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真田十勇士

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巻ノ二十六 江戸その二

「それではな」
「はい、その江戸にですな」
「あの僧侶の方が教えてくれた」
「あの城に行きますか」
「これより」
「そうしようぞ」
 こう言うのだった。
「よいな」
「はい、では」
「江戸に行きましょう」
「あの場所に」
「武蔵から見て東になりな」
 そしてとだ、幸村はその江戸の位置のことも話した。
「尚且つ関東全体では真ん中になるか」
「丁度関東の」
「その中心ですか」
「江戸が」
「そうなりますか」
「はじまりは太田道灌殿が築かれた」
 扇谷上杉家の重臣であり名将と言われた、その武勇は関東で知られていた。
「それからじゃが」
「今は廃城同様でも」
「関東の真ん中にある」
「その場所はですな」
「だからな」
 それで、いうのだ。
「我等はその関東の真ん中に行くことになるな」
「そうなりますか」
「何もない場所にしても」
「江戸に行くことは」
「行けば何かわかるであろう」 
 幸村はこうも言った。
「ではな」
「はい、これより」
「江戸に行きましょう」
「その江戸に」
「ではな」
 幸村はこう言ってだった、家臣達を連れて江戸に向かった。その時に一晩寝たが近くに町も村もなく。
 野原で寝た、その前に火を囲んで飯を食ったが。
「そういえばこうした干し飯を食うのも」
「久しぶりですな」
「各地の名産ばかり食い」
「干し飯等はです」
「とんとご無沙汰でした」
「町から町にと進んでいましたから」
「そうであったな、しかしな」
 それでもと言う幸村だった、彼自身干し飯を食いながら言う。
「こうしたものもな」
「はい、必要ですな」
「いざという時は」
「日持ちのするものも」
「常に持っておくべきですな」
「何があるかわからん」
 こうもだ、幸村は言った。
「だからな」
「ですな、常に持ち」
「いざという時に食う」
「そして身体を養うのですな」
「まず食うことじゃ」
 それが第一であることをだ、幸村はここでも言った。
「それでじゃ」
「こうして干し飯もですな」
「こうした時に食う」
「そうあるべきですな」
「その通りじゃ、我等は名産を食ったり狩りや釣りをすることが多いが」
 しかしというのだ。
「干し飯等は常に持っておくことじゃ」
「そうしたことは忘れずに」
「そういうことですな」
「うむ、では今日はこの飯を食いな」
 そのうえでというのだ。 
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