ヴァンパイア騎士【黎明の光】
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
風紀委員の職務
2
「当然、必要だ」
困惑したような顔色も束の間、理事長は柔和な笑みで澪に答える。
当の澪は無表情のままその笑顔を見返している。……温度差の激しいコンビだなあ、と姫羅は思った。
無言を保ってはいるものの、澪は何だか不満げだ。
「君は不満かも知れないけれどね」
その心情は理事長も悟っているらしい。
澪を諌めるような言葉と共に立ち上がり、豪奢な椅子の真後ろ――煌びやかな戸棚からいそいそと何かを取り出した。
少し高級なオルゴールで使われるような小箱だ。それよりは面積が大きいけれど、外観の例えとしてなら分かりやすい。
施錠されたそれを開くと、中には短刀と鞭が仕舞われていた。
「これは?」
思わず姫羅が問い掛ける。
こんな物騒なもの、校内に置いておいて良いのだろうか。
その想いが表情に反映されていたのだろう。理事長は姫羅に微笑んだ。
「心配は無用だよ、姫羅ちゃん。これは守護役専用の武器だ。その他の用途では活用しない」
「守護役用…って」
「つまり、護身用だね」
説明しながら理事長が澪に短刀を、姫羅に鞭を手渡す。
――今まで普通に育ってきたつもりでいるから、こんなモノに慣れ親しむ機会には恵まれなかったけれど。素人の姫羅でもわかるほどこの武器はしっかりとした創りだ。
皮も上等の素材が使用されているのだろう。鞭の主要部分を握ると、確かな弾力が伝わってくる。
しばらくは感心してそれを眺めていた姫羅だったが、突然はっとして鞭を手放した。
「だ、だめです!私こんなの持てません!」
「どうして」
きょとんとして、理事長が問い返す。
姫羅を見ると何やら鞭を見て赤くなったり、何か良からぬ想像をしているのかいきなり顔面蒼白になったりと色んな意味で忙しそうだ。
「ほら……えっと、変態だと思われたくないし。もし何か間違ってクラスの子を怪我させたりしちゃっても、私責任取る自信が無いですし――!」
「ああ、それなら大丈夫」
慌てて弁解する姫羅に応じたのは澪だった。
何度見ても感情を感じ取れない瞳を見返し、首を傾げる。
ページ上へ戻る