ダンジョンにSAO転生者の鍛冶師を求めるのは間違っているだろうか
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メグさんに伝えたい言葉
前書き
これが暁での最終投稿です。
宣伝を兼ねてます。
すいません。
「ああ、」
何といい目覚めだろうか。
体はまるで怠くなく、意識もはっきりしている。窓の外から聞こえる楽しげな小鳥の唄が心地いい。
こんな良い目覚めはいつ以来だろうか………………昨日の朝以来だな。
あの一件からは既に二日が過ぎている。
あれから憑き物が落ちたように体が軽くなって、気分もいい。毎日快眠で、これだけで嘘のように日々が楽しい。
落着してから、一日置き、落ち着いたところで、あのめんどくさい小娘、天城、と直接契約を結んだのが、昨日だ。
契約した途端、『私が雇い主だから、言うことを聞くのは当然よね』とか巫山戯ふざけたことを吐かしたから、しばいてやったが、『何で叩くのよっ! 折角、明日のお礼の席に呼ぼうと思っていたのにっ!!』、ということだったらしい。まあ、要するにただの照れ隠しだったみたいだから、しばいたことは反省するけど、後悔はしない。
ということで、今日はパーティーに招かれている。
主催は天城の所属しているファミリア、タケミカヅチ・ファミリアで、場所は本拠ホームだそうだ。
昼から始めるらしいから、午前中は暇だ。
………………本当に暇だ。
今から職場に行くにしても、時計が指しているのは十時過ぎ…………かなり寝たな。
まあ、それはさておきだ、通勤して、準備して、鍛治して、汗だくになって、終わり支度して、帰って、シャワーを浴びて、待ち合わせの中央広場に行くということを考えると、『鍛治して』の部分に何分割けるかぐらいのレベルだからなあ。
それに俺は一昨日からヘファイストス・ファミリアの本拠に寝泊まりしていて、職場から少し遠くなったのだ。割くことができる終わり支度とシャワーを抜いても、それほど時間は増えないし…………メインが「いやぁー、今日は暑いっすね」って言って、汗だくの状態で現れたら主催者引くだろう。
それに大前提として、剣を鍛えたところで無意味なのだ。
…………となると、趣味も時間潰しもない俺に残り時間じっとする選択肢もない――なら、
そうだ、ギルドに行こう。
◆ ◆ ◆
というわけで、俺はギルドに来ている。
場所は例の相談用ボックス。
そして目の前にはほくほく顔のメグさん。
何故ほくほくかって? 言う必要はないだろうけれど、敢えて言うと、彼女の手にあるゲテ――もといじゃが丸くんメロンソーダ味デラックスのおかげだ。
ここに来るついでに途中で見かけた件のじゃが丸くんの売店のおばさんに買〃わ〃さ〃れ〃た〃のだ。
その時の会話を一部抜粋すると、
『おっ、あんた、朝からメグちゃんと逢引かい?』
『あ、合挽? あのハンバーグに使うあれですか?』
『また、かまととぶってんじゃないよ。メグちゃんとはどこまでいったんだい? もう一緒に寝たかい?』
『へ? 一緒に寝るって、俺は寝床に困るほど貧乏じゃないですよ』
『あぁーーもう、いいさぁ、白を切るならそれで。それよか、メグちゃんに会いに行くんならこれ持って行きなっ!』
『うっ…………何ですか、これ? 変な臭いがしますよ』
『じゃが丸くんメロンソーダ味デラックスだよ』
『め、めろんそーだ味でらっくす? 誰が食べるんですかこれ! 何か緑がかってますよっ!?』
『メグちゃんだろうが』
『………………そうでしたね』
『はい、二〇〇ウ゛ァリス』
『…………高いですね…………はい(ちゃりんちゃりん)』
というわけである。
そんなメロンソーダ味デラックスをメグさんは満足そうにぱくぱくと食べているのだが、俺には腐って緑色に変色したじゃが丸くんを口に放り込んでいるようにしか見えない。
まあ、だけど、喜んでくれているようで何よりだ。
「私は、浩希くんが約束を守って来てくれて嬉しいんだよっ」
「ははっ。お安い御用ですよ」
本当にお安い御用である、こんなに嬉しそうな顔を見れるなら。
「それに――」
「ん? 何ですか?」
じゃが丸くんを口に運ぶ手を止めて、メグさんが俺の目をしばらくじっと見てから、ニッコリ笑うと、
「それに、浩希くん、良くなったみたいで本当に嬉しいんだよ」
と、言った。
「……えっ?」
俺は唐突な言葉にぽかんとする。
「私の勝手な思い込みかもしれないんだけど、浩希くんが何か抱えているように見えたから心配だったんだよ。だけど、笑っているのを見て何だか荷が下りたみたいに見えるんだよ」
そう言ってメグさんは満面の笑みを浮かべる。
ようやくここでメグさんがずっと自分のことを気にかけていたことに気付き、我知らず胸が一杯になる。
「心配してくれていたのですか」
「ま、まあね。だけど、半信半疑だったし、もしかしたら欝陶しがられているかもと思っていたし…………」
と、尻つぼみになるメグさんに、
「いえ、そんなことはありませんでしたよ。今思えば、メグさんには救われていたような気がします。人をずっと避けていたから、ここで空っぽの心を埋めていたのかもしれません」
「…………へっ?」
込み上げる思いをそのままに吐き出した言葉に今度はメグさんが呆然とする番だった。
「今頃ですけど、ありがとうございました」
「えっ……あ……うん……どう致しまして」
どう答えたものかと、照れ臭そうにしどろもどろと考え倦あぐんだ末にメグさんは言った。
「……………………………………」
「……………………………………」
そして、二人の間に沈黙が訪れた。
だけど、決して、重いそれでも、いたたまれないそれでもなく、ただどこか温もりを感じられる沈黙、いや互いの温もりを伝え会うような沈黙だ。
こんなことはいつ以来だろうか、と記憶を巡る。
そして、一拍後に眼前に浮かぶ、SAOでの一つの風景。
場所はとあるNPCレストランの奥まったテーブル席。
対面に座っているのは、俺の心中も知らずに不思議そうにしている天城湊。
そう、俺はこの時一世一代の告白をしたのだ。
「あっ…………」
と、ここで俺は、今自分の心に生まれた思いに気付いた。
本当に唐突で脈絡のない思いだ。その唐突さと脈絡のなさに自分でも困惑している。
今これを口に出すべきか、否か、という葛藤が生まれたが、その葛藤は伝えなければならないという衝動的思いですぐに消える。
「メグさん、俺はメグさんに言わなければならないことが、あります」
俺は心地よかった沈黙を破って、思い切って切り出す。
「な、何かな?」
しかし、メグさんはその唐突さに驚くどころか、既にこの展開になることを知っていたかのように、穏やかな声音で答える。
いや、本当に知っているのだろう。
頬を染めているのは、俺がこれから口にする内容を知っていて、その内容に感極まっているからに違いない。
俺はそんなメグさんの期待に満ちた瞳を見つめながら、言葉を続けた。
「俺、直接契約しましたっ!」
メグさん:「………………………………… 俺:「ここまでこれたのも、初めて会ったときに
…………………………………………………… 、鍛治の道に進むことを勧めてくれたり、ずっと
…………………………………………………… 俺のことを気にかけてくれたメグさんのおかげで
…………………………………………………… す。突然な報告になって、すいません。だけど、
…………………………………………………… 、ふと思い立ってしまいずっとお世話になったメ
…………………………………………………… グさんにどうしても報告したいという強い気持ち
…………………………………………………… を押さえられず、こんな形で報告することにな、
…………………………………………………… 本当に感謝しています。だから、何かお礼できた
…………………………………………………… らりました。気を悪くさせたかもしれませんがい
…………………………………………………… いんですが、何か欲しいものはありませんか?
…………………………………………………… 何でしたら俺が選んだものでもいいでしょうか?
…………………………………………………… …………あれ、メグさん? 何で固まっているん
…………………………………………………… ですか?…………あっ、もしかして、驚きすぎて
…………………………………………………… 、言葉も出ませんか? 当然ですよね。突然、
…………………………………………………… 言われても信じられませんよね…………
…………………………………………………… 何でしたら、紹介しましょうか?あ、いや、その
…………………………………………………… 必要はないですね。今から直接契約した人達にパ
…………………………………………………… ーティーに誘われているんです。一緒に行きませ
…………………………………………………… んか? ………………あれ、メグさん!顔が真
…………………………………………………… っ赤ですよっ! 大丈夫ですか!? 体も震えて
…………………………………………………… いるじゃないですかっ!! 風邪ひいていたいた
…………………………………………………… んですか!? 今すぐにで病院に行きましょう!
…………………………………………………… 早く俺の背中に乗ってください――」
…………………………………………………………煩いんだよぉっ!!!!!!!私の純情利子付けて返せなんだよっ!!!!!!!!!!!!このっ、馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!」
「あっ、メグさん!!!」
折角買ったじゃが丸くんメロンソーダ味デラックスをほうり出すと俺の手をかい潜るようにしてボックスを飛び出していったメグさんは何故かはわからないが、泣き叫びながらギルドを飛び出していった。
後書き
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