もしかしたら、それが今回レオンを攻略する糸口になるかもしれない)
誰かレオンの魔法に対抗できる魔法を扱う人がいて、それを自分が繰り出せれば勝てるかも知れないと考えたシリル。しかし、すぐにあることで行き詰まる。
(誰の魔法ならあれに対抗できるんだ?)
ジュラの岩鉄壁もカミューニの波動の章もあっさり破ってしまうであろうレオンの魔法。例え誰かの魔法が出来ようとも、彼のパワーに対抗できなければ意味がない。
(誰だ!?誰ならレオンに対抗できる!?)
必死に頭の中で様々な人物の魔法とその時の魔力の流れを思い出すシリル。しかし、これといった魔法を使える人物が思い浮かばない。
「ぐああああああ!!」
シリルが悩んでいる間にも、強大すぎる敵に挑んでいるガジルは打ちのめされていく。
『あぁっと!!ローグを圧倒した鉄影竜のガジル!!彼をもってしても、氷の神!!レオン・バスティアを止めることは出来ないのか!?』
実力に差がありすぎる両者。それでもガジルは歯を食い縛り、起き上がろうと足に力を入れる。
(早く!!早くしないとガジルさんが・・・)
どこから血が出ているのかわからないほど真っ赤になっているガジル。そんな彼を見て焦り、何も思い付かない自分に苛立ちを募らせるシリル。だが、
「あ・・・」
そんな彼の目に、1人の少女が飛び込んできた。銀色の長い綺麗な髪をした、見た目はお人形のように美しい少女。しかし今は、ある人物の圧倒的な一撃を受けて全身傷だらけになっており、目が覚めたのに起き上がることもできず、ただ地面に這いつくばっている。
「ソフィア・・・」
ボソリとその少女の名を呟く少年。その少女を見て、ある方法を思い付く。
(これならいけそうだけど・・・)
何か思い付いたようだが、どこか不安気なシリル。彼はもっと確実な方法がないかさらに頭を回転させる。
(俺がグラシアンさんたちみたいにいつでもドラゴンフォースを解放できれば・・・)
同じ第三世代にも関わらず、なぜか自分だけはドラゴンフォースを自らの意志で解放させることが出来ないシリル。それにはちゃんとした理由が存在する。
1つは経験の不足。シリルがバトルをするようになったのは連合軍を組んで六魔将軍を討伐した時が初めてなのである。
さらには7年の凍結封印。スティングやローグ、グラシアンの3人はその7年の間も何度も戦いを繰り広げることで経験を積んできた。しかし、シリルが戦いを経験した回数は二桁に届くか届かないか。わずか1年程度の期間にしてはよく戦っている方だが、それでも明らかに回数が少ない。
2つ目は滅竜魔法の魔水晶。スティングたちは親であるドラゴンから直接もらい、幼い頃からずっと付けていた。しかしシリルはそうじゃない。エドラスの父を通し、カミューニからその魔水晶を与えられた。
つまり付けていた期間が明らかに少ないのだ。さらには目に入れるという特殊な形のものなため、常に発動しているのかと聞かれれば素直に首を縦には振れない。
これらの理由でシリルはまだ、自らの意志でドラゴンフォースを解放できない。それをシリルが知ることは、まだ先のことであるが・・・
(これだけだと足りない・・・もっと効果的で確実な対策は・・・あれ?)
そこまで考えてシリルはあることを思い出す。以前対戦した滅竜魔導士が使っていた、ドラゴンフォースではない強化の魔法。
(あれならいけるんじゃないかな?)
目を閉じ、自分が見てきた4人の魔力の流れを思い出し、自分の体の中で同じような流れを作れるようにイメージをしていく。
「ぐはっ!!」
レオンの高速攻撃に反応できず、脇腹を掠め取られたガジル。一方的な展開。氷の神の猛攻についに耐えきれなくなった鉄竜は、膝をついて地面に倒れる。
『あぁっと!!妖精の尻尾ガジル!!ついに限界か!?』
「ガジル!!」
ドムス・フラウの応援席で、彼の戦う姿を見ていた1人の少女は、なす統べなくやられ、力尽きたガジルを見て涙を浮かべて彼の名前を叫ぶ。
「がはっ・・・くそ・・・」
それでも起き上がろうと四つん這いになるガジル。しかし、そこから先の体勢に持っていくことが出来ない。
「手加減しようとすると、結構難しいな・・・」
自身の左手を見てそう呟くのは金色の少年。彼はガジルの鉄でできた体も一瞬で貫こうと思えば貫けるのである。しかし、それはつまり敵を殺してしまうことに等しい。1年前、自分の魔法で大切な1つの命を奪ってしまったレオン。彼は二度と同じ過ちを繰り返さないために、強くなりすぎた今の自分を制御しているのだ。
『さすがに苦しそうなガジル!!激しく呼吸を繰り返すだけで全く動く様子がないぞぉ!?』
『レオンくんがあまりにも強すぎる。おまけに、彼は直に魔法を体に打ち込むのではなく、掠らせるように攻撃を繰り出しているからねぇ』
『確かに。あんなのをまともに受けてしまえば大惨事になってしまうカボ』
実況席もレオンがあえて自分の能力を最大限に生かす行動をしていないのはわかっていた。もし彼の一打が決まっていれば、すでにシリルもガジルも立ち上がるどころか、この場に生存できているのかもわからない。
「でも・・・さすがにそろそろ・・・!!」
ゆっくりと振り返ったレオンの目に、1人の少年が飛び込んでくる。少年は手をつき身動きが取れない黒髪の男の前に立ち、構える。
「ガキ・・・おめぇ・・・」
「ありがとうございました、ガジルさん」
まともに呼吸するのも苦しくなっているガジルに軽く視線を落とし、お礼を言ってから目の前の脅威を見据えるシリル。
「1回だけ・・・使える手が思い付きました」
真剣な眼差しの少年。彼は圧倒的な力を誇るレオンにビビることなく、真っ正面から向かい合う。
「確実かどうかはわかりません。でも、これが決まれば・・・間違いなくレオンの精神を揺さぶれます」
誰にも止めることができない少年の猛攻。それを止めるためには、彼の力を上回るよりも先に、彼の精神を乱して好機を手に入れようと考えたシリル。彼はそう言うと自身の水と風を左手に纏わせていく。
「来い!!レオン!!」
一体どんな作戦なのかは誰にも予想がつかない。だが、シリルは何やら自信満々な表情でレオンを挑発する。
「いいよ。全力の気持ちには全力で答える。それが“愛”だって、シェリアが言ってたから」
片足を一歩引き、半身の体勢になるレオン。彼は後方に位置する腕に氷の渦を纏わせていく。
「滅神奥義!!」
大気が震え、辺りが凍り付いていく。まるでレオンの腕に周囲の魔力が全て集まっているかのような、絶対的な力が彼の元へと集まっていく。
「ま・・・待って!!レオン!!」
「それは危険すぎますわ!!」
「また同じことを繰り返すつもりかい!?」
蛇姫の鱗のラウル、シェリー、オーバが声を張り上げ、レオンに魔法を止めさせよう叫ぶ。3日目のバトルパートでのシェリアの滅神奥義の時と同じように。
「ヤバイ!!あいつの魔法の放つ位置次第ではここも危険だぞ!!」
「全員伏せろぉ!!」
ユウカとトビーの叫び声に、その声が聞こえた人たち全員が頭を抱え、体勢を低くする。ただ、やはりどうなるのか気になるようで、魔水晶ビジョンに視線が集中していたが。
「これで終わりだ、シリル。楽しかったよ」
そう呟いたレオンの表情は、戦いの最中とは思えないような笑顔だった。
「絶対零度!!」
引いていた左腕を前へと勢い良く突き出す。すると、まるで台風のように渦を巻いた冷気の塊が、一直線に伸びていく。
「や・・・やべぇ!!」
解き放たれた強烈な魔法。それを見たガジルは思わず声を上げる。放ち方しだいではクロッカスにある華灯宮メルクリアスすら破壊してしまいそうな魔法が、1人間に挟んだだけで自分の元へと向かっているのだ。恐怖を感じない方がおかしい。
「あとは・・・自分を信じるだけ!!」
しかし、恐怖を感じる後ろの人物とは対称的に、シリルは一切動じていなかった。今やるべきことは、この魔法をなんとかして、突破口を作ることが大事なのだと、彼はわかっているから。
「ここだ!!」
魔力を帯びた少年の細い腕が、一直線に飛んでくる氷の渦を捉えた。
「はあああああああ!!」
必死に力を集中させ、何かをしようとしているシリル。そして、彼が左手を横に振るうと、
ヒュンッ
レオンの奥義がその方角へと軌道を変化させた。
「は?」
何が起きたのかわからないといった表情のレオン。そんな彼の最強の魔法は、街にセッティングされている魔水晶ビジョンを、
ドガァン
粉砕した。
『『『何ーーーーーっ!!??』』』
これには驚愕するしかない実況席。その理由は至ってシンプルなものだった。
『今大会で導入してる魔水晶ビジョンは、聖十大魔道の魔導士が攻撃しても壊れないほどの強度を誇るように設定されているんですよ!?』
『それをあんなあっさり粉砕するなんて!!カボ』
今まで何があっても破壊されることがなかった魔水晶ビジョンが、わずか一撃の衝撃で粉砕されてしまったからだった。しかし、驚くチャパティとマトー君の間にいるこの老人は、別のことに驚いていた。
『いや・・・それ以上に驚きなのは・・・シリルくんがあの魔法を弾いたことじゃないかね?』
『『あ・・・』』
そう、シリルとガジルに向かっていたレオンの滅神奥義は、少年の腕に当たり、軌道を変えられてしまったのだ。
その少年は滅神奥義を受け止めた左腕を押さえながら、苦痛に顔を歪ませる。
「いっててて・・・さすがにパワーがありすぎだな。だけど・・・」
ニッと笑みを浮かべ、レオンに目線を送るシリル。そんな彼の周りには、水色と白が混じったオーラが出現していた。
「まさか・・・こいつは・・・」
目の前の少年のやっている魔法に心当たりのあるガジルは、目を点にし、その姿に固まっている。
「返し魔法に・・・ドライブ?」
ソフィアの返し魔法と三大竜の魔力増幅の魔法、ドライブ。
「このターンは俺の勝ちだぜ」
嬉しそうに微笑むシリル。彼はこの土壇場で父の授けた目の真価を発揮させたのだった。そして、2人の幼き天才の戦いは、終焉を迎えようとしていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
やっと・・・やっとあの一文の回収ができたぁ!!
レオンの魔法をソフィアの返し魔法で弾く。ここまでは前から考えていたのですが、それだけだとちょっと厳しいなと思い、何かもう1つ加えられないかと思っていたのです。
そしたら以前、読者の方から「スティングたちのようなドライブ系統の魔法を覚えて欲しい」という意見があったのを思い出し、使わせてもらっちゃいました。提案してくれた方、ありがとうございます。
そしていよいよ、次回で2人の死闘も完結です。納得いく結末になるかわかりませんが、もうこれでいくと決めてしまったので、ご了承ください。
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