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戦国異伝

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第二百三十八話 幕府その二

「変の時もでおじゃる」
「それは何より」
「ただ。屋敷は少しでおじゃる」
「焼けられたと聞いていますが」
「二条城の傍にあった故」
 それでだというのだ。
「火にやられたでおじゃる」
「ではその修理は」
「織田殿がでおじゃるか」
「させて頂きますが」
「いや、そこまではでおじゃる」 
「よいと」
「そうでおじゃる」
 こう言うのだった。
「普段からの厚遇に加えてそれではおじゃる」
「過ぎると」
「そうでおじゃる」
 だからだというのだ。
「その申し出は遠慮させて頂くでおじゃる」
「わかり申した、では」
「その様に。では」
「はい、これより」
「帝の御前にでおじゃるな」
「参りたく参上しました」
 こう近衛に申し出るのだった。
「先日はそれが果たせませんでしたが」
「わかったでおじゃる、では」
「案内をお願い致します」
「帝はもうおられるでおじゃる」
 御所の帝がおられるべき場所にというのだ。
「大坂より戻られて」
「大坂への行き帰り何もありませぬでしたか」
「大丈夫でおじゃる」
 全くという返事だった。
「むしろ織田殿に難を逃れる様に手配してもらって感謝しておられるでおじゃる」
「それは何より」
「では、でおじゃる」
「帝の御前に」
 こうしてだった、信長は近衛に案内されてそのうえで帝の御前に向かった。近衛はその途中で信長にこう言った。
「それで高田でおじゃるが」
「あの者ですな」
「あの者、急にでおじゃる」
「都からですか」
「消えたでおじゃる」
「あの者のことはお伝えした通りです」
 信長は先を進む近衛に述べた。
「実はです」
「魔界衆という者達のでおじゃるな」
「その棟梁である十二家の一つの主であり」
「朝廷に潜り込み」
「暗躍していたのです」
「高田家が公卿になったのはかなり昔でおじゃった」
 近衛は信長にこのことも話した。
「まだ都が奈良にあった頃にでおじゃる」
「平城京の頃にですな」
「もうでおじゃった」
 既にというのだ。
「帝のお傍におられたでおじゃる」
「それがしが調べた通りですな」
「左様でおじゃった、それで陰陽道の家の一つでおじゃったが」
「その実態はですか」
「よくわかっていなかったでおじゃる」
「謎の多い家でしたか」
「公卿の間でも」
 つまり近衛達の中でもというのだ。
「得体の知れぬ御仁でおじゃったが」
「まつろわぬ者達とは」
「誰も思わなかったでおじゃる」
 実際にというのだった。
「まさに」
「でしたか、しかし」
「もう都から消えたでおじゃる」
「その行方は」
「全くでおじゃる」
 わかっていないというのだ。
「とても」
「やはりそうですか」
「おそらくあの者の行方は」
「それがしの方が」
「知っているでおじゃろう」
 こう己の後ろにいる信長に話した。 
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