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戦国異伝

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第二百三十八話 幕府その十二

「山の中での戦はあまりなかったな」
「伊賀での時の様な」
「それでじゃ」
「今度の戦で、ですか」
「奴等の戦の仕方も観たい」
 ただ戦い破るだけでなく、というのだ。
「そちらもな」
「そして次で」
「決めたい、じゃが」
「じゃがとは」
「明や南蛮の海のならず者達が姿を消しておる」
 信長は信広にもこのことを話した。
「と、なるとな」
「あの者達とですか」
「組んでおるやも知れぬ」
「では最後の戦は」
「海やもな」
 その上での戦かも知れないというのだ。
「そうやも知れぬ」
「海ですか」
「そうじゃ」
「と、なりますと」
 海での戦と聞いてだ、信広は考える顔になり信長に話した。
「一の谷や壇ノ浦の様な」
「そうした戦やも知れぬな」
「そう思いましたが」
「うむ、そうした戦になることもな」
「上様もですか」
「考えておる」
 既にというのだ、信長は正面を向いて真顔で答えた。
「わしもな」
「ではその時は」
「二郎に伝えてある」 
 水軍を任されている九鬼にというのだ。
「鉄甲船もな」
「用意しておけと」
「伝えてある」
 その様にというのだ。
「だからじゃ」
「海での戦になろうとも」
「戦いそしてじゃ」
「勝ちますか」
「必ずな」
「父上、そういえばですが」
 信忠も父に言って来た。
「海と聞いて思い出しましたが」
「どうしたのじゃ」
「はい、九州の南には琉球があり」
「そしてそのさらに南にじゃな」
「相当に大きな島がありましたな」
「美麗の島じゃな」
「そこは確かこれといった主がいませんでした」
 信忠がここで言うのはこのことだった。
「さすれば」
「うむ、ならばな」
「その島をですか」
「我等の領地にすることもな」
「お考えですか」
「そのこともな」
「では戦の後で」
「琉球とは付き合いを深め」
「そしてその美麗の島を」
「手中のものとする、そしてな」
「さらにですか」
「主のいない島を手に入れて海に乗り出す」
 信長は南を見つつ信忠に話した。
「その様にな」
「大きなことですな」
「大きいというか」
「違いますか」
「確かに天下は泰平になるが」
 しかしそれでもと言う信長だった。 
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