ぼくだけの師匠
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第1章~ぼくらを繋ぐ副作用~
06.鬼ごっこ
諏訪が周りに冷たい目線を浴びながら、企画をたてたのは先日のことだった。
演説をする諏訪を遠目から眺める如月は、菊地原のランク戦を見に来ていた。
それがいつしか諏訪の演説を眺める状態に変わっていた。
時々咳をしながら如月は、元気な諏訪を楽しそうに見ていた。
「A級に負けたまま一生を過ごしたいというのか!!」
諏訪らしい考え方ではあるが、周りに押し付けるのは得策ではない。
この場合、人の心理を考える話でもないのだが。
菊地原はランク戦を終えると、如月に駆け寄った。
最近、菊地原はよく如月になついている。
「日頃がつまらんとは思わないか」
「思わない、思わない」
諏訪の演説についつい反応した如月は、周りから姉貴と呼ばれているらしい。
姉貴と呼ばれたその人は、諏訪の提案した鬼ごっこに参加するつもりらしい。
ボーダー本部で遊ぶ前に仕事をしろ、と言いたいところだ。
菊地原は帰宅しようとしたところを如月に止められた。
「いいデータがとれそうだ。」
そう言うと、菊地原の手を強制的に挙げさせ、鬼ごっこに参加させた。
誰かが止めれば良いのだが、止める役の東まで参加したのだ。
太刀川
菊地原
如月
諏訪
当真
嵐山
時枝
歌川
米屋
出水
東
このメンバーで鬼ごっこを始めることになった。
「ルールは簡単!!
鬼と逃げる役に分け、先に全滅した方が負け!!
捕まった奴はロビーに集まり、味方にタッチされたら復帰!!」
如月は全滅の意味が理解できなかったが、鬼ごっこ開始直後に理解した。
太刀川の『おかげ』、というより、『せい』だ。
鬼ごっこ開始直後に太刀川は時枝を緊急脱出させたらしい。
「あぁ・・・」
味方か敵か太刀川だから確認なんぞしていない。
ただ斬りたかっただけなのだ。
第一いつからトリオン体がルールにあがったのか。
ないからトリオン体ありになったのだろう。
如月はスコーピオン片手に走っていた。
太刀川に会う必要があるからだ。
そこに運が良くも悪くも菊地原に出会う。
「如月さん?」
「菊地原か・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
聞くべき質問を聞く勇気が出ないまま、沈黙を続ける。
しかし、如月はついに口を開いた。
「お前、鬼か?」
「そうだけど!?」
如月は聞いた瞬間にメテオラを放ち、菊地原に斬りかかろうとした。
ある視線に気付き、半身を引いて避けた如月は驚いた。
あの東がアイビスを本部で撃ったのだ。
性格からそれはないと考えていたが、東は楽しみたいらしい。
「はぁ!?東そんな性格じゃないだろ!?」
そうは言っても撃たれたものは事実だ。
如月は仕方なく退散。
そこに入れ替わるようにやって来たのは、出水と米屋だった。
そこは出水と米屋に任せておき、如月は太刀川と出会った。
確認すべきは鬼か否か。
「俺は鬼じゃない。
やべ~鬼か聞く前に時枝斬っちゃった。」
「だとおもった。確認したかぎり時枝は味方だ」
「あぁ、やべ」
そんな時、誰かが緊急脱出した。
出水と米屋だ。
蜂の巣にでもされたのだろうか。嵐山と諏訪に。
如月は今いる場所を確認し、太刀川から弧月を貸せと言う。
今、彼女は弧月を所持していないのだ。
「知ってるか?ここの下はロビーなんだ」
「つか、トリオン体じゃないやつらを解放してどうすんだよ。逃げれないし。」
「だから鬼を緊急脱出させるのが、俺たちなんだ」
太刀川は納得したらしく、弧月を貸し与えた。
そして床を切り刻む如月。
落下する二人。
その二人が見たのは城戸司令官の冷たい目だった。
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