ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第15話グリセルダの亡霊
前書き
どうもー!醤油ラーメンです!
昨日に続き二日連続投稿でーす!
今回からアニメ第6話「幻の復讐者」のストーリーを数回に分けて投稿したいと思います。
それでは、第15話「グリセルダの亡霊」スタートです!
今、目の前でヨルコさんが光の破片となって死んだ。ここは《圏内》、デュエル以外ではPKは不可能なエリアだ。今までのキリトの話を信じていなかった訳じゃない、でもーーーまさか本当に。
「!?」
顔を上げ、辺りを見回しているとーーー別の建物の上に誰かいた。黒いマントを着た誰かが。
「キリト!あのナイフ回収しろ!アスナさん!シュミットさんを頼む!」
「お、おい!」
「ライリュウくん!?」
二人の呼び声をオレは聞こうとしなかった。ヨルコさんが落ちた窓から向かいの建物の屋根に飛び移る。オレは筋力値を重点的に上げているがこれくらいの距離を飛び移るくらい訳ないほど敏捷値もちゃんと上げている。それより今はあいつをーーー
「待て!」
オレが叫ぶと黒マントの人物は懐から武器を抜こうとした。オレも両手剣《ドラゴンスレイヤー》を背中の鞘から抜くために手をかけたが、奴が懐から抜こうとしたのは武器ではなくーーー
「転移結晶!?チッ!クソ!」
そう、転移結晶だった。奴は当然オレと戦うつもりはさらさらなく、最初から逃げるつもりだった。オレはそれに対し舌打ちして、剣の柄から手を離しポーチに入っている投擲用のピックを3本取り出し奴に投げた。だがここは《圏内》、当然システムによって弾かれる。
その時奴の口が動いた。奴はどこに転移するつもりだ?
その瞬間、鐘の音が街中に響き、奴は転移の光に包まれその場から消えた。
「・・・クソッ!」
せめて奴がどこに転移したのか解ればーーー事件解決に大きく近づく。そういえば、オレいつから探偵になったんだ?こういうのは金○一かコ○ンに依頼してほしいもんだよーーーったく。
******
「バカ!無茶しないでよ!・・・ふぅ、それで、どうなったの?」
「う"っ・・・転移されて取り逃がした」
「宿屋の中はシステム的に保護されている、ここなら危険はないと思い込んでいた」
戻って来たら最初にアスナさんに剣を向けられた。オレが取り逃がしたことを報告するとキリトがシステムの仕様で危険はないと思って油断していたことを悔やんでいた。
「クソッ!」
オレは思わず部屋の壁を殴っていた。でも当然壊れることもなく、《immortalObject》と書かれている青いシステム表示が出た。意味は《破壊不能オブジェクト》、つまりいかなる攻撃でも壊せない物ということだ。《圏内》にいればプレイヤーも一応同じ扱いになる。奴に飛ばしたピックが弾かれたのもそれが原因だ。だけどーーーそれならなんでヨルコさんは。
「あのローブはグリセルダの物だ・・・」
「え?」
グリセルダさんの物?でも彼女はーーー
「あれは・・・グリセルダの幽霊だ!俺たち全員に復讐に来たんだ!・・・ははっ、幽霊だったら《圏内》でPKするくらい楽勝だよなァ?」
そこまで言って狂ってしまったかのように大笑いするシュミットさん。幽霊?そんなバカな話あるか。お化けみたいなアンデット系モンスターならまだ解るけど、死んだプレイヤーの幽霊が《圏内》でPKなんてこと、あの茅場でもやらない気がするぞ。
「幽霊じゃない、二件の圏内殺人は絶対にシステム的なロジックが存在するはずだ。・・・絶対に」
「・・・ああ、そうだよなキリト」
キリトの言葉にそう返すオレ。確実にーーー何かトリックがあるんだ。
******
宿屋を出て街の中心部にオレとキリト、アスナさんの三人は来た。シュミットさんは《聖竜連合》の本部に帰ったことだろう。
「さっきの黒いローブ・・・本当にグリセルダさんの幽霊なのかな?目の前で二度もあんなのを見せられたら、わたしにもそう思えてくるよ」
アスナさんとキリトはカインズさんの件と今回のヨルコさんの件で二回目だけどーーーオレ、今回初めて見たんだよな。ミラもその目で確かめようと思ってたみたいだったけど、やっぱり連れて来なくて正解だったな。亜利沙たちのこともあるし。
というかアスナさん幽霊なんて信じてるのか?こんなムードじゃなかったら『え?お宅幽霊なんて信じてんの?痛い痛い痛い痛い痛い!痛いよぉー!お母さぁーん!ここに頭ケガした人がいるよぉー!』とか『痛いよぉー!お父さぁーん!絆創膏持ってきてぇー!出来るだけ大きなぁー、人一人包み込めるくらいのぉー!』とか言ってたのに。ーーーなんか考えてるだけで不謹慎だなオレ。
「いや、そんなことは絶対にない」
「あ?あ、ああそうだよな。そもそも幽霊だったら、さっきも転移結晶なんか使わないで・・・・・・ん?」
転移結晶?
「どうしたの?」
黙り混んだオレにアスナさんが声をかける。
「いや、なんでもない」
オレはそれだけ言ってキリトと顔を合わせる。キリトも同じことを考えていたみたいだけどーーー
「・・・腹減ったァ」
急に腹が減った。こんな時ではあるけど人間は食欲には勝てない。そういう訳でオレは朝ミラからもらったおにぎりを出した。
「ほら」
「ん?くれるのか?」
「この状況でそれ以外何があるの?見せびらかしてるとでも?」
「じゃ、じゃあありがたく・・・」
そんなオレを尻目にアスナさんがキリトに何かの紙の包みを渡していた。
「そろそろ耐久値が切れて消滅しちゃうから、急いで食べた方がいいわよ」
その包みの中身はなんと美味しそうなバケットサンド。厚切りの肉や赤い小さな木の実、黄色いクリームに葉っぱが数枚。見てるだけで美味そうだな。
ーーーオレにはくれない分、キリトに渡したので最後みたいだな。実に、実に残念だ。
キリトはそれに大きくかぶりついた。
「・・・美味いな」
「マジでか」
どうしよう、そっちも食いたくなってきた。キリトに「交換しない?」って言ったら「しない」の一言で一掃。まあーーー当然か(悲)。
「いつの間に弁当なんて仕入れたんだ?」
「耐久値がもう切れるって言ったでしょ」
「え?じゃあそれいつの?」
流石に耐久値ギリギリの食い物売ってる店はないだろ。でもこの人に限って耐久値ギリギリまでとっとくなんてーーー
「こういうこともあるかと思って、朝から用意してたの」
ああ、元々一日くらいしか耐久値もたないのか。確かに料理によって傷みやすさが違うように、SAOの料理も種類によって耐久力が違うからな。特に干し肉とか耐久値高いからな、オレもダンジョンに潜る時何度救われたことか。もうダンジョンでは武器と回復アイテムとクリスタル、そして干し肉さえあればやっていけると思える。
「流石、《血盟騎士団》攻略担当責任者様だな。ちなみに、どこの?」
「売ってない」
『へ?』
自然とオレとキリトの声が重なりすっとんきょうな声をあげた。売ってない?
「お店のじゃない。わたしだって、料理するわよ」
あんたが作ったんかい!え?え!?この人料理スキル上げてんの!?攻略の鬼って呼ばれてるこの人からじゃ全然想像出来ねぇ!
「え、ええと、それはその何と言いますか・・・いっそのこと、オークションにかければ大儲けだったのにな。はははは・・・」
キリトがそこまで言って、このサンドのコックが地面を蹴り、それに驚いたキリトはサンドを落としてポリゴンにしてしまった。あ~あ、もったいね。
「おかわりはありませんからね」
「・・・ライリュウ、やっぱそれくんない?」
「いやー、これオークションに出せるもんでもないよ?」
後でミラにしばかれそうな言い方しちゃったけど、さっきいらないって言ったのはどこの誰だったっけ?
そのどっかの誰かさんはゆっくりと膝から崩れ落ちた。
「どうしたののよ?」
「気持ちは解るけど、何もそこまで「シッ!」ん?」
どうしたんだコイツ?もうそこにはサンドはーーーあ。
「「あぁーーー!」」
「なな、何?」
「そうか、そうだっのか!」
「何よ?一体に気付いたの?」
大声をあげたオレとキリトに驚くアスナさん。
「俺は、俺たちは何も見えていなかった!」
「見ているつもりで違うものを見ていたんだ!」
「え?」
アスナさんはオレたちが何を言っているのか解らない様子だった。
でもこれなら・・・今気付いたこととあの仮説が合えばーーー
「謎は全て解けた!」
「ライリュウくんそのセリフどっかで聞いたことある!問題になったりしないよね!?」
オレのセリフは今どうでもいい。
二次製作ですからね(by醤油
「圏内殺人・・・そんなものを実現する武器も、ロジックも、最初から存在しちゃいなかったんだ!」
そう、つまり誰もーーー
第三者side
ここは第19層・十字の丘。ここにある一本の大きな木の前に設置されている墓、その前に膝をつく一人の男がいる。
「グリセルダ・・・俺が助かるにはもう、あんたに許してもらうしかない」
名を《シュミット》。現在攻略組の大型ギルド、《聖竜連合》のディブェンダー隊の槍使いであり、この墓に名を刻まれた女、《グリセルダ》が率いていたギルド、《黄金林檎》の元メンバーである。
彼は腕を前に地についている膝の前に置き頭を下げる。
「すまない、悪かった!許してくれグリセルダ!俺は、まさかあんなことになるなんて思ってなかったんだ!」
シュミットは今は亡きグリセルダに謝罪の言葉をあげる。
ーーー本当に?ーーー
「!?」
突如響く謎の女性の声。それを聞いたシュミットは短く驚愕の声をあげた。
ーーー本当に、本当に・・・ーーー
鳴り響く謎の声に、恐怖に身を震わせるシュミット。その彼に怪しく迫る"影"。その気配を察知したシュミットは慌てて後ろを向く。そこにいたのはーーーただの《ウウサギ》。彼は安心したように息を大きく吐き。前に向き直る。だがそこにはーーー
「何をしたの?あなたはわたしに・・・何をしたの?シュミット」
グリセルダの"亡霊""ーーー彼女の姿を見たシュミットは口を抑え、恐怖に顔を染める。その亡霊が手に持つのはーーー罪の蕀。先日、シュミットと同じ《黄金林檎》の元メンバーである《カインズ》を本来死ぬことはありえない《圏内》で殺した物と同じ槍であった。
「うぅ!お、俺はただ、指輪の売却が決まった日、いつの間にかベルトポーチにメモと結晶が入ってて!そこに指示が!」
「誰のだシュミット?誰からの指示だ?」
自分が犯した過ちを自供したシュミットの耳にもう一人、男の声が入った。シュミットはその人物の姿を確かめるために顔を上げた。そこにいたのはーーー
「グリムロック!?あんたも死んでたのか!?」
《グリムロック》ーーーこの世界における、グリセルダの夫である。目の前にいるグリセルダの亡霊と共にいる彼は何の疑問もなく会話に入る。彼も死んでいたーーーシュミットがそう思うのは自然といえるのかーーー
「誰だ?お前を動かしたのは誰なんだ?」
己の前にいるのは己のよく知る夫婦の亡霊。夫の亡霊の問いにシュミットはーーー
「わ、解らない!本当だ!メモには『グリセルダが泊まった部屋に忍び込めるよう、回廊結晶の位置セーブをして、それをギルド共通ストレージに入れろ』と書いてあって・・・」
「・・・それで?」
グリムロックの亡霊はさらに問う。その雰囲気の圧力に小さく声をあげて怯む。
「お、俺がしたのは、それだけなんだ!俺は本来に、殺しの手伝いをする気なんかなかった!・・・信じてくれ!頼む!」
彼は殺しの共犯に仕立てあげられた。それだけは信じて欲しい。その悲痛の願いに対してグリムロックとグリセルダはーーー
「・・・全部録音したわよシュミット」
「・・・え?」
録音・・・グリセルダの口から出た言葉に小さく驚くシュミット。彼の前にいたのは亡霊などではなかった。
ライリュウside
「い、生きてるですって!?」
「ああ、生きてる」
「ヨルコさんも最初に死んだと思われたカインズさんもな」
アスナさんの驚愕の声にもキリトはそっけなく反す。いや、オレもか。とにかくーーー誰も死んでなかったんだ。
「だ、だって・・・」
そりゃ目の前で人が消えるのを二回も見たから信じられないだろうなーーーでも《圏内》でも消える物は他にある。
「《圏内》ではプレイヤーのHPは基本的に減らない。でも・・・」
「オブジェクトの耐久値は減る。さっきキリトが落としたバケットサンドみたいに」
あの光景がこの《圏内事件》のトリックを破る大きなヒントになった。
「あの時、カインズのアーマーは槍に貫通されてた。槍が削っていたのはカインズのHPじゃなくて、鎧の耐久値なんだ」
「じゃ、じゃあ、あの時砕けて飛び散ったのは・・・」
「そう、彼の鎧だけだったんだ。そしてまさに、鎧が砕ける瞬間を狙って、その中身のカインズさんは・・・」
ーーー転移結晶で転移したーーー
「その結果、発生するのは《死亡エフェクト》に限りなく近い・・・でも全く別の物」
「・・・ならヨルコさんも?」
「ああ、彼女は最初からダガーを背中に刺した状態でオレたちと話していたんだ」
「最初から?確かわたしたちがシュミットさんを連れて来るまでライリュウくんが・・・」
そう、オレが彼女についていた。なのに気付かなかった。
「オレ一度彼女から二分近く離れちゃって・・・。多分その時だと思う」
「よく思い出してみろよ、あの部屋で彼女一度も背中を見せようとしなかった。そして服の耐久値が減ってくのを確認しながら会話を続け、タイミングを見計らって「外から飛んできたダガーが刺さった」、という演技をする」
強いて言えば、オレが彼女から目を離さなかったら絶対に成功しなかった。
「ってことは、黒いローブの男は・・・」
「十中八九、グリムロックじゃない」
「完全に死んだと想われていたカインズさんだ」
ヨルコさんとカインズさんはこの方法を使えば、死亡を偽造出来るんじゃないかと思いついた。しかも《圏内殺人》という恐るべき演出を付け加えて。
「そしてその目的は、指輪事件の犯人を追い詰め、あぶり出すこと。二人は自らの殺人事件を演出し、幻の復讐者を作り出した」
「シュミットのことは、最初からある程度疑ってたんだな」
「そして、ヨルコさんの殺人演技で確信した」
シュミットはグリセルダさんの死に関係している。そして焦った彼が行く場所に向かいーーー多分死んだグリセルダさんやグリムロックさん演じて問い詰める。
「なあ、ヨルコさんとフレンド登録したままだろ?」
「あっ」
キリトが確認してみろと言わんばかりにアスナさんに言う。フレンドリストを確認するとーーー
「今、19層のフィールドにいるわ。主街区から少し離れた、小さい丘の上」
「確か、《十字の丘》・・・だったな」
「そうか・・・とにかく後は彼らに任せよう。俺たちのこの事件の役回りはもう終わりだ」
とりあえずオレたちがこれ以上動く必要はない。後はヨルコさんたちがシュミットさんをどうするかだな。
「二人ともお疲れさん。ライリュウ、早く帰ってやれ」
「ミラちゃん待ってるよ?」
「ああ、わかってるよ。じゃあな」
昨日のPoHの件で散々心配掛けちまったし。早く帰ってやんねぇとな。
後日聞いた話では、グリセルダさんを殺したのはグリムロックさんから依頼を受けたラフコフだったらしい。キリトの奴、自分とアスナさんだけ残ってオレを守ろうとしてたのかよ。ーーーオレもいつか、乗り越えなきゃいけない。あの恐怖をーーー
後書き
「作者、最後雑じゃね?」
醤油「解ってくれ、キミの為だ」
「・・・で?次回はどうなんの?」
醤油「ああ、次回は・・・」
リ「当然!あたしの出番に決まってるじゃない!」
醤油「あれ?リズベットさん出す予定はないけど・・・」
リ「え!?」
醤油「嘘だよ、ちゃんと次回出しますよ。ただでさえ原作で出番が少なくなったんだから」
リ「そんな言い方やめて!」
ラ「オレ、完全空気・・・」
醤油「ほら!そろそろ締めるよ!」
「「「ご観覧ありがとうございました!次回もお楽しみに!」」」
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