とある地下の暗密組織(フォートレス)
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序
ep.001 『廃ビルと不良集団』
ある場所、そこに着いた。
見えるのは、まるでボロボロなビル。まあ、おそらくは建設か廃棄の途中に問題とかが起こったんだろう。
天辺の方は少し欠けているな。廃棄の方が近いか、あの砕け方は。
「行くけど御臼ちゃん、準備はいいね?」
横にちょこんといるポニーテールに言う。
「もちろんですよ。」
此方に向いたあと、
「正義を名乗る悪は、私が更生させてあげます!」
(クッソ!! 御臼ちゃんの説教とか、俺が受けてぇ―ッつうのによぉ~。)
夢絶が御臼の愛おしさのあまり、内面だけで発狂する。
もちろん、けっこうな長い付き合いなのでこういう事は知っているし、もちろんながらツッコミを入れる。
冷たい刃のような視線で、
「いえ、カノ先輩は更生でなく、転生してください。」
「エッ!? 死ねとッ!!!!」
即答の返し。
「って、こんな事してる場合じゃないよ、御臼ちゃん。」
気を取り直し、
「そうですね、すいません。カノ先輩があまりにも気持ち悪いもので。」
おふざけとは思えないトーンで、嘘と思えないくらいに目線も此方に向けずに言い放った。
愛を感じない。
いや、愛はなくとも、尊敬とか信頼とかさえも皆無だ。
「御臼ちゃん、いつか押し倒してやる!」
面と向かって言ってやった。公衆の面前で。
「行きますよ。」
聞かれてなかった。
入口、入ってすぐ。どうやら両開きの結構良い扉だったらしく、もうない扉の後はまあまあ大きかった。
「おいっ! お前ら、ここは関係者以外立ち入り禁止なんだが?」
濁った緑色の不潔めな学生らしき人物が3人。
「すまんな。風紀委員だよ。」
夢絶がポケットから緑の腕章を見せる。
何故持っている。
『御臼 来未』は驚きを隠せず、開いた口が開かなくなっていた。
「クソッ、風紀委員かよ! まあ、まだあの空間移動の縦ロールよりはましか。」
相手の不良は何やら安心しているが、知らない。夢絶の能力『二次災害』と御臼の能力『布地硬化』の能力を。
不良が何かを後ろのシャツの裏から片手で取り出す。
パンッ!!!
外ではその音に悲鳴を上げながら人が逃げていく。
一方の夢絶達はというと、
咄嗟だったので、
「ちょっ、銃は不味いって。」
冷静かつ無傷だった。
「間に合って良かったです。」
これが布地硬化。衣類の繊維を硬化させ、ダイヤモンドの3倍の硬度を誇るカーバインをも超える硬度を誇る。
それを銃弾が当たる手前に自分たちの衣服に発動させ一種の防弾チョッキ状態にしたのだ。
「ありがとうね、御臼ちゃん。おかげで助かったわ。」
夢絶が服を払い、ペチャンコになった弾丸を見下ろしながら言う。
「いえいえ。 で、この人達の無力化をお願いします。」
「いやぁ、」
前に出る。少しずつ追い詰めているように歩み寄る。
「ホント、お前らみたいなのがいるから『fortress』の仕事が増えてるんだよ。」
恐れ、慌てた不良の一人が撃つ。今度はしっかりと額を狙って
バンッ!!
「その銃じゃぁ、だめだ。」
夢絶が体の軸さえブラさずに近づいて来る。
銃弾は額にはなく、かといって地面にも転がっていない。
丁度不良の頭蓋骨を掠り、頭の中央に一線を引くように髪の毛を削ぎ取っていっていた。
皮膚を丸ごと剥がれ骨が見えている。
「ア゙アアアアアァァァァァッ、ア゙ァァァァァーーーーーーーーーーーーッ!!!」
頭を押さえながら喉が潰れてしまいそうな声を上げる。
それを見たほかの2人は、今何が起きたかもわからずに降参するような仕草をした。
目線はやられた不良を見ている。
「まあ、何が起こったかは、分からねえよな。」
そして、上に続く元非常階段に向かう。相手の包囲網に突っ込むのを避けるためだ。
その手前、御臼に何やら手錠らしきものを渡していた。
「御臼ちゃん、そいつらの手、縛っといてね。 俺は、上の方の奴らみてくるから。」
「あ、はい。」
御臼は、手錠を受け取り返事と同時に不良たちに手錠をかけだした。
それも、ただの手錠でなく、すぐに外せるのだが、外そうとすると電撃が走り、手錠を付けられた相手が気絶する仕組みになっている。
階段を上る。
どうしても足音が出てしまうコンクリートの階段だ。
上の方からも足音がする。一階と違い、数は10人くらいだろうか。
そして二階に昇り終えると同時に、相手の足音も止んだ。
(出たら即やられるか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)
そう思った夢絶は二階のフロアに続く扉の前で待機している。
不思議に思ったのは、まだ3階から敵の増援が来ないことだった。階段が壊れている訳でも無いのに、敵は来ない。これがどういう事か、すぐに解かる。
こいつらは、このフロアの奴らで全部なんだな。
能力を使う。
扉に蹴りを入れ、文字通り『吹き飛ばす』。
そして、出た途端に見た光景は、全員に近い数の人間が此方に銃口を向けている。それならばまだいい。その銃に使われているであろう金属が問題だったのだ。
『JAIM鉱石』。
そう呼称されるのは、それが能力者の発するAIM拡散力場に干渉し、能力を極限にまで弱化させる超音波のようなものを発するからである。
「クソッ、JAIMかっ!」
その藍色のフレームに、玉虫色の様な光沢が、何よりの証拠だった。
反射的に、夢絶は扉に戻る。
とても深い溜息を吐き
(さぁて、ここからどうしようか。)
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