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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ソードアート・オンライン】編
  119 終わりの始まり


SIDE 《Yuhno》

(リュウには〝ああ〟は言ったけど…思うところが無いと言ったら嘘になるかな、〝これ〟は…)

キリトとアスナがユイをなし崩し的に──〝原作通り〟に預かる様になって、数日が経過しようとした月始めのとある日の事。……≪異界竜騎士団≫と≪血盟騎士団≫の合同イベントが開かれようとしていた。

その合同イベント自体は、ティーチ君がヒースクリフに最前線が26層の時に話を着けたものなので、それから幾日が経っている現在となってはそれほど珍しいものでは無い。

……しかし、ヒースクリフやティーチ君は今回75層ボス──最後のクォーターボスを目前に控えて全体の士気を高める為なのか、〝いつも〟とはその様相を(こと)にしていた。

(……〝アスナの件〟がないから〝この決闘〟は起きないと思ってたんだけど…)

[≪黒の剣士≫VS≪聖騎士≫! 今日アインクラッド最強の剣士が決まる!]

見出しにそんな風にでかでかと記された新聞を見ながら、修正力やら何やらに神妙な気分になる。

……態々(わざわざ)〝戦士〟と書かず〝剣士〟と書いているので、この記事の記者は地味にティーチ君贔屓と云う事が、どことなく窺える。……そこはかとなく──身内贔屓込みで同意ではあるが。

閑話休題。

ちなみに、〝ユニークスキル使い〟と云う括りでは“無限槍”のティーチ君を、と云う話もあったらしいが“無限槍”はそのスキルの性質上〝プレイヤー同士〟ではオーバーキルになりやすいきらいがあるらしいので、ティーチ君は〝ユニークスキル使い同士〟と云う舞台からは辞退している。

また閑話休題。

75層主街区──闘技場を併設している【コリニア】が〝その決闘(デュエル)〟が行われる場所で、ボクやティーチ君──そして、当然のことながら、アスナとユイはその闘技場の観客席に腰を下ろしていた。

「パパ、大丈夫でしょうか…」

「うん…。……きっと大丈夫だよ、だってパパ──キリト君はとっても強いから」

不安そうにキリトを心配するユイに、アスナは励ましの声を掛ける。……どことなしにアスナの声から〝不安〟さが感ぜられるのはユイへ放った言葉は自身への自己暗示を兼ねていたからか。……事実上〝ユニーク同士〟がぶつかるのは初の出来事なのでアスナの心慮も判らなくはない。

……ボクも多分、ティーチ君が〝この世界〟の創造主であるヒースクリフとぶつかるとなったら、気が気ではなくなるだろうから…。

(……ユイについても考えなきゃ…)

内心で述べた通り、ユイについてはボクとティーチ君はお手上げ状態だったりする。ユイ──もとい《Yui》を〝カーディナル〟から引き剥がすにしても、コンソールに接続(アクセス)するにはユイを地下まで連れ立つ必要があるからだ。

……【はじまりの街】を治めているのが≪DDD(ボクたち)≫で──〝地下ダンジョン〟を押さえているのがボクたちのギルドであるからして、バタフライエフェクト的に〝原作〟で起こり得た〝軍の横暴〟や〝キバオウとシンカーの(いさか)い〟が起こらなかった。

(……どうやって地下のコンソールまで連れて行くかな)

ボクがティーチ君に地下のダンジョンを公表する様には提案したが、〝軍〟による独占が出来ていないので、最下層まではマッピングが出来ていない。……つまりは〝〝システム〟にアクセス出来るコンソール〟なんてものは対外的には存在していないのだ。

……そこでボクがヘタをやって、地下のコンソールの事をキリト達に溢したりなんかしたら〝変な空気〟になることは判りきっている。……なので、ユイの件については手放しになっているのが現実問題だったりする。

それに──こう云っては何だが、〝この決闘〟が成っている以上は──〝ヒースクリフ=茅場 晶彦〟の等式に気付くフラグが建っている以上は、おそらくキリトは75層フロアボス戦後に、そこに多分気付く。

時間的な余裕はもう殆ど無かった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 《Teach》

「……で、〝アレ〟は〝原作通り〟って事で良いんだよな?」

「うん」

俺の主語をぼやかした問いにユーノは肯定の意を示す。〝アレ〟とは本日──今から1時間前に行われた、〝キリトVSヒースクリフの顛末(てんまつ)について〟である。……ユーノからしたらキリトがヒースクリフに敗北するのは判りきっていたことらしい。

……先にも軽く触れたことだが、キリトはヒースクリフに敗れた──のは、〝完全決着〟の決闘(デュエル)ではなかったのでまだ良い。……ただ、キリトの敗れた経緯が俺には意外だった。

(……やはり有ったか〝ソードスキルに対処する方法〟…)

ヒースクリフはキリトの鬼神の如き連撃を〝明らかに不自然な挙動〟で──その堅牢な盾が〝ブレる〟のを見逃さなかった。……恐らくはGM専用のシステムアシストの様なものとあたりを付けて──ヒースクリフが今回システムの〝アシスト(仮)〟を使ってしまったのは、キリトの攻撃が予想以上に激しいものだったからともあたりを付けておく。

……それでなければ、慎重なヒースクリフが数多(あまた)居る観衆(ギャラリー)の前で危ない橋を渡るとは思えなかったからだ。

「……ティーチ君にはユイ──《Yui》については教えたよね」

「ああ」

(おもむろ)にユーノが語りだす。ユイから感ぜられた違和感を、〝知識持ち〟らしいユーノに聞いてみたところ、ユイ──《Yui》はAIだという事が判明した。

……《Yui》はすでに〝アインクラッド内からは〟消滅していて然るべきらしいが、ユーノが云うには俺が1層を根城にしたことで、バタフライエフェクト的にユイはまだ消えずにアインクラッド内に居るらしい。

「……ティーチ君には先に言っておくけど、キリトは多分ヒースクリフの正体を看破すると思う。……そしてヒースクリフに〝とある賭け〟をしてキリトはその賭けに勝って【SAO】をクリアする」

「……ありそうだな」

意外と鋭いところがある弟の事を思い出して、素直に思った事を口にする。するとユーノは〝まだ話は終わってない〟とばかりに続ける。

「……そこで、出来たらで良いんだけど、ティーチ君はヒースクリフから──ひいては〝カーデイナル〟から《Yui》を奪い返して、キリトのナーヴギアに《Yui》を入れて欲しいんだ」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

―カーデイナルに接続(アクセス)出来るコンソールは地下にあるけど──ティーチ君ならどうにか出来ないかな…?―

「……簡単に言ってくれる」

ユーノからの頼み。……その対処法にまず思い付くのは、もはやお馴染みの──好きな場所好きな時に居られるスキル…“腑在証明(アリバイブロック)”はいつもの様に、〝使いたい〟とすら思えない。……神様(ミネルヴァさん)印の特典なはずの“有言実行(ネクストオネスト)”も使えない。

(……〝現実世界(あっち)〟では一応、両方使えていた…。……と云う事は何か条件でも──カットカット)

有言実行(ネクストオネスト)”や“腑在証明(アリバイブロック)”を〝使いたい〟とすら思えない理由を考察しようとするが、理由が判らないのでいつもの様に思考をカットする。……〝判ろうと思えない事〟に思考を回していても、時間の無駄にしかならないのもあった。

――ピコンッ

現実逃避が如く何か違う事──より効率的なレベリングに関して思考を回そうとした時、その思考が〝とある人物〟からのメッセージによってぶったぎられた。……メッセージの送り主は≪鼠のアルゴ≫だった。

……そのメッセージの内容は…

[フロアボスの部屋が発見されたそうダ。今回の発見者は≪KoB≫デ、明後日の10:00にグランザムの≪KoB≫の本部内作戦会議室に集合だってヨ]

「……今回のフロアボス発見は≪血盟騎士団≫か…。……珍しいな」

そのメッセージを脳内で噛み砕いていると、不意に激闘の予感がした。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「先見隊が全滅!?」

リーファのその悲痛染みた確認はこの会議室に居るメンバー──≪異界竜騎士団≫≪血盟騎士団≫を主としたメンバー全員の驚愕を代弁したものだった。

「リーファ君も言った通り、≪KoB≫──私のギルドから副団長を務めていたゴドフリーとクラディールが率いていた隊──12人が一瞬にして消えたと聞いて、既に≪鼠≫殿に確認をとってもらったが、《生命の碑》の欄にはクラディールと我が≪血盟騎士団≫が副団長のゴドフリー、以下数名ずつの名前には線が引かれていることも確認を取ってもらっている」

クラディールにしろゴドフリーにしろ──クラディールはその性格に難があるとは云え、最前線を生き抜いていた生え抜きの精鋭が一瞬に消えたのだが、そこは〝さすがヒースクリフ〟と云うべきか──彼は淡々と教科書を朗読するかの様に語る。

「そこの≪聖騎士≫さんにいきなり頼まれてネ、〝何事カ〟──と押っ取り刀で確認に行ってみたら《生命の碑》のそのお二方の名前の欄には線が引かれていたヨ」

……豈図(あにはか)らんや──意外にもこの場に居合わせている≪鼠のアルゴ≫に顔を向けてみれば、俺の視線──もとい、ヒースクリフ以外全員の視線に気付いたらしいアルゴは鷹揚(おうよう)に頷き、補足するかの様に言葉を発した。

「……さて、ティーチ君はどう見るかね?」

「……俺かよ」

アルゴからの情報に皆して顔を蒼くしているとヒースクリフがそんな質問を投げ掛けてきた。水を向けられた俺は、これ以上士気を下げないためにも思考を回す事に集中する。

「……取り敢えずは転移結晶は使えないかと。ボス部屋も完全に封鎖されるカタチとみていいだろう」

「なんでそう思ったんや」

「理由としては、前者は使えるなら使っているだろうし〝74層のボスの件〟も有るし後者も前者と大体同じで、逃げられるなら逃げてるだろう。……何しろ12人も居たんだからな」

キバオウの問いに答えてやる。……しかし、どちらも推測の域を出ないのは代わりないが…。

「私もティーチ君と同じ意見だよ」

〝その可能性〟について自分なりに考察を重ねていると、そこでヒースクリフからいけしゃあしゃあ、と俺の疑問を解くかの様な援護射撃。

今回のフロアボス攻略会議は結局──推測上威力偵察も無理だったので、ボス攻略の日時を2日後に決めて、ゴドフリー──≪血盟騎士団≫の副団長の〝穴埋め〟として俺を〝臨時副団長〟と一時的に定めただけに終わった。

SIDE END 
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