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戦国異伝

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第二百三十八話 幕府その六

「よいな」
「はい、では」
「その様にされて」
「そのうえで」
「この政は伊賀攻めの時の備えと共に進めるが」
 そして、というのだ。
「そのうえでじゃ」
「はい、それでは」
「そうした政も進め」
「用意が整えば、ですな」
「四十万の兵で伊賀を囲み押し潰す」
 そこにいる魔界衆達をというのだ。
「百地の里にいるあの者達をな」
「それで上様」
 幸村が信長に言って来た。
「その伊賀にいる魔界衆達の他にも」
「人がいればか」
「どうされますか」
「安心せよ。魔界衆の者達と他の者達は容易に見分けられる」
「あの服や具足の色でわかる」
 こう幸村に言うのだった。
「あの色でな」
「闇の色で」
「他の衣の者は捨て置け」
「例えいたとしても」
「あの者達が闇の衣を脱ぐことはない」
 決してというのだ。
「あれがあの者達の誇りじゃからな」
「闇の色の衣なりがですな」
「あの者達は闇の者じゃからな」
「書にもありましたか」
「その通りじゃ、あの者達は常にな」
「闇の服を着て」
「そして古来より蠢いておった」
 天下の裏側でというのだ。
「それ故にじゃ」
「そのことはですか」
「わかりやすい」
 魔界衆かそうでないかは、というのだ。
「案ずることはない」
「では我等も」
「戦の時は頼むぞ」
「はい、二本槍で暴れてみせます」
 幸村のその得物でというのだ。
「必ず」
「その様にな、ではことは果たした」
 都でのそれはというのだ。
「明日安土に戻るぞ」
「ここを発ち」
「ついでに顕如殿にも挨拶をしよう」
 かつて命をやり取りし今は盟友である彼にもというのだ。
「ここでは」
「では顕如殿をここに」
「いや、わしから行く」
 信長自らというのだ。
「そうする」
「これより」
「そのつもりじゃ。行くぞ」
 幸村達にも声をかけてだった。
 信長は顕如の間に入った、そこで顕如にも話した。
「明日安土に戻りまする」
「そうされますか」
「はい」106
 こう言うのだった。
「この度は宿を貸して頂きかたじけない」
「いや、礼は無用」
 顕如はその信長に微笑んで述べた。
「この様な事態にあっては」
「宿は」
「些細なこと故」
 こう穏やかな笑顔で言うのだった。
「気になさらぬ様」
「さすれば」
「そういうことで、それでなのですが」
 顕如から信長に言って来た。
「魔界衆のことは拙僧も知りました」
「顕如殿もご存知なかった」
「親鸞上人があの者達と戦ったことも」
 そのこともというのだ。
「拙僧は知りませんでした」
「そうであった」
「どうも上人がこのことを極秘とされていて」
 そしてというのだ。
「奥に収めた書にのみ書き残していたので」
「そしてその書を我等は読んだ」
「そうなりまする」
「そしてその書に書かれていたことをな」
「拙僧も読みました、いや迂闊でありました」
 顕如は瞑目して述べた、信長に対してこう強い目で話してそしてだった。そのうえでこうしたことも言ったのだった。 
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