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浪速のど根性

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12部分:第十二章


第十二章

『わかったな』
「ああ、わかったわ」
 守も忌々しげに母親に言葉を返す。
「じゃあ帰ったらな」
『お客さん待ってるで』
「こっちもごっつい連れて来るわ」
 こう母親に返す守もかなりのものだ。
「楽しみに待っとれや。今日はパーティーや」
『お好み焼きパーティーかいな』
「そや」
 このことも母親に言う。
「ボクシング部でな」
『ええこっちゃ。じゃあそっちも目指すんやな』
「何をや」
『決まっとるやろ。世界一や』
 また世界一という言葉が出て来た。
『世界一のお好み焼き屋や目指さんかい』
「おう、やったるわ」
 守も守で母親の言葉を受けて立つ。
「お好み焼き世界一もな。やったるで」
『よっしゃ。わかったわ』
 これで電話は終わった。一応は。しかしそれで全てが終わったわけではなかった。
「さて、と」
「何か凄いおかんやな」
「お好み焼き世界一かい」
「こっちもやったる」
 守は強い言葉で言った。
「絶対にな」
「ボクシングだけやなくてか」
「ああ。もんじゃには勝った」
 原との勝負のことだ。
「だから言うてもボクシングもお好み焼きもまだまだやからな」
「どっちもかい」
「そや、どっちもやったる」
 左拳からストレートを出しての言葉だった。
「絶対にな」
「まあやったれ」
「応援はするわ」
「たっぷり食えや」
 また拳を出していた。今度は右だ。
「これから世界一になるお好み焼きな。これから世界一になるボクサーが焼いたやつをな」
「どっちもこれからかい」
「まあ先行投資や思うて」
「頂くかい」
 部員達もそんな彼を前に見ながら言うのだった。赤い夕陽が守の背中を照らしている。彼はその赤くほのかに暖かい灯りを背中に受け長い影を見えながら誓っていた。どちらでも世界一になることを。今誓っているのだった。


浪速のど根性   完


                   2008・10・30
 
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