ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第48話 二代目
頭が非常に痛むし、注文?通りにいっていない事への不満からか、カイトが、いろいろと1人で屋上で騒いでいる時だ。
「やっ!!」
突然、誰もいないと思っていた屋上で、いきなり 後ろから声をかけられた。 周囲の確認は勿論、屋上の入口も見える位置で、誰かが入ってきても判る様にして、自分の力の確認をしたから、まず 間違いなく、そこには誰もいなかった筈だった。
「(だけど……、この展開は……)」
何処か覚えがある。と直感したカイトは、思い切って後ろを振り返ってみると、そこには 直感通りの人物がいた。
「やっぱり 女神か!! あー、こんな感じだったな。そういやぁ!」
姿を確認すると声を上げた、というか叫んだ。
ついさっきまで、彼女に対しての不満をぶちまけていたのだ。そんな元凶が目の前に現れたら、誰しもが、同じ反応を取るだろう。
「あはっ、いやー 君が私のこと噂してるんじゃないかな~って、思ってちょっと降りて来ちゃった」
「(絶対嘘だ…。こんなドンピシャで。……どっかで見てたんじゃないか?)」
「あはは、まあ細かいことは無しにして… 本題に入るけど………、そのっ、ゴメン!!」
女神様、と言うくらいだ。
明らかに人間よりも上位の存在。遥か上位……それこそ比喩抜きの雲の上の存在だろうと思えるのに、そんな彼女が、いきなり笑顔から真剣な顔になり手を合掌させ謝罪をしていたのだ。正直狼狽えてしまったカイトだったが、大体の事は判った。
「……何がですか? って聞こうと一瞬思いましたが、察しましたよ。おれの、能力の事、ですよね? そう言う所は顔に出るのに……隙があるのか、無いのか まるで判らないですね……」
「はっはー。私の考え簡単に読めると思ったら大間違いだよ~! なにせ女神様だし♪」
ちょっと前まで謝罪してたはずなのにあっという間にケロッっとした顔をしてた。随分安い謝罪もあったものだと思えるが、先に進まない為、気にしない方向へとカイトは持っていく。
「はぁ~… も、良いですよ。 それで、確か以前に頼んだ? 筈の自然系はどんな感じなんです? 後、最終的にオレって一体何なんですかね?」
とりあえず、カイトはそれを訊いた。
そもそも、リクエスト通りの能力を得たとして、自分の存在がどういう類のモノか、まるで判ってないのだ。萌香なら《吸血鬼》 月音なら《人間》とはっきりしているのだけど、自分は明らかに人間ではない。……もう、人間としての自分は終わったから。
「うーんと、えっとね…… 君のリクエストである、《ワン〇》の自然系の力なんだけど……、 やっぱし君はバグが起こる体質? なんだね……。もう魂が宿った世界。新しい創造の世界だっていうのに、体現出来る筈なのに、何だかうまくイってないみたいなんだよー。……う~~ん、もしくは私のせいなのかな? 正直、原因が分かんないけどさ、所謂エラーが出て使えなくなってるんだ。……私としては、ちゃんと アナタにインストールしたんだよ~? いやー、世の中不思議な事だらけだ!」
話し方を見るとついさっきの謝罪の感じは綺麗さっぱり消えていた。
大体、一番の不思議と言えば 死んだ時、死を意識して、目を開いた時 突然現れた何処かの女神サマの方が不思議な存在だろうに。
「あははは。まーまー そう睨まないでよ! てなわけでさ、今来たのって、実は君に新たな能力をあげる為に来たんだよ!? うれしい??」
女神さんのその一言でカイトはとりあえず嫌な顔を止めた。
願ったり叶ったりだからだ。何も判らない、所謂、操作方法も無ければ説明書もない状態で この世界を生き抜くのははっきり言って、超ハードだと思えるから。
だが、簡単に信じる訳にはいかない。相手が相手だから。
「ホントですか? も、貴女には何度いっぱい食わされたか判らないし。正直 安易に信じられない、と言うか……」
「あはは… ちょっと否定できないのがあれだけど、はい。とりあえずこれをどうぞ! 試してみて」
そう言ってシェリアは、掌を差し出した。
そこには、その手に収まりきらない程の大きさの石。拳より大きい赤く光る宝石が輝きを放っていた。
「ん? 何ですかソレ?? んー、オレ、男だから宝石もらってもそこまで嬉しくないんだけど…」
金が欲しくないってわけじゃない、生前は確かに欲しかった。何度宝くじに願ったか判らない程だ。だけど…、今は金では決して買えない事をしている為か、そこまで執着は無かったのだった。生活をしていく上では必要だと思えるけど、ここは全寮制で入学費も免除だと説明書きがあったから、大丈夫、の筈だ。
「て、ちがうちがーうっ! それに、お金だったら直接現金で渡すよ! そんな、まどっころしい真似しないって。何せ その方が簡単だし。質屋に持ってって現金に変えて、ってめんどくさいでしょ?」
もっともらしい事を言ったので、カイトはとりあえず納得した。
「それで? なら、コレはなんですか??」
「これはね《魔導精霊魔石》。色々とインストールをした石だよ。だから、とりあえずはこれを試してもらいたいんだ、それに君さ、最初に魔道士って言ってたでしょ? これを体内に取り込んだら使えるようになるよー! 勿論、その能力の幅はアナタの想像力次第っ」
多少は胡散臭さが漂っているものの、一通り説明を受けたカイトは1つの疑問を浮かべていた。
『あの…… なら、自然系を力をインストール? した石とか、無いの? こっちとしては、その方が良いんだけどさ。(物理攻撃無効って、やっぱり魅力的だし……)』
それも、もっともな話だ。能力だけにかまけたら、格好悪いとは思えるが、無敵感を男であれば一度くらいは味わってみたい、試してみたいと思うだろう。
「ん~ 確かにそうなんだけどさー。君のいう自然系って力なんだけど、あれ結構大変なんだよ? ほら、パソコンに例えたら、必要容量が異常に高いんだ。 何せ体の構造をまったく別物に変えるんだからね。 初期段階でプログラミング成功してたら問題なかったけど~ 壊れちゃってるみたいだから… 一から書き直すとなるとメチャ時間がかかる… 希望通りに作っても今回みたいなケースもある訳だから、成功するかもわかんない… だからとりあえず~コレ試してみてよ! そもそも、ノーリスクで能力あげよーって訳なんだからさ。元々の損はないでしょ?」
色々と説明をされたが、簡単にまとめて言ったら、使えない、と言う事の様だ。
だから、カイトは、とりあえず自然系は、諦める事にした。
「(確かに、ノーリスク と言えばそうだし。何でもかんでも、って よくよく考えたら、格好悪い気がする……。 まあコレも修行? と思おうかな。 無い物は無いんだし)」
「そそっ! 無い物は仕方ないって、無い物強請りしても仕方ないってねー! ……ってな訳で、これ早く使ってみてよ!」
「はいはい! 分かりましたよ!」
又、心を読まれてしまった…っと 若干の苛立ちを覚えながら、宝石を体に身に着けてみると、あろう事か、石は自分の体をすり抜けた。
いや、違う。あの大きな石が綺麗さっぱり身体の中に入ってしまったのだ。
「いや! ちょっと!! 入っちゃったよ!? と、取り出せないしっ! 大丈夫なの……か? ………お!」
何やら体の奥からこみ上げてくる様な感じがする。
力が沸き上がってくる様な感じがする。
強くなった様な感じがする。
あくまで、感じがすると言うだけで、実際に変化は見られない。
「って! 何にも起こらんやんか!!!!!』
「あははは! いいよ! ナイスそのボケ! 絶対ウケるっ!」
女神大うけ、俺はボケ役。2人で漫才コンビ?? はっきり言ってどうでも良い。何にも無いなら もう戻らせて欲しい、とまでおもえた。
「まあまあ落ち着いて。ちょっと遅延が発生してるだけだから。システムインストールだって、時間、かかるでしょ? 身体に覚え込ませようとしてる段階だから……もう来てるはずだよ?」
「んん? あ、あれ…? そういえば………なんだ? これ、見覚えないけど……」
女神の言う通り、数列の羅列が生まれたかと思えば、それは文字の形となった。
頭の中で…呪文だろうか? と思える文字が浮かび上がり、そして図形も同時に浮かんできた。
不思議な事に 明らかに日本語ではないと言うのに、いや 英語ですらなく ハングル文字?って思われても仕方ない程の妙な文字だったが……、意味の理解と読み上げる事が出来るのだ。全て翻訳が出来るのだ。
「判った? だから、キミは、これからは《精霊魔導士》だよ。まあ早い話、今思い浮かんだ文字はご想像通り詠唱文。それ唱えたら使えるって訳、んでまあその辺のRPGみたくレベルが必要!!っとかは無いから安心してね。もち、相応の強いの使おうとしたら、つかれちゃうから、その辺は頑張って慣れてよねー!」
「(……ん。深い。奥がまるで、見えない。……情報の洪水みたい。……これはこれで、面白い力だ。全部検証をしようとしたら、一体どれだけかかるか、見当もつかないけど)
突如現れた膨大な情報量、その渦に溺れてしまいそうな感覚を覚えていたカイトだったが、次第に知識が増え、更に新しい力を認識出来た事で、楽しくなっていた様だ。
「……ありゃ? 訊いてないじゃん……。でもま、気に入ってくれたならそれで良いよ! んじゃね、がんばってーー!」
そう言うと同時に、女神はその純白の翼を背中に生やし 大空へと消えさっていった。
それは、彼女が去った後数秒後。
「ってあれ? もういなくなっちゃった… 一言礼言わせてくれても良いじゃん…。これ、面白そうだし……考え方次第で、想像力次第で 自然系を上回りそうな気がするし」
カイトは、そのまましばらく自分の力の確認を続け、そして 萌香や月音を探しに戻っていったのだった。
そして、無事にカイトに納得させつつ、前の彼の能力を封じる事に成功した女神は、空。上空遥か高い場所にて、一息を付いていた。
「……よかったぁ~。 ほんと、即興の作り話にしては良く出来たかな?? 初代がジャック。……じゃあ、彼は二代目、って所かなぁ。 しかし、ほんっと疲れたね。……うん。後は彼自身が物語を紡いでいってくれると思うし。 ……干渉のし過ぎもあれだからね。 ……何より、眠いし…。……まあ 後は何とかなるでしょ…」
大きな欠伸を1つすると、女神は フラフラと飛びながら、突然彼女の目の前で開いた空の扉の向こう側へと消え去っていったへと消えていったのだった。
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