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破れかぶれ

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第二章

「本当に」
「それ次第か」
「はい、お客さんがなんです」
「本当に誰かいないのか?お店の掃除だったな」
「毎日徹底してやっていますよ」
 客室にキッチンの中だけでなく窓も店の外もだ。
「それこそぴかぴかに」
「だよな、そこも徹底しててな」
「値段も良心的にしてますし」
「悪いところはない筈なんだよな」
「それで誰も来ないって」
「どうしてだ」
 一浩はいぶかしむ顔で腕を組んで守道に問うた。
「そこがわからない」
「そうですね、もうこうなったら」
「こうなったら。何だ」
「お化け屋敷にしちゃいます?」
 ふとだ、守道は思いついてこう一浩に言ったのだった。
「そうします?」
「お化け屋敷に鞍替えするのか?」
「違います、お店の中をです」
「お化け屋敷みたいにか」
「しませんか?」
 これが守道が思いついたことでだ、実際にそれを一浩に言った。
「いっそのこと」
「お店の中をか」
「照明はわざと暗く、お店の中も蔦とか出しておどろおどろしい感じにして」
「徹底してるな」
「あと店長も白い服じゃなくて黒いもうそれこそ」
「魔法使いみたいにか」
「そんな感じにして」
 服もというのだ。
「おどろおどろしい」
「そんなのか」
「僕もそんな格好にして」
「おどろおどろしくだな」
「お店の外の方も」
 そちらもとだ、守道は一浩にさらに話した。
「お化け屋敷で、看板も」
「そうした感じか」
「そうしましょう、もうこうなったらヤケで」
「やるだけやってみるか」
「ひょっとして誰も来ないのは地味だからじゃないですか?」
「うちの店そんなに地味か」
「奇麗ですけれど目立たないですよね」
「そういえばそうか」
 一浩は守道の言葉を受けてあらためて店の中を見回した。そのうえで実際にこう彼に言ったのだった。
「奇麗にしてるけれどな」
「地味ですよね」
「変哲がないな」
「なさ過ぎますよ、あらためて見たら」
 守道も店の中を見回した、そして実際に思った。
「お店地味ですよ」
「だから目立たないか」
「道の石ころなんて誰も見ないですよね」
「地味だからな」
「地味だとです」
「お客さんは来ないか」
「それよく言われますけれど」 
 資本主義の原理と言っていい、目立つ店、名前が知られている店程人はよく来る。そしてそれはだというのだ。 
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