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生徒会長

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2部分:第二章


第二章

「これは?」
「読んで下さい」
 見ればそれは手紙だった。丁寧に封までされている。
「この手紙。宜しければ」
「私への手紙ですね」
「そうです」
 姿勢はちゃんとしたものになったがそれでも態度はあまり変わってはいなかった。おずおずとしており今度はそのうえに顔を真っ赤にさせていた。
「本当に。よかったらです」
「よかったら?」
「読んで下さい」
 またこう沙代子に告げるのだった。
「よかったらですけれど」
「まさかこれって」
「そうよね」
 沙代子の周りの女の子達は直也が差し出したそれを見て騒いでいた。どうやら彼女達は彼の手紙が何なのかわかっているようであった。
「あれよね」
「まさか。わざわざここまで持って来るなんて」
「けれどあれね」
 彼女達は言い合う。
「このシチュエーションって何か」
「凄いっていうか」
「私が読めば宜しいのですね」
 だが沙代子はその周りの声を耳に入れていない。今は直弥に対して向かい合い彼から目も心も離していなかったのだ。やはりこの時も堂々としている。
「それでなのですね」
「はい、どうか」
 直弥の言葉は嘆願になっていた。
「御願いします。どうか」
「わかりました」
「ええっ!?まさか」
「それって」
 今の沙代子の言葉にまた周りの女の子達が騒ぎだした。今度は先程よりもかなり騒がしい。
「この子の告白を受けるの!?」
「会長が」
「では読ませて頂きましょう」
 手紙を受け取ったうえで述べたのだった。
「家で。ゆっくりと」
「それで返事は」
「後程」
 穏やかな言葉を直弥にかけた。
「それで宜しいですね」
「は、はい」
「返事もです」
 ここでも落ち着いた雰囲気を保ったままの直弥だった。
「はいと一言でいいのです。落ち着いてです」
「すいません」
「謝ることはありません」
 またしても沙代子の声が直弥にかかる。
「謝るまでもないことですから」
「はあ」
「そういうことです。それでは」
 手紙を鞄に収めてそのうえで彼に別れを告げた。
「迎えの者が来ますのでこれで」
「わかりました。それじゃあ」
「後日。そうですね」
 少し考える目をしてから直弥に声をかけた。
「三日後で宜しいでしょうか」
「三日後ですか」
「そう、三日後です」
 期日も彼女の方から指定してきたのであった。
「三日後。この時間にここで御会いしましょう」
「三日のこの時間にここですね」
「いけませんか」
 述べた後で彼に問い返した。
「それでは。貴方に不都合でも」
「いえ、それは」
 何はなくとも返答が欲しいのがこうした場合である。だから直弥は一にも二にもなくすぐに頷いて沙代子に対して答えたのであった。
「御願いします。では三日後にこの時間でここに」
「私は間違いなくこの時間にいますので」
 クールに直弥に告げる。
「遅れられることのないよう。御願いしますね」
「はい、絶対に遅れません」
 直弥の言葉は必死なものであった。声にそれがはっきりと出ている。
「何があっても。本当に」
「期待しています。では」
 ここで遂に迎えの車が来た。黒い大きなリムジンであった。直弥にとってははじめて見る本物の高級車であった。しかも運転手付きの。
「うわあ・・・・・・凄いや」
「驚くべきことではありません」
 しかし沙代子の言葉の調子はここでも変わらない。
「驚くべきことはものに対してではないのです」
「ものにじゃないんですか」
「人に対して驚くものです」
 こう直弥に告げる。告げているその前ではもう執事が出て来て扉を開けている。本当に直弥にとっては漫画で見るようなお金持ちの光景であった。
「その人の人格の素晴らしさに。ものは大した問題ではないのです」
「はあ。そうなんですか」
「貴方も殿方なら」
 今時珍しい言葉であった。殿方という言葉は。
「このことはわかっていて下さい。いいですね」
「わかりました。それじゃあ」
「わかって頂ければいいです。では」
「お嬢様」
 あの執事が前に一歩出た沙代子に対して声をかけてきた。実にいいタイミングだ。
「それでは。宜しいでしょうか」
「ええ、爺や」
「爺やって」 
 このやり取りもまた直弥にとっては驚きであった。
「間近で見たら余計に何か」
「ちょっと待って」
「あんた多分だけれど」
 下級生達が直弥に問うてきた。沙代子にとっては下級生であるが直弥にとっては先輩にあたる。だから彼に対してこの言い方もいいのである。
 
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