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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第38話 一か八か

すでに土方に退路はなくなっていた。
おそらく突きを繰り出しても威力のないものなどかわすことなど高杉にとっては容易いことだし、胴を巻く切込みをしたとしても同じことだと土方は本能的に察していた。
 土方はただ高杉を睨みつけ攻撃が来るのを予測し、回避することだけに集中することしか手はなかった。
 高杉はにやりと笑うと右拳に気を込めて土方目掛けて繰り出した。
 土方は間一髪に、それをかわした。
(この大木だ、拳は砕けたはず)
 が、高杉の拳は砕けなかった。その反面、大木が音を立ててへし折れた。
 (なんて拳だ。こんなの喰らったらひとたまりもないぞ)
 土方の背筋に大量の嫌な汗が噴き出した。
(だが、弱気になっては駄目だ。奴の攻撃を交わし続け)
 土方は一層強く高杉を睨みつけた。
「たかすぎぃーーーーーーーーー!!」
 後ろで控えていた近藤が愛刀・虎徹を上段に構え走って来ていた。が、高杉はそんなことなどお構いなしでにやにやと笑い土方を見つめていた。
(最早、ここしかない。ここで決めなければ)
 土方は典太を高杉目掛けて投げつけた。と、当時にガキンという鈍い音が高杉の後方から聞こえた。
「勝負を投げたか、土方歳三」
 高杉は再度右拳を土方目掛けて撃ち込んだ。が、間一髪それをかわし、右横をすり抜けた。
(よし、近藤さん、うまくやってくれた)
  投げつけられていた典太が地面に突き刺さっていた。
 これは、作戦だった。うまく行くかどうかわからない本当に一か八かの作戦。
 その作戦とはこうだった。
 まず、土方の合図により近藤が背後から忍び寄る。そして、土方が典太を投
げつける。
 投げつけられた典太を近藤が打ち落とし地面へ突き立てる。そして、土方はそれを受け取り返す刀で高杉を斬り伏せる。まさに、超人的な作戦だった。
 合図は近藤が行ったが、今現在、この時点まで作戦はうまくいっていた。うまく行っていたのだ。
が、土方が典太を受け取り、振り向いたとき足を滑らせてしまった。
(しまった!!近藤さんが)
後ろを振り向くと今まさに高杉の右回し蹴りが近藤に向かって繰り出されようとされていた。が、近藤は間一髪しゃがみこんでその蹴りをかわした。そして、虎徹を高杉の心臓目掛けて突き立てた。
(よし、決まった)
普通の人間なら即死だったはず。が、近藤は信じられない光景をみた。
笑っているのだ。
(ば、馬鹿な)
近藤は驚愕した。確かに、岡田以蔵の事は聞いていた。
岡田以蔵は化け物になって蘇ったと。やおら信じられない話だった。
近藤もいまだに半信半疑だったのだ。が、鳥羽での戦いや今の光景をみれば信じるしかなかった。
「邪魔をするなぁ!!」
高杉は憤怒の形相で左拳を繰り出そうとしていた。
その時、後方から爆裂音が響いた。それと同時に高杉の動きがぴたりと止まった
「近藤さん!!どいて!!」
 死を覚悟し目を閉じていた近藤は、土方の声で正気に戻り飛び退いた。
「高杉!!」
 土方は気合を込め典太を上から下へと振り抜いた。
 高杉は、初め笑っているような顔をしていた。が、徐々に真顔に戻っていた。そして、土方の典太により真っ二つに裂け、地面へと崩れ去って行った。
 高杉もまた、以蔵と同じく灰となり消え失せて行ってしまった。
「やったな、としさん」
 近藤は肩で息をしている土方の胸に拳を軽く打ち付けた。
「あぁ。だが・・・・・・」
「そうだな、としさんの言わんとしていることはわかる。俺も聞いた」
 近藤は土方に向かって頷いた。
(あれは銃声。だが、誰がいったい?それに普通の銃では化け物達は止められない。まさか、こいつと同じものなのか)
土方は典太をじっと見つめた。
 
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