とある地下の暗密組織(フォートレス)
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序
ep.002 『GROWと青い正義』
前書き
『とあるシリーズ』みたいなロゴを作るサイトより、特製のタイトルロゴを作ってみました!
夢絶は、携帯電話をポケットから取り出す。
プルルルルルルッ、プルルルッ、プツッ
「ハァ~イィ、もしもしぃ~。キラッときらめくみんなの相談役、島崎 向子さんだよぉ~。」
おそらく電話の向こうでは、二十ちょい過ぎのいい大人が決めポーズをとっているであろう。
「それでカナ☆リン~、今日は何の用ぅ~?」
そしてこの切り替えの早さである。
「ああ、お前さぁ。」
訂正を加え、
「いや、お前らさ、最近『青い正義』に武器提供とかしたか?」
向こう側で何やらガサゴソとし出す。
少し間ができ、返答。
「まあ、何やら銃がほしいって依頼が来てねぇ~。商売人としてはこっちも手は抜けないしねぇ~。」
(あぁ、やっぱりお前らが全ての元凶かぁああああぁぁ~)
そして、おそらくとてつもないほどの笑顔で、
「いやぁ~、カナ☆リン今ものすごく楽しそうなところにいるねぇ~。」
くすくすという笑い声がやたらとウザく感じる。
「おい、今こっちはお前らの売りさばいた武器のせいで、とてつもない状況に陥っているんだがっ・・・・・・・・。」
返答がない。
プツッ、プーーッ、プーーッ、プーーッ。
切れた。
ブツッ!
もう一度、何かが切れる音がしたと同時に、階段の辺りから光が出る。日の出の様に少しづつ大きくなっていく光を、夢絶は結構前から知っている。
「島崎 向子《こうこ》。」
その光は階段の上、1メートル半辺りに魔法陣の様なものを、地面と平行に作り出した。
中から、まだギリギリ女の子と呼べる年齢の女性が降ってくることなく落ちる。
座った態勢のまま転移してきたからであろう、その態勢のまま階段の最上段に腰を打ち付けた。
けっこう痛そうな音だったので、声はかけないでおこう。
あまりの衝撃で、うつ伏せになってしまった。腰を強く抑えている。
そして、すこし間をおいて起き上がると元気な笑顔で、
「いやぁ~、カナ☆リン。こんな状況によくなるねぇ~。」
完全に何もなかったかのようにしている。
「腰大丈夫か、けっこう痛そうな落ち方してただろ?」
そう簡単に、事件を流させはしない。
(フッフッフッ、残念だったな! 他人の災難を易々と見逃すおれじゃいぜっ!)
けっこうなドヤ顔であった。
ポケットからチラリ、
「カナ☆リン、流してくれるとありがたいなぁ~。」
御臼の『生着替え盗撮写真』がはみ出る。
「いや、あと2だ。」
真顔になり、要求。
「ごめんね、カナ☆リン。手持ちはこれしかないよぉ~。」
「なら後日、もらい受けよう。」
話変わり、本題。
「で、あいつ等は襲ってこないんだな?」
夢絶が吹き飛ばした扉の方を横目に言う。
「うん。 彼らは武器を要求するとともに、戦術まで聞いてきたからねぇ~。」
『GROW』
学園都市のほとんどの情報を握っている暗部。その情報源は、学園都市の『都市伝説サイト』などであるが、その情報が真実かどうかを調べるために50人程度の本業者がいる。
また、サイトの利用者まで合計すると、構成人数は学園都市の過半数であるともいわれている。
「そう言えばカナ☆リン。」
少し声のトーンが変わり、真剣さがうかがえる。
「青い正義たちの目的って知ってるぅ~?」
青い正義。無能力者の人間たちが高位能力者を恨んだ結果出来た組織。元々はサークルのようなものだったが、勢力が拡大し過激になっていき、現状に至る。
「そんなもん知るか! ただの不良集団だろうがっ!」
叱りつける様な感じだ。
「まあ、私も目的を話さない集団に武器を売る訳がないよねぇ~。」
そして彼女が転移門を作り、
「彼らの目的は、私達。 全高位能力者の殺害。」
夢絶は「なんだそんな事か。」と言いたげな顔をしている。
「なんだよ、んな事かよ。」
と言うより、言った。
「まあ、これがない時ならば、私もそう言えたんだろうねぇ~。」
転移門から彼女が取り出したのは、藍色のフレームに、玉虫色の様な光沢をした大口径の狙撃銃が出てきた。
「おい。 なんだよ、これはっ!?」
「なにって、『JAIM鉱石』を主な原料として作られた、アンチマテリアルライフルだよ。」
おかしい。
「おい。人間にしか意味のない銃をどうして対物ライフルまでの威力にする必要がある?」
回答。
「たしかに、人間にしか効果が発揮されない。しかも、この学園都市の能力者だけがこの銃による攻撃が大きいだろうね。」
「でもね」
と続ける。
「でも、あまりに大きくなった集団をまとめるには、大きな目標が必要だったの。」
「あいつ等か?」
夢絶の問いかけ。
「いや、私たち『GROW』に。」
なんとなくその気持ちや、意見は理解できた。それ故に、反論できなかった。
今ふと思い湧いてきた、疑問。
「ところでだが、その銃はどこから持ってきた?」
「あぁ、さすがにここから地下の目的区までは遠くて、扉の向こうの人のを一つ拝借させてもらった。 テヘッ。」
最後の『テヘッ』にムカッと来たのと、明らかに向こうで銃を構える物音がした。
「テェエェンメエエエェェェーーーーーーーーーーーッッ!!」
夢絶が向子を抱えて、一階に向かう階段に飛び込む。
夢絶は向子を庇うようにして抱きかかえ、階段を転がり落ちていく。
さっきの非常階段には、壁から飛び散っている欠片で埋まり、壁は両面穴だらけであった。
「もおぉ~、痛いじゃないかカナ☆リン~」
「こっちも多分痣だらけだっつぅのっ! あまり痣が目立たないように庇っただけでも、評価してほしいねっ!」
肩を抑えながら。
そして起き上がった二人と、下で忘れ去られていた一人が鉢合わせする。
「叶先輩、今の爆・・・・・は・・・・つ、・・・・音は? ???」
御臼の頭が?マークで埋まる。
「あっ。 いや、御臼ちゃん。そういう事じゃなくてですねぇ、これは・・その・・・・・・」
何も言えなかった。
急に笑顔になり、
「え、何がそういう事じゃないんですかぁ?」
怖い笑顔だ。
「というか、何で向子さんがここにいるんですか?」
一方、その御臼ちゃんの言う向子さんはというと、何かを恐れるようにして夢絶にしがみついた。
(あっ・・・・・)
となんとなく察し、同情までしたが、あえてここで嘘をついた方がこいつ等への恨みも少しは晴れると
いうものだ。
「いやぁ~、上に行ったときに待ち伏せされててな。 てか、今回はこいつのせいだから、こいつ引っ張って先帰っておいて大丈夫だよ。」
御臼が、笑顔で了承する。
向子が、泣顔で救援を求めている。
夢絶は、ニタニタと送り届ける。
「さて。」
彼女らが見えなくなってから、
ポケットから携帯を再度取り出す。
プルルルッ、プルルルッ、プルルルッ。
三度、鳴った後に今度は切る。
プツッ、という音の後。
そこら辺にテキトーに落ちている手に収まるくらいの瓦礫を持つと、支柱に。
激しい音とともに煙が舞い、支柱が壊れる。
拾っては投げ、拾っては投げ、時に蹴り飛ばし、一階の支柱を全て壊した後、トドメの一撃。壊して、倒した支柱の一本をこの部屋の真ん中にある中央階段にめがけ、一蹴り。
ドゴォォォンッ!!
と重い破壊音とともにビルが崩れ始める。
(これで後はあいつに任せるか。まあ、下敷きになったとしても、無事だろう。)
そして、正面玄関からそのビルを後にする。
誰もいないせいか、少し寂しい道であった。
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