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ヴァンパイア騎士【黎明の光】

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風紀委員の職務
  11


「きゃああっ!」


この女は本当に騒がしい。
知り合ってまだたったの一日目だが、その印象はかなり根深いものへと変貌していた。

さっきから樹木の影から鳥が飛び立っては叫び、枯葉や朽ち果てた木の枝を踏んでは叫び、水溜まりを踏んでは叫び……職務に対する苛立ちより帰りたいという気持ちが上回り始めた頃、その気持ちが露呈してしまっては更に疲れが蓄積すると考えた澪は、素朴な疑問を投げ掛けた。



「あんたさ、姉さんに何であんな丁寧なの?」
「は……?」



完全に逃げ腰で、澪の制服の裾を掴むような形で恐る恐る見回りを続けている姫羅の目が澪を見上げる。
薄紫色の瞳には僅かに涙が溜まっており、事実は違うのだが自分がまるで弱い者虐めをしているかのような奇妙な錯覚に陥ってしまう。
……っていうか、泣くほど怖いのか、というツッコミは敢えて出さずに頷いた。


「何で、って言われても……」


頬に掌を押し当て、困ったように目を泳がせる姫羅。
自分の中でこれだ!と言えるような明確な理由は無いのだから、突然そんな事を聞かれても困ってしまう。



「樹里愛さんって、私より年上でしょ?澪くんのお姉さんだし。それに何だか逆らえない雰囲気って言うか……高貴感あるよね、あの人って」



そこまで答えたところで姫羅は澪の顔を見上げる。
澪はと言えば、驚いたような、何とも言えない表情で姫羅の方を振り返っていた。

……聞いてきたのは彼の方なのに何だろう、この反応は。
会話が生まれた分恐怖が薄れ、余裕を取り戻した姫羅は澪の方へと身を乗り出す。



「ねえ、どうしてそんな事聞くの?」
「……別に。未知への探究心」
「絶対嘘でしょ……」



澪は扱いにくい相手だと思っていたけれど、言い訳が下手な部分を見るとそうでもないらしい。
滑稽な返答に気の抜けた悪態をつきながら進んでいると――突如、澪の足が止まった。 
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