おぢばにおかえり
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第二十話 二学期その十二
「そうなの」
「スカートの丈は長いけれどね」
スカートの丈は長いです。やっぱり宗教の学校なんでそういうところは厳しいんです。男の子って脚ばかり見るっていうからそれで人気がないんだって思っていますけれど。
「それでもなのよ」
「けれどそれでもよ」
私は口を憮然とさせて言いました。
「何でそれでメイドなのよ」
「格好って大事よ」
「だからよ」
「そんな変なことってしないわよ」
私は絶対に。有り得ないです。
「やれやれ。ちっちのこのどうしようもない生真面目さって」
「こりゃ彼氏も大変ね」
「まあそれでもよ」
また皆が言ってきます。
「制服と半被が可愛いからね」
「それでいけるんじゃない?」
「いけるって何よ」
「だから。彼氏よ彼氏」
「旦那様をゲットするにはまず彼氏からよ」
「彼氏がいないと何もはじまらないのよ」
「それはわかっているけれど」
っていうか常識なんですけれど。私だってそれはわかります。それこそお見合いとかでもないと。けれど凄い強調されているような。
「わかっていたら動くのよ」
「女の子は行動から」
「女の子から動くの?」
「女の子が動かないと誰が動くのよ」
何かお話が逆になっているような。私は男の子が動くものだと思っているのですけれどどうも違うみたいです。男の子が積極的にアプローチなんじゃ。
「だってあれじゃない」
「あれ?」
「女の子は日様よ」
このことは天理教では本当に強調されます。男の子が月様というわけです。つまり女の子が陽で男の子が陰ということになります。
「だからやっぱり女の子からよ」
「わかったらちっちも」
「わからないわよ」
憮然とした顔で皆に答えました。
「そんなのって。何なのよ」
「わからないの?ウブねえ」
「ウブとかそういう問題じゃないじゃない」
また八重歯が見えたのがわかります。
「そういうのじゃ。私はね」
「はいはい、彼氏の一人でも作りなさい」
「ただし二股は駄目よ」
かなり腹が立ってきました。私が二股なんて。
「それしたら修羅場決定だからね」
「男の嫉妬って壮絶よ」
「あのね、私は一人としかお付き合いしないわよ」
八重歯が見えっぱなしです。というか冗談じゃありません。私が二股なんて。そんな破廉恥なこと絶対にしません。彼氏も旦那様も一人です。
「いい加減にしないと怒るわよ」
「わかったわよ。すぐムキになるんだから」
「こうした話だと」
「全く」
腕を組んでむすっとした顔になるのがわかります。本当に女の子の話って彼氏に関するものが多くて。けれど私も気になることは事実です。
「それはそうとね」
「今度は何?」
「先輩は」
不意に先輩のことを思い出しました。
「そんなことがあったなんて」
「内緒よ」
それを強調されました。
「言っておくけれどね」
「ええ、わかってるわ」
その言葉にこくりと頷きます。こんなこととても言えません。
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