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僕にしか聞こえない言葉
遺跡から声がした。
この遺跡の中の誰かが声を発したとも思えるのだけれど、この扉が開くときに声がしたのだからこの扉を開いたり閉じたりできる人物の声なのだろう。
となると一体どんな人物なのか。
そんな不安が僕を襲いレイアに、
「この遺跡って管理人さんとかいるのかな?」
「いるにはいるようですが、正規のルートの入口にある小屋に人がいるくらいだったと思います」
「……だとすると今の声は」
「分かりません」
レイアはそう言うが、開いたままなのがと言っているのを聞いて僕は考える。
彼は遺跡を開閉できる程度に遺跡を知っている。
遺跡に詳しい謎の人物の声。
不気味すぎてあまり関わらない方が良い気もするけれど、そこで、
「おーい、早くしてくれ。音声を出すにも魔力を使うからきついんだ」
そんな男の声がした。
それに僕達は顔を見合わせて、次に真っ蒼なエイダにを見つつ、
「この世界ってお化けはいないんだよね?」
「はい」
「だからとり付いたりとかそういったものは無いと」
「はい」
とり付くといった話をしている、エイダが倒れそうになっているがその辺りはリリアにお任せするとして。
僕はその入口を見ながら、
「はいってみよう。僕達を呼んでいるみたいだから」
そう呟いたのだった。
エイダは待っていていいよと言ったのについてきた。
「不思議な現象に私だけが会えないのが許せない」
との事らしい。
リリアに連れられながら来ているのを見て、仲が良いなとは思う。
そう思いながらも僕は歩いていく。
外側から見ると崩れかけた灰色の遺跡の様に見えたこの場所だが、中は綺麗な物だった。
というよりは綺麗過ぎる。
埃一つないのも含めて、遺跡の維持機能という物なのかもしれない。
それも含めて僕はここに近未来的な物を感じた。
天井が光っているのもさることながら、磨かれた様につるつるとした左右の白い壁、それらがずっと続いている。
過去の遺跡の方が文明レベルが高いというのだろうか。
それはそれでわくわくするなと思いながら僕はレイアに、
「過去の遺跡の方が文明が発達したりしているのかな?」
「いえ、こんな遺跡は私も初めてです。この素材自体も私にはよく分かりません」
「そ、そうなんだ……」
「ただ……沈んだ大陸の建物などが、このような天井が光るといった描写があった気がします。古い文書を訳したものでそれを読んだ記憶があります」
「そうなんだ。遺跡に入るようにさっきの声がしたから、その声の主はそれに詳しいのかな」
何気なく僕は言った言葉だったのだけれど、そこでレイアが沈黙した。
あれっと思って僕が周りを見るとエイダが、
「あ、あんた、さっきの唸り声が言葉に聞こえるの?」
「え? はっきりと入ってくれないとと言っていたんじゃ……」
「ちがう、ただの“音”だったわ。……確かに言われてみると言葉にも聞こえるけれど」
そんなことを言い出したエイダに、何で僕が言葉が聞こえたり出来るんだろうと思っていたところで、
「おーい、そこの右側の壁に触れてくれ」
「ひぃ! なんかまた“音”がした!」
怯えたように呟くエイダ。
レイアとリリアも気味悪そうだ。
けれど僕にははっきりとした言葉で聞こえたので壁に触れる。
同時に僕の触れた場所の壁が崩れ落ちるようになって、人が入れるような空間が姿を現したのだった。
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