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ヴァンパイア騎士【黎明の光】

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風紀委員の職務
  10


「じゃ、今から黎明の時間まで見張りだね。頑張ろうね!」
「……まぁ適当に」



張り切っている姫羅とは対照的に、澪の意気込みは浅い。
姉である樹里愛が消えた途端不機嫌そうに眉根を寄せて、もともと緩く締められていた制服のネクタイを一層緩める。

理事長室で守護など必要ないと言っていた通り、本当にこの仕事に対して乗り気ではないのだというのが伝わる。

どうしたものかと顎に指先を添え、姫羅が思案に耽る中――砂利を踏む音に振り返ると、姫羅が立つ方と逆方向に歩き出そうとする澪の背中が見え、姫羅は慌てて声を掛けた。


「ちょ、ちょっと!どこ行くの?」
「どこって見張り。俺は向こうに行くから、あんたはそっちを……」
「え、別行動!?」


その言葉がよほど意外だったのか、無を常とする澪の表情が初めて姫羅の目の前で動いた。微かに驚いた様子で目を見張っている。
その反応を見て姫羅も互いの職務に対する価値観の差異に気付き、気まずそうに目線を逸らした。

静寂の中、二人の間に流れる無言の一時。閑散としたこの空気に耐えきれず、姫羅は照れ臭そうに笑った。



「……ほら、初日だし。一緒に行こ?」



夜が怖いから、とは口が裂けても言えない。
姫羅からの可愛らしい(?)申し出に、澪は一つため息を吐いた。 
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