夕立
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5部分:第五章
第五章
「それじゃあね」
「はい、そう考えます」
「それじゃあ」
二人は先輩のその言葉に頷いた。そうしてであった。
二人の席に戻ってそれでまた飲み食いをはじめた。その勢いは衰えておらずやはりジュースやケーキを次々と胃の中に収めていく。小柄な二人だが食べる量はだ。かなりのものだった。
それで結構な時間が経った。まずは林檎が言った。
「ふう。もうね」
「お腹一杯?」
「うん、もう満腹」
満足した顔での言葉だった。
「だってかなり食べたし」
「そうだよね。僕だってね」
「真理耶ももう限界?」
「うん、限界」
その通りだというのである。
「食べられないわね、もう」
「そうよね。それじゃあ」
林檎はここでちらりと窓の方を見た。しかしだった。
「まだ降ってるわね」
「そうだね。中々降り止まないわね」
「どうする?それで」
林檎はここで真理耶に言った。
「止むまでだけれど」
「ううん、もう満腹だしね」
「そうだよね」
「何かお話でもする?」
真理耶の提案である。
「雨が止むまでの間」
「そうする?何でもいいから」
「うん、そうしよう」
こうしてだった。二人は学校の話をはじめた。友人やそうしたことをだ。そうしてそんな話をしているうちにだ。こんな話にもなった。
「ねえ、先輩だけれどさ」
「先輩が?」
「最近奇麗になってない?」
真理耶がまず言い出したのだった。
「何かね」
「あっ、そういえばそうよね」
林檎も言われて気付いた。
「何か最近特にね」
「メイクよくなったとか?」
「あとお肌も奇麗になったしね」
「髪もね艶がよくなってね」
「そうそう。全体的に奇麗になったわよね」
「何でかな」
ここで言う真理耶だった。
「それって何でかな」
「彼氏ができたとか?」
林檎はすぐにこんなことを言った。
「それでじゃないの?」
「彼氏が?」
「ほら、よくある話じゃない」
笑って真理耶に話す。
「女は恋をすればってさ」
「奇麗になるの?」
「だからじゃないかな」
また言う林檎だった。
「それでね」
「それでなのね」
「まあ彼氏が誰かはわからないけれどね」
「彼氏じゃなくて彼女かもね」
真理耶は笑ってこんな冗談を口に出した。
「いるかもね」
「そうだよね」
「聞こえてるわよ」
しかしここでまたまた声がしてきた。
「ちゃんとね」
「えっ、先輩」
「いたんですか」
「いたわよ。全く、人をレズみたいに」
「まあまあ」
「気にしないで下さい」
愛想笑いでこう先輩に言う二人だった。
「別に悪気はないですし」
「ですから」
「奇麗になった、ね」
先輩はこの話も聞いていたのだった。それで言うのであった。
「その言葉は嬉しいわ」
「どうもです」
「それは聞いてくれていましたね」
「それで彼氏ね」
この話もする先輩であった。
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