FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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破滅の冬
前書き
ウェンディが蛇姫の鱗に加入してた時の話題で気になったのがある。
シェリアのいとこのシェリーどこ行ったんだ?結婚して出ていったっていうからてっきり天馬に行ったのかとも思ったけど、剣咬の虎と共闘するシーンに全くそれらしき人影がいない・・・
まさかの専業主婦とか?魔法使える専業主婦って勿体無いような・・・
「ぐああああ!!」
水のブレスを受けて後方に飛ばされていくレオン。俺はその間に体に巻き付いている大蛇を同じようにブレスで破壊する。
ドガァン
レオンが飛んでいった方向から大きな音が聞こえる。そちらに目を向けると、建物にめり込んでいるレオンが見えた。
「マジかよ・・・完全に動きを封じたと思ってたのに・・・」
ドサッと壁から地面に落ちるながらそう言う。やはり咄嗟に放ったブレスだっただけにあまり効果があるようには見えない。だけど、それでもダメージは与えられているようで、レオンの体には傷がしっかりと刻み込まれていた。
「頭だけは動かせたからね。ソフィアが言ってたことが今わかったよ」
4人で戦っていた時にソフィアがグラシアンさんに拘束された時に、頭だけで俺の魔法から身を守っていた。確かに体は拘束しても頭までは拘束することはないと思う。そう考えるとこれって以外と使えるんじゃないかな?ただ、頭突きをするにも勢いをつけないとダメージをあまり与えられないから意味ないかもだけどね。
「なかなか魔法が当たらないよな・・・でもあれをやるとジュラさんとシェリアまで巻き込んじゃうし・・・」
俺の方を見つめながら思考を巡らせている様子のレオン。一体何を考えているのかわからないけど、ジュラさんとシェリアを巻き込むって・・・どういうこと?
「いや!!大丈夫だな!!あの2人ならなんとかしてくれるだろう!!その後のことは俺は知らん!!」
いきなり声を大にして言い訳のようなことを言い出すレオン。すると、彼は全身に力を入れるに体勢を整える。
「氷神・・・・・破滅の冬!!」
彼がそう叫ぶと、突然風が激しく吹き荒れる。あまりの強風に飛ばされないように足に力を入れていると、次第に視界に白い粉のようなものが入ってくる。
「な・・・なんだこれ?」
白い物体が何なのかわからずにいると、徐々にではあるが、風が冷たくなってきているように感じる。そして体が冷え来るのと同時に、目の前が真っ白になった。
「ま・・・前が・・・」
視界が遮られたことで白い物体の正体がなんだったのかようやく気づく。あれは雪・・・つまりこの視界が何も無くなってしまった原因は“吹雪”なんだ。
「やるなぁ、レオン」
第三者side
その頃、クロッカスの街で戦っている魔導士たちにある異変が起きていた。
「あああああ!!」
ミネルバの魔法により足を繋がれたエルザ。彼女はミネルバに振り回されて、建物の屋根を支えている柱へと叩きつけられていた。
「エルザ!!」
「らしくねぇぜ!!チクショー!!」
「足のダメージが災いしているのだな」
魔水晶ビジョンからこの様子を見ていた雷神衆はされるがままのエルザを見てそう言う。
「くっ!!」
一通り痛め付けられたエルザは地面に落とされる。足に大きな痛手を背負ってしまった彼女は立ち上がるのもかなり辛そうだ。
『あぁっと!!妖精女王のエルザ!!ピンチです!!ミネルバの猛攻が止まりません!!』
「その足では、もう立ち上がれまい」
ミネルバの言う通り、エルザの足はすでに限界を迎えていた。だが、それでも彼女は諦めずに立ち上がる。
「何度でも立ち上がる。負けられぬ戦いがある以上、私は何度でも立ち上がる。言ったはずだ。お前たちは、一番怒らせてはいけないギルドを敵に回した」
「怒りは美容に悪いぞ」
エルザの言葉に対し、茶化すような声色で言うミネルバ。
「よくもルーシィを・・・仲間を・・・カグラを・・・ミリアーナを・・・」
両手を強く握りしめ、自分の仲間たちを傷つけてきたミネルバを鋭く睨む。
「私は怒っているんだ」
「そんな怒りに妾が怯むとでも?」
ミネルバは右手に魔力を溜める。すると、敵であるエルザのすぐ横に同じような魔力の球体が出来上がる。
「ぬっ!!」
それに気付いたエルザは急いで横っ飛びしながらそれを交わしていく。だが、
「うわっ!!」
彼女が交わしていく方向を予想していたミネルバは、そこに自分の魔法で空間を作り出し、それを爆発させる。
「妾の空間魔法はこの視界すべてが攻撃範囲だ!!」
ミネルバの目には痛む足にムチを打ち、必死に彼女の魔法から逃げるエルザの姿。彼女の視界に捉えられている限り、何度でも攻撃を仕掛けられてしまう。
「爆発・・・」
「空間を入れ換えるだけでなく」
「空間の属性まで変化させる魔法!!」
エルザとミネルバの戦いが繰り広げられているすぐ近くに倒れているミリアーナと早々に倒されてしまい、魔水晶ビジョンから試合の様子を見つめているアラーニャとベスかそう言う。
「最強のギルドに相応しき最強の魔法『絶対領土』!!」
ミネルバの魔法が爆発した周辺は土煙が立ち込めている。ミネルバの魔法は自分の目に入るものをすべて攻撃できる超広範囲魔法。だが・・・
「ん?」
それは視界がない場所では全く意味を為さないことと同義なのである。
「な・・・なんだ!?これは・・・」
白くて冷たい何かが横から突風と共に押し寄せてくる。そのせいで彼女は自らの魔法の最も重要な“視界”が完全に失われてしまった。
「おのれ・・・エルザはどこに・・・」
なびく髪を押さえながら、見えない敵を懸命に探すミネルバ。そんな彼女の脇腹に、
「そこだ!!」
「がっ!!」
エルザの短剣が突き刺さった。
「雷竜の・・・咆哮!!」
「岩鉄壁!!」
ラクサスのブレスを数本の棒状の岩を使い封じ込めるジュラ。しかし、ラクサスはその岩に接近し蹴りで破壊すると、そのままジュラへと飛び蹴りをかます。
「むっ!!」
蹴りに反応できずに受けてしまったジュラ。だが、彼は倒れそうになる体を堪えつつラクサスの足首を掴むと、巴投げの要領で後方へと投げ飛ばす。
「ぐあっ!!」
投げられたラクサスは近くにあった家へとぶつかり、地面へと落ちる。しかし、彼はそのダメージを感じさせずに立ち上がると、雷挺の如し速度で敵へと突進する。
「うおらっ!!」
「この!!」
決死の突進もむなしく、彼の拳は聖十の魔導士に受け止められてしまう。受け止めた聖十は筋肉がガッチリとついた太い足で首もとを狙うが、頭を下げたラクサスに交わされてしまう。
そこからは互いの魔法など使わずに格闘技で戦闘していた2人。だが、ジュラは何かを感じ取るとラクサスから距離を大きく開ける。
「あ?どうした?」
「これは・・・懐かしい魔法を見せてもらえそうだ」
懐かしい?ラクサスはジュラが何を言っているのかわからずに目を細めていると、突如横から雪を含んだ突風に襲われる。その際、唐突に起きたその風のせいで1歩2歩フラついてしまったが、特に何事もなく踏み止まる。
しかし、彼は真っ直ぐに立つことが出来ずにいる。理由は簡単だ。横風があまりにも強すぎるのだ。そしてそれだけでは終わらない。
「しまった!!見失った!!」
辺りが吹雪によりどこに何があるのかを全く確認することができない。そのせいで、ラクサスは対戦相手であるジュラの居場所を見失っていた。
シリルside
すごい吹雪・・・足に力を入れておかないと一瞬のうちに飛ばされてしまいそう・・・おまけに、レオンがどこにいるのかも把握することができない。
「でも・・・これなら対策はすぐに考え付く」
こんな魔法、広範囲にすることはまずできないだろう。せいぜい俺とレオンが戦っているこの場所から100mあるかないかだと思う。だって、それ以上の範囲にこの吹雪をやるなんて魔力が持たないよ。
「そうと決まれば!!」
この魔法から逃れようと走り出そうとする。しかし、その俺の耳に信じられない言葉が聞こえてくる。
『一体これはどうなっているんだぁ!?私たちのいる実況席も、ここドムス・フラウも、季節外れの猛吹雪に襲われているぅ!!』
『目を開けてられないね』
『おまけに、全ての魔水晶も真っ白になってしまっていて何がどうなっているのかわからないカボ!!』
全ての・・・しかも、ドムス・フラウまで吹雪に襲われている?それってもしかして・・・
「まさか・・・レオンお前・・・
街全体に吹雪を吹かせているのか!?」
「そうだよ」
「!!」
後ろから肯定する声が聞こえてそちらをすぐさま振り向く。そこには吹雪の中のせいで見えづらくなっているけど、間違いなく敵であるレオンがいた。
「これが俺が“氷の神”と呼ばれ、1年前にS級クエストを何度もクリアさせてきた由縁だ」
俺の顎に手をやり、顔を少し上げさせるレオン。なんかキスでもしようと思ってると考えてしまうような行動を取るレオン。多分シェリア・・・いや、こいつの顔だと誰にやっても落としてしまいそうな気がするな。
「お前はこの吹雪で視界を遮られている。対して俺は氷の魔導士・・・この程度の吹雪は一切問題ない」
そう言うと、雪で隠れていたレオンの腕が突然腹部に入るのを感じた。
「悪いけど、ここではお前は俺には勝てない」
呟くレオン。だが、彼の拳を受けてしまった俺は一瞬のうちに意識を失い、吹き飛ばされてしまった。
第三者side
ここは大魔闘演舞が行われているクロッカスの中央に位置するドムス・フラウ。ここでも街と同様にレオンの魔法で吹雪が吹雪いていたが、現在は収まっている。
『大変お待たせ致しました!!たった今、ドムス・フラウの周りに術式を張りました。・・・のはいいのですが・・・」
視界が回復したのはバトルに関係のないこの場所だけ。大会に出場し、戦っている魔導士たちの周辺は身を凍えさせるような猛吹雪に包まれており、魔水晶ビジョンから見える映像はただ真っ白なものだけ。観客たちは何がどうなっているのかわからず、ざわざわと近くの人と何かを話していることしか出来なかった。
「どうだ?見えるか、ビッグスロー」
「さっきも言ったけど、モニター越しじゃ魂も見辛れぇんだよ。おまけにこの吹雪だからなぁ・・・」
そう話をしているのは妖精の尻尾のフリードとビッグスロー。彼ら2人とエバーグリーンは目に魔法を持っており、通常の人間よりも視覚が優れているのだ。
中でもビッグスローは人の魂を見ることができる。そのため、先程ガジルとローグが影になって戦っていた時も仮面を外して展開を見守っていたのだが・・・
「お!!あのモニターに映ってるのは見えてきたな」
生で見ているわけではないので判別がかなり難しい様子。加えてこの雪。はっきりいってスノーノイズとほとんど変わりのない状況なのである。
「あれは・・・ジュビアと・・・シェリア・・・かな?」
そんな困難な条件にも関わらず、ビッグスローはあるビジョンに映る2人の少女の魂を確認していた。
「ジュビアはどうなってるの?」
「なんだ?全然動いてるように見えねぇけど・・・何やってんだ?」
彼が捉えた水の魔導士の天空の魔導士は何やらくっついたままほとんど動きがない様子。なぜそのようになっているのかというと・・・
「さ・・・寒い・・・」ガクガク
「これ絶対レオンの魔法じゃん・・・」ブルブル
2人は吹雪のせいで気温が下がってしまい、あまりの寒さに一時休戦し、抱き合って暖を取っていたからだった。
全く動きがないジュビアとシェリアはさておき、この吹雪の中でも先程までと一切変わらず・・・いや、むしろ激しさを増している戦いが繰り広げられていることを皆は知らなかった。
「アイスメイク・・・白虎!!」
「アイスメイク・・・氷欠泉!!」
その戦いを行っているのはグレイとリオン。彼らは視界がほとんどないこの状況下でも、次から次へと造形を作り出して相手に的確に放っていた。
なぜ彼らが普通に戦えているのか。それは至って簡単な理由だった。
「この程度の雪、ウルとの修行に比べりゃあどうってことねぇ!!」
「あぁ!!その通りだな」
彼らは幼い頃に師匠であるウル・ミルコビッチの元で修行をしていた。その場所は極寒の雪山。しかも服を脱ぎ、ほとんど裸に近い姿でやって来ていたのだ。多少気温が低かろうが、風が吹いていようが関係ない。むしろ彼らにとってこれは自分の力を最大限に引き出す最高の環境。故に両者ともに激しく魔法をぶつけ合っているのだ。
「なかなかやるなぁ、グレイ。さすがは俺の弟弟子だ」
「珍しいこと言うなよ、リオン!!また雪が強くなんだろうが!!」
冗談混じりに魔法を繰り出し続ける2人の青年。その顔は戦っているというのに、どこか楽しそうに見えた。
「くそ!!どこいった!?」
辺りを見回し見えない敵を探すラクサス。だが、目の前に何があるのかさえ確認することができないのに、どこにいるのかもわからない敵を探し出すことなどできるはずもなかった。
「ヤバいな・・・どうする?」
相手は自分よりも格上。それはわかっている。だからこそここで見失ってしまうとあちらからの攻撃に対応できずに、やられてしまう可能性を意識してしまい、身動きが取れずにいるのだ。
「いや・・・待てよ・・・」
一度冷静になり、思考を巡らす。こちらから姿を確認できないということは、相手からも同じことが言えるのではないか?ジュラは確かに強い。だが、シリルのように何か特殊な目を持っているわけでもなければグレイのように氷属性のためにこの吹雪に対して耐性を持っているわけでもない。純粋に魔力が高く、またそれを使いこなす技能に優れているから聖十の称号を持っているのだ。
だったらこの状況は案外悲観するべきではないかも知れない。これが止んでからの戦いに備えて少しでも魔力の回復に努めよう。そう思いその場で一度目を閉じる。すると、彼の足場が浮き上がるのを感じた。
「!!」
“危ない”体がそういっているのを感じた。だが、その危険信号が発せられ、筋肉に避けろと伝達する前に足元から巨大な岩の塊が現れ、ラクサスは打ち上げられてしまう。
「くっ!!」
打ち上げられたラクサスはすぐに体に雷を纏わせ移動を開始する。地面に着地したラクサス。しかし、彼には1つわからないことがあった。
「なんで俺の居場所がわかったんだ」
何度も言っているが今クロッカスの街は視界ゼロの状態。だが、ジュラのものと思われる攻撃は確実に自分を捉えていた。それがなぜなのか、彼には全く理解できない。
「はあっ!!」
野太い男の声が、力強く何かをしようとしている声が聞こえる。それが聞こえたと同時に反射的に横っ飛びするラクサス。その直後、彼がいた場所に何かが突き刺さる音が響く。
「そうか・・・そういうことか」
それを見てラクサスはなぜジュラが自分の居場所を感知できたのか予測ができた。これは・・・要はこの大会の1日目の競技『隠密』でヤジマが言っていたことの延長戦なのだ。
「相手の魔力を探るってことか」
この何も見ることができない状況では、それが一番の策なのかもしれない。相手の場所さえ把握できれば、攻撃を当てることは可能なのだから。
「だったらこっちだってやってやるぜ!!」
目を閉じて意識を集中させるラクサス。近くにいる強大な魔力の持ち主を探る。
「そこだぁ!!」
おおよその位置を把握したラクサスはそこに雷を落とす。
「ぐああああ!!」
自分が雷を落とした場所から男の悲痛な声が聞こえてくる。それがジュラのものだとわかるのにそう時間はかからなかった。
「よし!!このまま―――」
一気に勝負を決めようと雷で戟を作り出そうとするラクサス。だが、その彼の後ろから岩の棒が直撃し、地面へと叩き付けられる。
「ぐっ!!」
倒れるラクサス。しかし、すぐさま立ち上がり敵の魔力を感じる場所に戟を放つ。
両者ともに敵の居場所をわかるから攻撃をぶつけることはできるが、魔力の感じから動きを感じ取ることはできないために攻撃を回避することはできない。つまりこれはノーガードの打ち合い。
もはや意地と意地の戦いになりつつある2人の戦い。これが番狂わせへの引き金となることを知るものはまだいなかった。
「バカな!!なぜ妾の場所がわかるのだ!?」
切り裂かれ、血が滲み出ている脇腹を押さえながらそう叫ぶのは剣咬の虎の女魔導士。彼女は自分にダメージを与えた人物を見つけようと目を凝らす。だが、相手の姿は全く捉えることが出来ず、逆に自分の死角から新たな攻撃をぶつけられ、よろけて地面に手を付く。
「くっ!!」
後方からの攻撃だったため、そちらにすぐに目線をやるミネルバ。しかし、それでも敵の姿は確認できない。それだけこの吹雪が激しいということだ。
「なぜだ・・・なぜ妾には見えぬのに、そなたには妾が見えるのだ!?」
魔法を使おうにも自分の攻撃範囲が現在ゼロの彼女は、何も出来ずにただ手をこまねいているしかない。そんな彼女の目の前に、緋色の髪をした女性が姿を現した。すぐ目と鼻の先に。
「なっ!?」
「私はお前を絶対に許さない」
ミネルバはようやく姿を捉えたエルザを見て驚愕していた。彼女はなんと・・・目を閉じていたのだ。
「貴様・・・目を閉じて・・・」
「例え前が見えずとも、気配で居場所を探ればいい」
そう言い剣を振り降ろすエルザ。避けることが出来ずに斬られるミネルバ。
レオンの魔法が全ての試合の流れを変えてしまう。最終戦はさらなる混戦に陥っていった。
後書き
いかがだったでしょうか?
レオンの『破滅の冬』はアジィールの『砂の世界』のようなものです。
そしてシリル優勢からのレオンの逆襲劇です。
というかいまだに最後の結末がどうなるか決まってないのにこんなことして大丈夫なんでしょうかね?
次回もよろしくお願いします。
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