学園黙示録ガンサバイバーウォーズ
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第七話
「口にあうかな?」
「いや、うめえよ毒島。」
現在は午前六時半。俺達は、毒島が昨日の夜に作ってくれた料理を食べている。いや、本当にそこからの料理人が裸足で逃げ出す程に、料理の腕が高いわ。去年から思った事だが、文武両道を絵に描いたような女性だよな毒島って。
「あ、本当に美味しい!」
「いや。どんな漫画のヒロインなのよ。料理が出来て実際に戦いも強いって……」
他の面々も様々な感想を言いながら毒島の料理を食べていた。おむすび、卵焼き(だしまき)、ウィンナー、野菜炒め等だ。毒島が、緊急で簡単なものしか作れなかったと言っているが、普通に金出して食べれるレベルだもんな。何より食欲がおさまる気配がない。昨日も毒島が簡単な夜食を作って食べたが、やはり昨日から満足に食事を取ってなかったので、このように本格的に朝食を食べれるのはありがたい。
女性達は普段と同じように食べているが、俺を含めて小室達はがつがつと食っていた。
「ちょっと孝。もう少し落ち着いて食べなさいよ。ご飯粒がついてるわよ」
「いいって麗。自分で取れるよ……」
「いいからじっとして」
「羨ましいなぁ~小室」
「全く。朝っぱらからこてこてのラブコメを見せつけないでよね……」
隣でリアルにラブコメを展開している。たくよ、小さいありすちゃんもいるんだから、少しは周りを気にしろよな。
この光景を見ていると、<奴ら>が拡散して世界が崩壊したとは思えないな。昨日から<奴ら>と激しい命のやり取りを繰り広げた高校生とは思えない行動力を有している小室達だが、こうしてみると、こいつらは青春を満喫していた高校生なんだなと、改めて思い出すな。
今の俺も高校生だが、精神年齢が四十を超えると変に人生を悟ってしまい、高校生のテンションに馴染めなかったな。そのせいで、周りから「親父臭い」と言われてしまったのも、今では、この世界で二度目の高校生活を暮らした俺にとっては、良い思い出だ。
こうして俺達は、毒島の料理を堪能しながらワイワイと楽しく朝食を取るのであった。
ーーー。
朝食が終われば、俺と平野で銃の講座を開いた。女性陣達は現在、着替え中だ。
「小室。モスバーグは、ポンプアクションのショットガンだ。こうやってスライドを引けば、中に入っているシェルが送り込まれる。あと、弾切れの時は、気をつけろよ。ポンプアクションは、他の銃と違ってマガジンがないから直接ショットガンに、ショットシェルを送り込まないといけないから、再装填に時間がかかる。装填に気を取られて<奴ら>に囲まれてしまうなんてことにもなるからな。状況を見極めて装填しろ」
「わかりました。いざという時は、こいつを槍替わりにしますから」
モスバーグM590は、軍用ショットガンとして作られているために、軍で採用しているアサルトライフル等の銃剣も装着できるようになっている。それに、徒歩で移動する場合は出来るかぎりは近接戦闘で片づけた方が得策だ。そのほうが音も出ないし、銃を撃つのは最終手段と、このメンバーは理解している。
「あと拳銃も渡しておく。いいか、有効射程距離は50メートルだが、拳銃は軽量で取り回しが安易だが、反動制御が難しいからしっかりと両手で握らないと、当てるのは難しいからな。拳銃は出来ればあんまりあてにするな。これはモスバーグの弾が切れた場合の最後の手段として使えよ。今から操作方法をモスバーグと並行して教えるからな」
俺は操作方法を小室に教える。その隣で俺と同じように、平野がタカトさんに銃の扱い方を教えている。
「MP5SD6は、サプレッサーが内装されている短機関銃で、かなり発射音を抑制できますけど、あまりあてにしないでくださいね。機関部の音や薬莢が地面に落ちた時の音は普通に響きますから。あと拳銃弾と同じ9mm口径で、反動は小さいですが、フルオートで撃つとかなり射線がぶれますので、普段はセミオートでお願いします。」
「わかったよ。それで、セミオートはどのように撃てば……」
「この左側にありますセレクターを操作して……」
平野の説明を受けて慣れない銃の操作を必死に覚えようとするタカトさん。それが自分の娘を助ける手段となれば高校生の平野が相手であろうと貪欲に覚えようとする姿勢に俺は好感を持てた。
それから野郎たちで操作を教えていくなかで、上で着替えていた女性陣達が戻ってきた。その格好は何とも野郎たちの気を引く色香を纏うものだった。宮本とありすちゃんは、そこまで劇的に変わってはいないが、他の女性陣達はかなり様変わりしていた。
まあ、服が破けていたり、<奴ら>の返り血で服が汚れていたりなどしていたしな。にしても、美人は何を着ても似合うとは、まさにこの事か。それより毒島は下着が見えそうで見えないギリギリのチョイスの服装で、何ともいえない格好だった。
「「あはははは……」」
「うふふふふ……」
笑うしかない。だって服装が変わって目の毒が近くにいるのに、どう反応していいかわからないのだから。
「なに?文句ある?」
「いや……」
宮本に言われて何ともいえない反応しか返せない小室。その後は、女性陣達もいれて銃の扱い方の講座を続けた。小室と同じ武器を使う宮本に俺が教えて、タカトさんと同じ短機関銃であるMP5SD6を使う高城に平野がレクチャーする。操作性を教えているが、撃って問題ないかは本人たちしだいとしか言えない。こればかりは、実際に撃って銃の特性を知ってもらうしかないからだ。
なお、現在の俺達の装備を纏めておく。
俺。タボールTAR21、ブローニングハイパワー。
小室。モスバーグM590、P220
宮本。モスバーグM590、P220
高城。MP5SD6、P220
平野。FN FAL、グロック17
タカトさん。MP5SD6、P220
毒島は、銃は扱わないので近接戦闘に使う木刀に、投げナイフを装備させた工場で装備した武装で変わりはない。ありすちゃんは小学二年生の体で銃を扱う事が難しいので装備はさせていない。鞠川先生は、何度も言うが銃を扱うと危険であるため装備はなし。
この他にハンビーやLMVに設置されたM2重機関銃もあれば、高校生と教師が主なグループの割合を占めるメンバーでは異例の中の異例ともいえる過激装備といえるだろう。なお、ハンビーにM2重機関銃をセットしたのは俺だ。皆が寝ている間に、犬が遠くのほうにいって<奴ら>が犬の鳴き声に反応した為に、俺達が寝ていたマンションから離れて、その隙に設置した。
なお、本来なら俺のハイパワー以外ならP220で統一する気でいたが、平野が拳銃は命中精度より手数で押すという事でダブルカラム採用のグロック17を使用することになった。そこは本人の自由なので、俺はとやかく文句は言わなかった。グロック17も9mmパラべラム弾を使用するので、弾薬の統一という方針を無視していないからだ。
「いまなら<奴ら>はいない。荷物を積み込めるぜ」
「なら、動くのは早い方がいいな。」
装備の最終チェックを済ませた俺達は荷物を詰め込む。とはいえ、武器類は自分達のメインウェポンだけなので、そこまでかさばりはなかった。食料といった生活の必需品やサバイバルキットといった非常事態に備えた装備をハンビーやLMVに詰め込んでいく作業を続けていく。
皆は出来るかぎりは静かに行動した。今は<奴ら>の姿が見えないないが、大きな音を立てれば音に敏感な<奴ら>を引き寄せる事にもなりかねないからだ。
そうして静かに慎重に行動した作業であったため時間もかかったが、どうにか荷物を全て詰め込む事に成功した。そして俺達はハンビーとLMVに乗車すれば、発進準備は完了だ。そんな俺達に、マンションに残ると決めた二人が申し訳なさそうな表情であった。
「小室……ごめんな。俺とナオミは……」
「いいって。僕は気にしてないから。」
俺に残ると告げたあの後。朝になって小室達にも告げたのだ。最初は驚きもして、小室も残っていても自衛隊や警察が助けにくる保証はないから僕たちと一緒に行こうと告げたのだが、二人は外に出て、これ以上は危険な目にあいたくないと言ったのだ。
それでも何とか説得しようとする小室だったが、毒島や高城といった比較的冷静に判断が出来る二人に諦めろと言われて最初こそ食いついた小室だが、俺も同じことを卓造とナオミの二人に言った内容を毒島も高城も小室に言って、そして納得がいかない小室だが、そこで引き下がったのだ。
「あの二人。どうなるんですか田中先輩?」
「そういうのは、一番お前がわかってるんじゃないか、平野」
「そうですね。あの二人は、長く生き残れませんね」
「ああ……」
いくら治安も守るために、非常時に救助活動をする警察や自衛隊だが、日本全土でこんな騒動が起きているなかで、助けにくるとも思えなかった。救助するにも、警察や自衛隊でも人数に限りはあるし、効率的に動くために平時では批判が出る割り切った作戦を実行に移しているはずだ。
そうした自衛隊や警察の保護下に入って安全を確保するなら、自分から動いて警察や自衛隊が展開している避難所に行くしか道は残されていないと俺は思っている。あくまで俺が、そう思っているだけだけどな。
本人は、気にしてないと言ってもなかなか納得が出来ない部分もあるし、めんどくさいが、少しフォローしといてやるか。
「小室。俺達があいつらを見捨てたわけじゃない。あれはアイツらが選んだ選択だ。お前が気に病むことじゃねえ」
「はい……」
「お前はよくやってるよ。普通なら何の訓練も受けてない学生が、こんな非常事態でまとめる事も出来ないで仲間割れを起こすのが殆どなのに、お前はリーダーとしての素質あるよ」
「でも、実際に戦えば接近戦なら麗や毒島先輩だし、射撃なら平野。高城は頭は良いし、静香先生も医療関係で役に立っている。僕なんかがリーダーとして役にたってますかね?」
お前って本当に自己評価が低いのな。リーダーは腕っぷしだけで勤まるものじゃないよ。
「リーダーは腕っぷしだけで勤まるもんじゃない。人を率いるさいには、相手に信用される事も重要だ。幼いころより知っている宮本や高城以外にも、このグループは、お前を結構たよりにしているんだぜ。」
「そ、そうですか?」
「そうだよ。少しは自信を持てよ」
そう言って俺は小室の背中を強く叩いた。それで小室が少し痛そうなそぶりをしていたが、小室の表情が少し和らいでいた。
「なんか、少し楽になった気がしますよ。ありがとうございます。」
ようやく表情がもとに戻ったか小室。
さて、全員が軍用車に乗車した事だし、俺も乗って動くとしますかね。
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