スカートちらり

第五章

　当然この女友達とも共謀している。何処までも慎重に策に徹していた。
「それだけでだけれどね」
「そうそう」
　何気ない話を装ってである。そのうえでスカートがわざと動いて見せそうにしてみせる。見えてもそれはその時という意気で、彼女は動いていた。
　しかしここで、であった。動いたその時にバランスを崩してしまった。
「あっ！？」
　それで倒れてしまったのだがその倒れ方と倒れた場所が悪かった。
「あ、わわわわっ！」
「と、朋子！」
　その友達も慌てて声を出して手を差し伸べようとしたが手遅れだった。朋子は背中から倒れ込んだ。しかもそこは潤の席の上だった。
　そのまま潤の上に落ちて。彼ごと倒れ込んでしまったのだった。気付いた時は床の上だった。
「いたたたたたたたた・・・・・・」
「大丈夫？」
　下から彼の声がした。
「随分と派手に転んだけれど」
「え、ええ」
　何とか応えながら起き上がろうとする。ここで気付いたのだった。
　彼の上に落ちている。彼がクッションになったのだ。
　それで短くしていたスカートが。
「ちょ、ちょっと！」
　慌ててスカートを元に戻した。何と完全にめくれあがっていてそれで白いショーツが丸見えだったのだ。顔を真っ赤にさせてそれで隠した。
「み、見た！？」
「何を？」
　まだ下にいる潤から素っ頓狂な返事が来た。
「何を見たって？」
「そう、見てないのね」
　このことにはほっとした朋子だった。
「よかった。流石にこんなにはっきりと見せるのはね」
「はっきり？」
「そうよ、はっきりよ」
　彼の上からどきながら話していくのだった。
「そういうのはね。やっぱりね」
「はっきりとなんだ」
「そうよ、見せるのはあくまでちらりよ」
　気が動転して冷静でなくなっている。それで今自分が誰に話しているのかわかっていなかった。女友達と話しているつもりになっていた。
「ちらり。だって由良君気付いてくれないし」
「あの」
　ここでも朋子は気付かない。
「何に気付かないの？」
「だから。いつも言ってるじゃない」
「いつもなんだ」
「そうよ。由良君をその気にさせないと告白してもよ」
　女友達はそれを聞いて。唖然とした。
「まさかわかってないの？この娘」
「上手くいかないじゃない。だからいつも仕掛けてたけれど」
「そうだったんだ、好きだったんだ」
「そうよ・・・・・・ってこれも言ってるじゃない」
　朋子はたまりかねたように返した。
「全く。私が由良君のこと好きだって」
「そうだったんだ」
「そうよ。けれど彼中々気付かないから」
　立ち上がってスカートの後ろの埃をはたきながら話していた。
「こうやってね」
「わかったよ」
　声は頷いたものだった。
「それだったら。僕でよかったら」
「僕！？」
　今の一人称でやっとおかしいと思いはじめたのであった。
「僕っていったら」
「あの、椎葉さん」
　気付いた時にはだった。目の前に立ち上がった潤がいた。我に返ったその時にだ。