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とんだ妖怪

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3部分:第三章


第三章

 そのうえで一旦だ。部屋の前を後にするのだった。新はその彼を見送る。
 魏参は王単と共に廊下を進みだ。ここで言うのだった。
「まずはです」
「まずは?」
「食事にしますか」
「それでしたら用意しますが」
「いえ、屋敷ではなく外で食べましょう」
「外で?」
「私の道観において下さい」
 そこで食事にしようというのだ。
「そうしましょう」
「道観で、ですか」
「はい」
 また答える魏参だった。
「それで如何でしょうか」
「私は構いませんが」
「ならそれでいいですね」
「精進ものですね」
「精進酒もあります」
 道士は生臭もの、つまり肉や魚は食べられない。それで酒もそうした名目で飲まれるのだ。実情は普通の酒と変わらないにしてもだ。
「ではそういうものを」
「では」
 こうしてだった。王単は魏参に案内されその道観に赴いた。そこは大きいが簡素でだ。品のいい落ち着いた場所だった。その中の一室でだ。
 二人は麺に餅、小麦を焼いたそれに野菜を炒めたものを精進酒と共に食べた。そうしながらだ。魏参は王単に述べるのだった。
「娘さんは大丈夫です」
「何とかなりますか」
「はい、御安心下さい」 
 穏やかに笑ってだ。魏参は麺を箸で取りながら王単に述べる。
「必ずです」
「そうですか。有り難うございます」
「そしてです」
 さらにだ。魏参は述べる。
「娘さんに憑いているものもわかります」
「それは何なのですか?」
「その時にわかります」
 そうだというのだ。
「では食べてからです」
「それからですね」
「屋敷に戻りましょう」
「それはわかりました。ただ」
「ただ?」
「いえ、ここの料理ですが」
 王単はその精進ものを食べながら言うのである。麺をすすりそして包を食べながらだ。そのうえで彼に対して尋ねたのである。
「かなりいいですね」
「美味しいですか」
「はい、落ち着いた味ですね」
 今度は野菜の炒めたものを食べながら話す。
「それでいて深い味ですね」
「私の弟子が作ったものでして」
「お弟子さんがですか」
「まだ子供ですが料理が上手で」
 満ち足りた笑みでだ。魏参は話していく。
「いつも感謝しています」
「そうですか。それはいいですね」
「美味しい料理は全てを幸せにします」
 魏参はこんなことも言った。
「精進ものも然りです」
「そうですね。本当に」
 こんな話をしてだ。精進酒も飲んでだ。
 二人は屋敷に戻った。屋敷に戻るとだ。
 魏参はだ。すぐに娘の部屋の扉の前に赴いた。扉の向こうから凄まじい呻き声が聞こえる。
 
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