なんだかんだ言ってるけど結局の所、大天使様も〇〇なんだよね
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繋がる世界
それから二人はしばらくじゃれあっていた。リリヤ、なんともけしからん!雪乃の豊満な胸をつねったり揉んだりと...くぅうーっ!俺もしたかった!今俺がどこにいるかって?今俺は確かアリスに冷たくされてるとこらへんだな。うん、間違いない。
それから二人は静かになった。夜が来るので野宿の用意をしなければならないのだ。徳山館?あぁ、もうこの時間だし馬もケルベロスに怯えて逃げた。徳山館まで歩いて行くのはほぼ無理だしリリヤの羽根はちっちゃいから雪乃は運べなかったんだろう。
雪乃はまず火を起こすことから始めようとした。するとリリヤが
「お姉ちゃんって木で火をつけるの!?」
と聞いてきた。雪乃はもちろんそのつもり。マッチもライターもない。マッチ売りの少女よろしく一本のマッチもないのだから。
「...そうだけど何で?」
リリヤは楽しそうに
「...ふふん!これ使ってみなよ!」
と、赤い石の入ったネックレスを渡してくれた。
「お姉ちゃんあげるよ!お姉ちゃんに会ってからこの石、光始めたんだ♪お母さんが言ってたけど、石が光る人がいたらその人は主の素質があるんだって!だからお姉ちゃんにあげるよっ!」
そう言って雪乃の右手に握らす。
「...お姉ちゃん、これはミハエル天使が生まれた時、みんな持ってる石...これは自分のパートナーにしか渡さないし見せない約束の石...僕だって200年以上生きてるけど光ったのは初めてだよ。普通は青なんだけど赤...お姉ちゃんは本当にすごいよ!」
雪乃に握らしていたネックレスの石がさらに強く光った。
「お姉ちゃん、石を握って焚き火をイメージしてみて...強く意識すると火事になっちゃうから落ち着いて、ゆっくりイメージしてみて...」
雪乃は言われた通りに積んでいた木片に焚き火のイメージを合わせてみた。すると
ボワッ
と火が付いた。
「...あちちち...お姉ちゃん強すぎ...ふふふ」
リリヤはご機嫌のようだ。
「この石は寒い時とか暑い時とか、自分でもどうでもできない時に握ると力をくれるんだ♪人間は賢者の石ってよんでありがたがってるね。ミハエルも何人か騙されて魔女とかに石取られてたよ」
そう言いながらどこから釣ってきたのか魚を早速焼き始めている。
「ねぇ、リリヤ。さっき世界がどうとか言ってたけど、どうしてあなたはここにいるの?」
雪乃が聞くと
「僕達天使はオリュンポスの巨人に負けたんだよ。天界の王のミハエルはみんな殺された。僕はアリスが世界鏡を開いてくれたからたまたま逃げられたんだよね。まぁ、自分で開けられないから帰れないんだけど...ふふっ」
最後はちょっと自嘲気味に笑った。
「それでもそろそろ開く気がするんだ。天界に勇者とカツェとミサの気配がするから」
(リリヤは別世界の人間も読めるの?)
「...お姉ちゃん、ちゃんと話して。パートナーの者の心は読めないんだよ。対等な関係のためにね。」
パートナーになると読めないらしい。読めた方が連携できるんじゃないか?
「リリヤは別世界の人間の心も読めるの?」
するとリリヤは
「ムリだよ。でもガブリエルの家長がいることはわかるんだ。その周りも多少ね。」
そう言うと焼けた魚をむしゃむしゃ食べ始めた。
「...おねぇしゃんおいちぃよ!...あちゅいからふーふーしてね」
リリヤがハフハフしながら言った。
「あははははっ♪リリヤかわいいっ!」
雪乃は大爆笑。
「お姉ちゃん初めて笑ったね。」
そう言われて見ると雪乃はタイムマシン以降笑ってなかった。
「...うん。ありがとう」
そう言って雪乃も魚を食べ始めた。
「うん!美味しい!」
二人仲良く食べきりました。
「明日は朝から李広のとこに行こう。あまり遅いと危なそうだからね」
そう言うとリリヤは寝てしまった。
(...星綺麗だな...未来じゃ絶対見られない...)
雪乃も寝てしまった。
ガサッガサササッ
「...!」
音に気がついたリリヤは小声で
「お姉ちゃん、起きてお姉ちゃん。誰かいるよ」
雪乃は完全に目が覚めたわけではないもののゆっくり起きてリリヤについてった。
二人は木の陰に身を潜めた。
「殿っ!ここらで間違いございませぬ!バケ犬の言う、天使、と言うものはおそらくウーラノスに高く売れるかと。」
足軽は殿と呼ばれる者に言った。
「うむ、ウーラノスはクロノスより取り上げたアダマスと言う鎌と並ぶと言う蓬莱の名槍、楓月綠神槍がお望みだ。それに天使をつけたら蓬莱だけでなく帝も我がさせてもらえるやもしれん!必ず見つけ出して生け捕れ!」
「ははっ!」
その男はリリヤを狙っているらしい。
(...そんなことは、させないっ!)
雪乃がそう思ったとき。
「お姉ちゃん待って。馬がくる。」
リリヤの言う通り馬が来た。
「愛季様っ!一大事でございまする!蠣崎めが海上に船隊を集結しつつありまする!至急戻り指揮を!」
男の名前は愛季。おそらく安東の当主であろう。
「李広め!邪魔をしおって!おとなしく槍を渡せば良いものをっ!」
そう言って愛季は馬に乗って陣へと帰って行った。
「雪乃殿、御安心めされい。私は慶広だ。李広の三男だ。先日は本当に助かった!改めて礼を言う。」
愛季に報告したのは偵察兵ではなく蠣崎慶広だったのだ。
「先程私の飼っている鷹が焚き火を見たと言うので見に来たのだ。すると雪乃殿がいてな!はっはっは!愛季も老いたものよな!して、そこの少年は?」
リリヤの方を向いて言った。
「僕は方丈!お姉ちゃんに助けてもらったんだ!」
リリヤはばれたらまずいのかうまく偽名を使った。
「そうか、すまんが家にかえってくれ。ここからは雪乃殿しか連れて行けんでな。」
慶広は言った。
「いえ、連れていきます!この子は家がないんです!」
雪乃は慶広に言った。
「...父上になんと申したものか...。わかり申した、その代わりくれぐれ雪乃殿の迷惑にならぬようにな。」
「うん、分かった!」
方丈ことリリヤは元気に返事した。
「海上に船隊を集結させているのは事実です。夜明けまでに父上と合流致します。先程馬車の馬が居たので待機させてます。方丈、馬はのれるか?」
「乗れるよ!」
「では雪乃殿は私と、方丈は一人で乗ってくれ。」
そう言うと雪乃を馬に乗せ
「捕まっていてくだされよ。方丈、はぐれるなよ。入り組んだ道を通るのからな」
そして走り出したのである。敵に気づかれない様入り組んだ道を通っているのであろう。海まで1時間もかかってしまった。
「あそこに小舟がありまする。それに乗って父上の船へまいります。ささ、早うお乗りください。方丈も急げよっ!」
慶広はちょっとリリヤにキツい。
小舟は引潮なのかわりと早く船に付いた。
「おお!雪乃殿!なぜここに来れたのか?てっきり徳山でやられたかと諦めかけておったのに!いや、よかった!」
李広は本当嬉しそうに話しかけてきた。話によると徳山の館は安東の伏兵により落とされたようだ。
「...それより雪乃殿。先程から安東と我が軍との間の海域の空に歪みのようなものが出来ておっての...これは帝と天映球の時と似ておるのじゃ...」
そう言って李広が指さした方を見ると確かに歪みがあった。
「...お姉ちゃん、天界が開くよ」
リリヤがそう言うと安東、蠣崎両軍の中心で光の円盤のような物が浮かび上がって来た。
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