ボカロ☆ロマンス
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第7話 お利口さんにならないと
前書き
前回の続きです。
ー悲惨だから覚悟しててね…
琴葉さんのその一言を聞いて私は自然とスカートをギュッと握りしめる。あのいつも明るいマスターにそんな…覚悟しなくてはならない程の過去があるなんて…
琴葉「まぁ私もほとんど知らないけど。」
ミク「えぇぇぇぇぇ‼️」ドンガラガッシャーン‼️
琴葉さんは超おどけながら言って見せた。
琴葉さん…アホですか。知らないなら引っ張らないでくださいよ…思わず椅子から転げ落ちてしまったじゃないですか⁉️周りの目が痛いですよ…「なんであの人椅子から転げ落ちてんだろー」的な視線が私に突き刺さってますよ…
琴葉「ミクちゃん大丈夫?」
心配してるみたいな顔してますが、笑いを堪えてるのはバレッバレですよ…
だけど、未だに床に転げている私に天使のような笑顔を振りまけながら手を差し出してくれる琴葉さんは、本物の天使のようで。
ミク「ご迷惑おかけいたしました。大丈夫です。」
琴葉「ならよかった。」
琴葉さんは私にほほえ…違いますね。恐らくからかって楽しんでますね。なんと人が悪い。
琴葉「大輝の過去が辛いのは本当よ。」
ミク「…」
琴葉「今でも思い出すと発作みたいなものを起こすらしい
の。」
琴葉さんはオンとオフがハッキリしてますね。
…しかし、なるほど。私が初めてマスターに出会った日…マスターは確かに突然、発作みたいなものを起こして倒れかけたことがあります。今思うとその時も過去を思い出していたのかも…
琴葉「だから私も彼から直接過去の話を聞いたことは
ないのよ。」
ミク「そうだったんですか…」
琴葉「そのかわり大輝のことを彼が小さい頃からよく
知ってる人からなら聞いたことがあるわ。」
ミク「小さい頃から…ですか?」
琴葉「そうよ。」
琴葉「聞きたい?」
ミク「お願いします‼️」
すると琴葉さんは「コホン‼️」と軽く咳払いをして私の方に体を向けた。目は…真剣だ。私にも少しの緊張が走る。
琴葉「大輝のご両親は元々有名な研究者だった。
《アンドロイド研究室》と言う有名な機関で
働いていて、とある大発明をしたらしいわ。」
あ、回想編とかになるわけじゃないのですね…
琴葉「だけどある日。その研究機関の実験装置が大暴走
して…大輝のご両親は亡くなってしまったそう
なのよ。」
ミク「…」
琴葉「その時のショックから昔のことを思い出すことを
拒絶するようになったらしいわ。」
ミク「…」
マスターの笑顔の裏にはそんなことが…
琴葉「これが彼の枷となったのか、彼は大切な物を
作ろうとしなくなった。」
琴葉「それは友達も例外ではなかった。」
琴葉「幼稚園に通ってる時は誰とも話さず一人で
毎日過ごしていたそうよ。」
ミク「そうだったんですか…」
琴葉「まぁここまでは人から聞いた話。」
琴葉「ここからは私達との出会いの話。」
琴葉「気になるでしょう?どうして彼が大切な物=友達を
作ったのか。」
ミク「…まぁ確かに。」
琴葉「ではでは…あれは確か私達がまだ小学校に
入学したてだった頃…」
…小学校入学式の日《琴葉視点》
ふぁー…よく寝た。時間は…五時。明らかに早いわね。
と言っても今から寝れそうにはないし。そう思った私は1人リビングに行ってボンヤリとテレビを見始めた。だけど、そんな朝っぱらから面白い番組をやってる訳でもなく、私はすぐに飽きてしまった。時計を見るとまだ5時半。いくらなんでも早すぎる。と思った時、奥の部屋から物音が聞こえてきた。誰か起こしちゃったのかな?心配になって様子を見に行くと…
「なんだ…もう起きていたの。早いわね。」
琴葉「お姉ちゃん‼️」
私のお姉ちゃん《南織 咲》が起きてきていた。私達南織家は3人姉妹で私は末っ子。咲お姉ちゃんはもう23歳で既に仕事を始めている。咲お姉ちゃんは現在、有名なブランドのモデルさんをやっていて忙しいので今日の入学式には来れない。代わりにお姉ちゃんにたくさんお話を聞いてもらう。
咲「…なるほど…」
咲お姉ちゃんは忙しそうにしてたけど私の話はちゃんと聞いていてくれた。咲お姉ちゃんは私にとって1番の自慢だった。身長も高いし、スタイル抜群だし何より綺麗。言葉で言い尽くせないレベルなの。だから自慢。私にも優しいし。それも自慢。そんなお姉ちゃんが私にある物を渡して来た。
咲「琴葉…ちょっと手を出してみ。」
琴葉「…手?ハイ。」
すると咲お姉ちゃんが私に何かをつけてくれた。これは確か…
琴葉「ミサンガ?」
咲「そうよ。お姉ちゃん特製ミサンガ。」
琴葉「ミサンガって切れたら願いが叶うんだよね?」
咲「普通はね。でもお姉ちゃん特製ミサンガは違うのよ。
このミサンガは貴女がお利口さんにしてたら願いが
叶う特別なミサンガなのよ。」
琴葉「お利口さんに⁉️」
咲「そうよ。出来る?」
琴葉「もちろん‼️」
咲「よし。じゃあお姉ちゃんは仕事に行ってくるから
お利口さんになれるように頑張ってね。」
琴葉「え〜私もうお利口さんだよ〜」
咲「それはどーかなー?」
琴葉「えー‼️」
やがて入学式もなんとか終わり《実はお姉ちゃんが仕事に行ったあと結局二度寝しちゃったのよね…おかげで遅刻しかけちゃった。》教室で新しい友達とお話をしていた。私の今の夢…それは《このクラス全員とお友達になること》だったのでクラスメートに片っ端から話しかけた。剛太郎は幼稚園から友達だったし、クラスメートもみんないい人ですぐに友達になれた。…1人を除いて。
琴葉「貴方のお名前は何?」
大輝「名簿に書いてあるからそれ見ろ。」
琴葉「無理よ。私漢字読めないもの。」
大輝「バーカ」
琴葉「なっ…バカって言っちゃいけないんだ‼️先生に言っちゃうよ。」
大輝「…」
ちょっと大輝君まさかの無視⁉️なんて冷たい…
しかも彼はそのまま荷物をまとめてさっさと帰ってしまった。
琴葉「何よあいつ。感じ悪…」
なんか悔しい。
琴葉「決めた‼️私、絶対にあいつと友達になる‼️」
剛太郎「無理そうだけど。」
琴葉「なるったらなる‼️絶対になる‼️」
剛太郎「はぁ…」
それから私は毎日大輝君に話しかけた。クラスメート《主に剛太郎》にバカにされたけど、私はめげなかった。だけど彼は私の頑張りなんか知らんぷりして無視しかしてこない。
…一ヶ月それが続くと、彼は学校に来なくなった。なんでも学校に行くのが面倒くさくなったらしい。そこで私にはある疑問が生まれてきた。
琴葉「もしかして…」
琴葉「私のせいで学校が嫌になっちゃったのかなぁ…」
だとしたら私はなんてことをしてしまったのだろう…よく考えると私は大輝君の気持ちなんて考えずに、自分勝手な行動をしてしまっていた。
私があんまりしつこく話しかけるから…彼は学校が嫌いになった…そう考えるといてもたっても居られなくなって。
琴葉「ごめんなさいって言わなくちゃ。」
だって悪い子のままだとお姉ちゃんの特製ミサンガは効かないから…夢が叶わないから…クラスのみんなと友達になれないから…
私は今か今かと先生の話が終わるのを待った。野良犬がいて危ないとかそんなのどっちでもいいから早く終わって…
学校が終わると私はすぐに大輝君の家に向かった。実はストーカーみたいなことを何回かしたので家の場所は大体分かっていた。
大輝君の家に着いたと同時に私はチャイムを鳴らした。大輝君はインターホンごしに私に話しかける。が、
「なにしにきたの?邪魔だから帰って。」
それだけ言って大輝君はインターホンを切ってしまった。
私はどうしたらいいかわからなくなって崩れ落ちる。大粒の涙を流しながら…周りなんかみんな涙に包まれて何も見えない。
…だから後ろから近づいてきていた野良犬に私は気づかなかった。
「グワァン‼️」
大声で吠えられてやっと気づく。振り向くとそこには私の背より大きなドーベルマンが私を睨みつけていた。
…逃げなきゃ。だけど、私の一度崩れ落ちた足は動かない。なんにもできなくなった私は一か八か精一杯の声で叫ぶ。
琴葉「…助けて‼️」
その時、突然大輝君の家のドアが開いた。そして、大輝君が金属バットを持って飛び出してきた。私を一度見ると、大輝君はみるみるうちに怒りの表情に包まれていく。そして、彼は目の前のドーベルマンに臆することなく、脳天に一撃振り下ろした。
「キャイ〜ン…」
たまらずドーベルマンは逃げ出す。私は怖くなって大輝君に抱きついてしまった。何が何だか私にはもうわからなかった。大輝君は私のことなんか嫌いなはずだったのに、彼は私の頭を撫でてくれた。そして、
「ごめんね…怖い思いさせちゃって。」
と謝った。違う。違うの。全部私が悪いの。だけど口から出てくるのは嗚咽ばかりで。彼はそんな私を見て家に招いてくれた。彼の家でしばらく泣いたあと、私の心が落ち着いてきたので
琴葉「…ありがとう。あと、今までごめんなさい。」
とやっと言った。
大輝「別にいいよ。無事でよかった。」
彼は許してくれた。
そのあと、大輝君は私を家まで送ってってくれた。そこで私は始めて大輝君と会話をした。始めて夢が叶った瞬間だった。
別れ際に彼はこう言った。
大輝「…友達になってくれてありがとう。」
どうやら、彼もやっぱり友達が欲しかったようだ。
…続く
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