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IS<インフィニット・ストラトス>一人の孤独者

作者:孤独者
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2話『孤独者とイギリスの貴族(笑)』

~無一人said~

俺が織斑一夏もとい、バカに宣言してから十分位が経過した。

つまりは、一時間目の授業が始まっている。

と言っても、授業の内容は今まで全くと言ってもいいくらい無縁だったISに関する授業。

入学前にやけに分厚い参考書を貰ったが、半分くらいしか暗記できていない。

そもそもあの量を覚えろという方が、どうかしている。

今行っているのは、最初の方に書かれていたアクティブなんたらの説明だ。

参考書の方はあてにならなかったが、今説明してくれている先生は教えるのが上手いようだ。

それに、出席簿で暴力行為を行わない。

重要だからもう一度言っておく。

“出席簿による暴力行為がないのだ”。

俺は心の中で決意した。

この先生の授業は真面目に受けようと。

だがそれは、一人のバカによって邪魔される。

「織斑君、孤賀君、ここまでのことで何か分からないことはありますか?」

それを聞いてすかさず、バカが手をあげた。

その時、俺は今の話を詳しく聞きたいのかと思って、少しバカを見直した。

だが、それは次の発言で裏切られた。

「先生、全部わかりません!」

その言葉を聞いた先生は慌てていた。

「え!?ぜ、全部ですか?」

(あのバカは参考書をしっかり読んだのか?)

俺がそんなことを考えていると、先生がこう聞いた。

「え、えっと…………織斑君以外で、今の段階でわからないっていう人はどれくらいいますか?」

そう言って挙手を促す先生。

シーン……………………。

バカには残念だが、誰一人として手を挙げるものはいなかった。

もちろんのこと、俺も手を挙げていない。

「なっ!?、孤賀!お前もこのアクティブ何とかがわかるのか!?」

(失礼な奴だ。あのバカは俺を何だと思ってんだよ)

「俺はバカとは違うからな。それに、そこの先生の教え方もいい」

俺は二つ前の席にいるバカにそう言って、そのまま黒板に書かれていることをノートにまとめていた。

「………………織斑、入学前の参考書は読んだか?」

教室の端にいた暴力教師がそう言った。

(アンタ、いたのかよ)

俺はそう思いつつ、暴力教師を睨む。

「古い電話帳と間違えて捨てました!」

パアンッ!パアンッ!

「いたっ!」

「ってえ!………………なんで、俺までしばかれるんだよ」

俺は頭を擦りながらそう言う。

「お前が失礼なことを考えながら、こちらを睨んでいるからだ」

そう言ってこちらを睨み返してくる暴力教師。

俺はこれ以上暴力教師を刺激しないように、黒板に書かれていることをノートに改めてまとめ始める。

(この学園の連中は全員がお人好しかなにかなのか………………まあ、どちらにせよ俺には関係のないことだ)

俺はそう考えながら一時間目の終了を待っていた。
















「ちょっとよろしくて?」

「へ?」

「……………………」

一時間目終了後の休み時間、俺が睡眠にはいろうとしていると何やら女の声が聞こえた。

「まあ!なんですの、そのお返事。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないのかしら?」

話しを聞く限り、この女は俺が最も嫌うタイプの女だということがわかった。

それに、何よりもこういうタイプの女はめんどくさい。

「そこの貴方も聞いていますの?」

「………………………………」

俺は反応一つせずに、女の言葉を無視する。

ましてや、興味すらない。

だが、俺のすぐ近くでバカでかい声で話されれば嫌でも聞こえてしまう。

「私を知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試首席のこの私を!?」

バカの声はそこそこ聞こえる程度ですむが、この女は声がでかすぎる。

俺はここで限界がくる。

俺は席から立ち上がり、こう言う。

「…………お前ら、うるさいんだよ」

「あら?貴方、この私に向かってその態度は失礼ではなくて?」

「…………お前に対する礼儀なんて知るかよ。お前があまりにもうるさくて仕方がなかっただけだ。わかったなら、別の場所で話せ。俺の迷惑だ。そこのバカを連れて消えろ」

俺はそれだけを言うと、もう一度席に座り顔を突っ伏す。

「あ、貴方ねっ!私に向かってそのようなことをーーーー」

♪キーンコーンカンコーン♪

女が俺に向かって何かを言っていたが、その途中に授業のチャイムが鳴り女の声が聞こえなくなる。

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

(…………よりにもよって、暴力教師の授業かよ)

俺はそう思いながら、またしばかれる前に顔を上げておく。

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」

「クラス代表者とはそのままの意味だ。クラス長と考えてくれればいい。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで。………………因みに、推薦、自己推薦、その他自由で決めろ」

(………………めんどくさい役割だな。こういうのは全部、バカがやればいい)

「はいっ。織斑君を推薦します!」

「私もそれが良いと思います!」

(…………よし、これでバカがクラス代表に決定だな。めんどうなことをしなくてすむ)

俺がそう思っていると、一人の女子がこう言う。

「私は孤ーーーーやっぱり、いいです!」

俺は自分の名前が出される寸前にその女子を睨み、推薦を取り消させる。

(…………危ないところだった。こんな役職につけば、嫌でも周りが何かを言ってくる。………………こういうのは俺にはむいていない)

「待ってください!納得がいきませんわ!」

バンッと机を叩いて立ち上がる休み時間の時にうるさかった女。

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!」

(…………うるさい。それにムカつく)

俺はうるさい女の言っていることに多少、キレかけていた。

「実力から行けば私がクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからと言う理由で極東の猿にされては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛でーーーー」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

今まで誰もうるさい金髪女の話に反論などしなかったが、ここでバカが言い返した。

「…………フッ、フフフッ」

俺はバカが言い返したことに少しだけバカを見直し、笑いを堪えるので必死だった。

(………………久しぶりに笑わせられた。…………あのバカは少しだけ見直してやるか。ほんの少しだけだが)

「あっ、あっ、あなたねぇ!私の祖国を侮辱しますの!?」

「決闘ですわ!」

バンッと机を叩いて宣言する金髪女。

「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

売り言葉に買い言葉。

バカは金髪女の誘いにのった。

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら私の小間使いーーーーいえ、奴隷にしますわよ」

どんどんと話が進んでいくなかで俺は顔を伏せていた。

(…………面倒事はバカがなんとかするだろう。俺は関わりたくない)

「それから、そこのあなたも決闘を受けてもらいますわよ!……先程、私をみて笑っていたのを見ていましたから」

初めは誰か他の奴が指名されたと思っていたが、金髪女を見て笑いを堪えていたのは、恐らく俺だけ。

つまりは、こいつは俺に勝負をしろと言っている。

俺は伏せていた顔を上げ、席から立つ。

そしてそのまま金髪女の前に行くと首をつかみ、机にそのままぶつける。

周りからは信じられないものを見たという表情が見られる。

「孤賀!お前、何をしている!」

(何をしている?…………俺は勝負を売られたからそれを、潰しただけだろう)

「…………勝負しろと言ったのはこの金髪女だ」

俺はそう言うと机にぶつけた金髪女を机から離して、こちらを向かせる。

「……あなた、突然何をしますの!」

まだ、意識がある金髪女はそう言ってくる。

「……お前が勝負しろと言ったんだろ。だから、潰した。それ以外にこの状況になんの意味がある」

俺はそう言って金髪女の首から手を放す。

「決闘とは、ISで決闘をするという意味ですわ!そんなこともわからないですの!」

「知るか。それにお前と勝負しても俺には何のメリットもない」

俺は何もなかったかのように、自分の席に向かって歩いていく。

「…………いいですわ!でしたら、負けた方が勝った方の言うことを何でも一つきくという条件でどうですか!?」

(…………こいつがもし勝って、俺をここから追い出してくれるとすれば…………)

俺はそこまで考えると振り向く。

「…………のった。その条件でいい」

「………………話がまとまったようだな。勝負は一週間後の月曜だ。…………それから、この授業が終わったら孤賀は私についてこい」

暴力教師がそう言うと、残った時間で授業が再開された。

(…………呼び出し。それもあの暴力教師かよ)

俺はそのまま授業が終わるのを待っていた。












「…………それで、何のようだ。暴力教師」

ドカッ!

授業が終わり、近くの空き教室連れられた俺は暴力教師にそう言って、頭をしばかれた。

「お前は自分が何をしたのかを、しっかりと理解しているのか」

「……あの金髪女のことならどうでもいい。謹慎でも退学でも何でも受けてやる」

「そう言うことではない!孤賀、お前はなぜそこまで人と馴れ合うことを嫌う?」

(…………こいつに何がわかる。俺が全てを捨てることしかできなかった事を!)

「…………自己紹介の時に言った筈だ。俺は友情、仲間、信頼というものが嫌いだってな」

「だが、そんなことではお前は人の道から離れていくぞ」

「…………さっきから思っていたが、別にアンタが気にすることではないだろ。話がこれだけなら、俺にはもう関わるな」

俺はそう言って教室から出ようとする。

「…………中学二年の時の暴力事件」

「ッ!…………どこで調べた」

「お前の両親から聞いた」

(……余計な事を話しやがって!そんなに俺が邪魔なのかよ!)

「その暴力事件以来、お前の性格も変わったと言っていたぞ」

「……別に関係がない。俺はただ、もうどうでもよくなっただけだ」

俺は正直、ここでこの話がでるとは思っていなかった。

今の俺が存在している全てのきっかけの話をされるとは、全然思いもしなかった。

「では、何があったというのだ!」

「もう、俺には関わるなと言ってんだろ!…………お前らにはわかるわけがないだろ!」

俺はそう言って教室から出ていく。

「待て、孤賀!」

後ろから暴力教師がそう言っているが、俺は気にせずに走ってその場から去る。











俺が走り続けてたどり着いたのは、屋上だった。

「…………くそ。なんでまた、あの事を聞かれなくちゃいけないんだよ!」

ガンッ!

俺は屋上の扉を殴りつける。

「俺は決めたんだ」

もう、何も信じないと。

もう、全てを捨てると。

全てを捨てて一人で生きるって決めた。

「…………今さら信じられるかよ。友情?仲間?信頼?そんなものに何の価値があるんだよ!」

ガンッ!ガンッ!

俺はそう言いながら力任せに、扉を殴り続ける。

「俺が信じるのは自分だけだ。…………ッいてぇ」

気づけば、俺の右手は血だらけだった。

どうやら全力で扉を殴っていたようで、扉は一部だけ凹んだ後があり、そこには血がついていた。

「…………なにやってんだ、俺は」

ガチャ

俺が手を押さえながらそう言ってると、目の前の扉が開いた。

「や、やっと見つけましたよ。孤賀君って、どうしたんですか!?その右手」

扉を開けて屋上に来たのは、副担任の先生だった。

「…………べつに、これくらいなら大丈夫だ」

「大丈夫なわけないでしょ!とりあえず、保健室に行きますよ。ほら!」

そう言って俺の左手を掴んで、無理やり保健室へ向けて歩いていく先生。

(…………確か、山田……先生だったか?)

俺はなぜかこの先生の事が気になった。

今まで名前すら覚える気もなかった筈なのに、この先生ーーーー山田先生だけは覚えていた。

ガラッ

「そういえば、保健の先生は会議中でしたね。孤賀君はそこの椅子に座っていてください」

俺が考え込んでいるうちに保健室に着いていたらしく、俺は指示通りに椅子に座る。

「右手を私の方に向けてくださいね」

そう山田先生は言って、俺の右手の血を水で濡らしたタオルで拭いていく。

そしてそこに消毒液と塗り薬を塗って、ガーゼを当ててテーピングをしていった。

「はい、これで怪我の方は大丈夫の筈です」

「…………とう…………ご……ます」

「はい?何ですか?」

「…………いや、なんでもない」

(なんで、お礼なんて言ったんだ?)

俺は自分の行動を不思議に思っていた。

「織斑先生が孤賀君の事を探してくれって言いに来たときはどうしたんだろうって、思ってたんだけど…………何かあったのかな?」

「…………べつに。それに俺があの暴力教師に呼ばれたわけは、先生もあの時いたからわかってるはずですが?」

「…………確かにそうだけど、
私は孤賀君がなんでオルコットさんにあんなことをしたのかがわからないんです」

「ムカついたから、手をだした。それだけだ」

「嘘ですね」

俺の目をしっかりと見てそう言ってくる山田先生。

「…………先生がどう思おうと関係ないですけど、俺にはもう関わらないで下さい」

「……それは無理です。私は先生であなたは生徒。先生は困ってる生徒を見かければ助けるのが当然のことですから」

(…………助ける?誰がそんな言葉を信じろと?そう言った奴は全て嘘だった!)

「俺は困ってもいなければ、助けてもらう必要もない!」

俺が急に声を荒げたのに、驚く先生。

「俺はもう信じない!誰一人として信用しない!俺は信じることを捨てたんだ!」

「…………信じる必要はないですよ。これは私が勝手にやってることですから」

「それに、孤賀君は嘘をついていますから」

そう言って俺に向かって微笑む先生。

(…………なんだよ、この人。まったく俺の言うことにどうじない)

「……あっ、そうでした。孤賀君、早く教室に戻りますよ?早くしないと授業が終わってしまいます」

そう言うと再び俺の左手を掴んで、教室に向かって歩いていく先生。

「…………もう、自分で行きますから手を放してください」

「ダメです。孤賀君は一応怪我人ですから、先生も着いていきます」

結果的に俺はずっと先生に手を掴まれたまま、教室へと連れてこられた。

ガラッ

「すみません、織斑先生。孤賀君を連れてきました」

そう言って1組のクラスに入っていく先生。

俺はその後ろに続いて入る。

「………………孤賀、早く席につけ」

「……わかった」

俺は暴力教師にそう言われ、おとなしく自分の席に座った。












~真耶Said~

孤賀君が、オルコットさんに手をだした授業の後。

孤賀君は織斑先生に連れられ、どこか別の教室へ。

私は一旦、職員室に戻って授業用の資料整理をしていた。

ガラッ!

「山田先生、孤賀を探してくれないか?」

織斑先生が職員室に入るなり、私にそう言ってきた。

「何かあったんですか?」

「説明は後でする。……今の孤賀は私が行くよりも、真耶の方がいいだろうからな」

私はその時初めて、先輩の悲しむような表情を見た。

「わかりました。孤賀君のことは私に任せて、先輩は授業の方を頼みます」

「ああ、すまない。………………孤賀のことを頼む」

織斑先生はそう言うと、自分の席から次の授業に必要なものをとって、職員室から出ていった。

「……そういえば孤賀君を探すのはいいですけど、どこにいるんでしょうか?」

私は一番気になったことを呟いていた。

そこから私は孤賀君が行きそうなところを、手当たり次第に探しまわった。

学園のグランド周辺、各アリーナ、学生寮、そのどこにも孤賀君はいなかった。

そこで私はもう一度、学園の中に戻って屋上を探すことにした。

そして、三階から屋上へと続く階段を上っているとーーーー。

ガンッ!ガンッ!

「…………今さら信じられるかよ。友情?仲間?信頼?そんなものに何の価値があるんだよ!」

何かを殴るような音と、孤賀君の声が聞こえた。

私にはその時の孤賀君の声が、とても苦しんでいるように聞こえた。

そして私はゆっくりと屋上へと続く階段を上っていき、その扉を開けた。

ガチャ

「や、やっと見つけましたよ。孤賀君って、どうしたんですか!?その右手」

扉を開けるとそこにはやっぱり、孤賀君がいた。

でも、そんなことよりも私が一番気になったのは孤賀君の右手が血だらけの状態だということだった。

「…………べつに、これくらいなら大丈夫だ」

「大丈夫なわけないでしょ!とりあえず、保健室に行きますよ。ほら!」

私は大丈夫だと言う孤賀君を無理やり、左手を掴んで保健室へと連れていく。

ガラッ

「そういえば、保健の先生は会議中でしたね。孤賀君はそこの椅子に座っていてください」

私は孤賀君を椅子に座らせると、治療に必要なものを持って孤賀君の前に座る。

「右手を私の方に向けてくださいね」

私は水で濡らしたタオルで孤賀君の右手の血を拭いていく。

そしてそこに消毒液と塗り薬を塗って、ガーゼを当ててテーピングをしていく。

「はい、これで怪我の方は大丈夫の筈です」

「…………とう…………ご……ます」

「はい?何ですか?」

「…………いや、なんでもない」

一瞬だけ孤賀君がビクッとしたような気がしたが、私は話を続けようとした。

「織斑先生が孤賀君の事を探してくれって言いに来たときはどうしたんだろうって、思ってたんだけど…………何かあったのかな?」

「…………べつに。それに俺があの暴力教師に呼ばれたわけは、先生もあの時いたからわかってるはずですが?」

「…………確かにそうだけど、
私は孤賀君がなんでオルコットさんにあんなことをしたのかがわからないんです」

「ムカついたから、手をだした。それだけだ」

「嘘ですね」

私は孤賀君の目をしっかりと見て、そう言った。

「…………先生がどう思おうと関係ないですけど、俺にはもう関わらないで下さい」

「……それは無理です。私は先生であなたは生徒。先生は困ってる生徒を見かければ助けるのが当然のことですから」

私は自然とそう言い返していた。

「俺は困ってもいなければ、助けてもらう必要もない!」

私は、孤賀君が急に声を荒げたのに驚いた。

「俺はもう信じない!誰一人として信用しない!俺は信じることを捨てたんだ!」

「…………信じる必要はないですよ。これは私が勝手にやってることですから」

「それに、孤賀君は嘘をついていますから」

私は微笑みながらそう言った。

「……あっ、そうでした。孤賀君、早く教室に戻りますよ?早くしないと授業が終わってしまいます」

そう言うと私はもう一度孤賀君の左手を掴んで、教室に向かって歩いていく。

「…………もう、自分で行きますから手を放してください」

孤賀君は諦めたのか、そう言ってくる。

「ダメです。孤賀君は一応怪我人ですから、先生も着いていきます」

私はそう言いながら、教室まで孤賀君の手を放さなかった。

ガラッ

「すみません、織斑先生。孤賀君を連れてきました」

私はそう言って教室に入ると、孤賀君も私の後ろから入ってきて織斑先生に言われたように席についた。

私は決めた。

孤賀君に必ず信じてもらうことを。


















~無一人Said~

教室に戻ってから渋々授業を受けていた俺。

最悪だったのは、あれからの授業を担当するのが暴力教師だったことだ。

そんなこともあったが、今は放課後。

(家に帰ったら文句ぐらい言っとかねぇとな)

俺が荷物をまとめて帰ろうとした時だった。

「織斑君、孤賀君。まだ教室にいたんですね。よかったです」

書類を片手に持っていた山田先生に呼び止められた。

「はい?」

俺と一緒に呼ばれたバカが、返事をする。

「えっとですね、お二人の寮の部屋が決まりました」

「…………ちょっと待ってくれ。俺はしばらく自宅からの登校だった筈だ」

「政府からの命令だ。仕方がないだろう」

俺の問いに答えたのは山田先生ではなく、暴力教師だった。

「………だったら、荷物を取りに家に戻ってもいいんだよな?」

俺は余計な事を聞かずにさっさとこの場を離れようとする。

「そのことだが織斑の荷物は私が用意した。孤賀の方は親御さん達が渡してくれた」

(……そんなに俺が邪魔なのかよ、あの二人は)

俺はそう思いながらも、今は感情を殺して話を続ける。

「一つ言っとくが、俺はこのバカと同じ部屋なら野宿させてもらうぞ」

俺がそう言った時、バカは驚いていた。

「その心配はない。お前らは別々の部屋割りだ」

「………なら、もうどうでもいい。部屋の鍵をくれ」

俺がそう言うと、山田先生が鍵をくれる。

「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。織斑君、孤賀君、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」

そう言って二人は職員室の方へ歩いていった。

「なあ、孤賀。お前の部屋って何号室なんだ?」

「…………1017号室だ」

俺がそう言うと、バカは信じられないような表情をしていた。

(俺が部屋の場所を言ったのが意外なんだろうが、言ったのは適当な部屋だ)

「…………じゃあな、バカ」

俺はそう言うと、寮とは逆の道へ歩いていく。

バカには1017号室と言ったが、本当の部屋は1150号室だ。

(バカにからまれるのは、面倒だからな)

俺はそう思いながら歩いていると、中庭らしきところに来ていた。

此処は………似ている。

(…グッ、違う。此処はあそこじゃ……ない)

中庭に来た俺は昔の事を思いだし、激しい頭痛に襲われた。

「あら?君は噂の男性操縦者くんかな?」

そう言いながら目の前に現れる、青い髪の女。

「…知る……か」

「会話になってないのだけどって、君、大丈夫?顔色がわるいわよ?」

「……だったら、そこを………どけ」

「う~ん、お姉さんとしては少し聞きたいことがあったんだけど、その様子じゃあ無理よね」

女はそう言うと、俺に道を譲った。

俺は覚束ない足取りで女の横を通りすぎると、寮の方へと向かう。

寮に着くと、すぐに部屋の前に行って鍵を開けようとする。

「…………開いてる」

鍵が開いてることを確認し、俺は部屋の扉を開ける。

「ああ、やっと帰ってきましたね!って、どうしたんですか!?顔色がものすごくわるいですよ!?」

部屋の中には山田先生がいた。

「………なんで、先生が…………ここに?」

「そんなことより、ベットに横になって下さい」

そう言いながら、俺を奥のベッドへと誘導していく山田先生。

「……グッ」

部屋に来ても、頭痛は止まる気配をみせない。

「大丈夫ですか、孤賀君?」

「……寝れば、治まる」

ベットに横になりながら、俺はそう言った。

「そうですか。では、何かあれば言ってくださいね?今日から私たちは、ルームメイトですから」

「…………はい」

先生が何か重要な事を言った気がするが、頭痛の影響でそこまで頭がまわらない。

俺はそのまま意識を手放すように、眠りについた。


 
 

 
後書き
次回、3話『孤独者と意地』 
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