ロックマンゼロ~救世主達~
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第9話 成就
前書き
前半ミッション完了
カムベアスを倒したゼロがレジスタンスベースに戻ると、ルインが出迎えてくれた。
「お疲れ様、そっちも随分やられたね」
「ああ、思っていたよりも手強かったな」
ゼロの場合は足場が悪いせいもあるが、あそこまでやるとは正直思っていなかった。
「これで全ミッション終了です」
「ありがとうございます。ゼロさん、ルインさん。これで完璧です。あなた方のおかげで、私の作戦も予定以上に順調に進んでいます。本当にありがとう。これで…成功…間違いなしです。後は、我々の仕事です。お二人はゆっくり休んでいて下さい。」
「……………」
「了解しました……ほら、ゼロ……行こう」
エルピスの言う通り、もう自分達に出来ることはもうない。
ならば、自分達に出来るのは万が一に備えて動けるように、休息を取っておくだけだ。
「………」
「ゼロ、シエルの所に行ってあげなよ。きっとシエル、ゼロのこと心配してるから……ね?」
「…分かった」
ゼロは無言のまま、シエルの部屋に向かう。
それを見送ったルインも一度、自室に戻ることにした。
「ふう…」
そして自室に着くと、ルインはベッドに横になる。
「…これでネオ・アルカディアへの直接攻撃作戦の“正義の一撃作戦”とやらの準備は整ったけど…正直…勝てるのかな?エルピス司令官は勝てると思っているようだし……確かに武器とかは充分あるけど……」
武器も充分過ぎる程だし、部隊もそれなりの規模だ。
確かにパンテオンやメカニロイドくらいになら勝てるかもしれないが…。
ルイン「ハルピュイア達がいるんだよね…」
そう、ネオ・アルカディアにはハルピュイア達四天王がいる。
自分はハルピュイア達と戦ったことはないが、ハルピュイアから感じたエネルギーは自分やゼロに匹敵する程であり、そんな相手に能力が低いからとネオ・アルカディアから弾圧されたレプリロイドが敵うのかと問われれば断じて否だ。
おまけにゴーレムなどの大型メカニロイドもいるだろうし、どう足掻いても勝ち目は無さそうだ。
「私が言ったところで、エルピス司令官は聞いてくれないだろうし……ゼロに頼んで…は、駄目か」
どういうわけか、エルピスはゼロを嫌っているのでゼロが何を言っても聞く耳持たないだろう。
ルインが他のレジスタンス達から聞いた話ではエルピスはレジスタンスの司令官となるまでに、様々な作戦を成功させてネオ・アルカディアに小規模ながらも打撃を与えてきた。
人員の管理や兵站の維持、作戦の立案にも長け、自身が率いるレジスタンスの戦力を着々と蓄えるなど、統率者として優れており、このように、シエルがレジスタンス全体の指揮をエルピスに任せたことも誰もが頷ける。
エルピスに難点があるとすれば、ネオ・アルカディアに対する過剰とも言えるほどの攻撃性と、ゼロとルインのような現場での実戦経験が不足している程度と言ってもよかった。
敵に対する攻撃性はレジスタンスの設立経緯と彼らの境遇を考えれば当然のことで欠点とは言い難く、寧ろ味方の士気を保つのに都合が良いと言えた。
現場での経験不足と言っても、レジスタンスとネオ・アルカディアの戦力に差がありすぎるので当然である。
これはシエルを含めた他の古参のレジスタンスも大差がない。
ルインやゼロ、エルピスの間にはネオ・アルカディアの戦力に対する認識の差異があった。
その差異とはネオ・アルカディアの持つ戦力規模に関する見解であり、この差異はエルピスがレジスタンスとして各地で実績を上げてきたのに対して、ゼロは一年もの間、戦闘に関しては素人であったシエル率いる古参のレジスタンスを守りながらネオ・アルカディア軍と戦い、最後には敵の本拠地に乗り込んで死闘を演じた。
そしてルインは一度きりとは言え、シグマ率いるイレギュラー軍と死闘を演じ、それ以前にも特A級のイレギュラーハンターとして凶悪なイレギュラーとの戦いを生き抜き、そして今回の戦いでの経験からだ。
ネオ・アルカディアの戦力に関する正確な情報はレジスタンスには存在しないため、その見積もりはどうしてもそれぞれの持つ印象に左右されるため、その見解の違いが今の自分達とエルピス達との溝となっているわけだ。
「仕方ない。シエルに頼んで言ってもらおう。それしかない」
そう決めてスリープモードに移行しようとした時、ルインの通信機が鳴った。
「え?私に通信?でも誰からだろう…ゼロかシエルなら、直接来ればいいし……こちら、ルイン」
取り敢えず通信を繋げるが、通信の相手に驚愕することになる。
『…やあ、ルイン』
「え…!?エックス…っ!!」
思わず叫んでしまいそうになるが、ここがレジスタンスベースであることを思い出してすぐに辺りを見回す。
気配がないことから周囲には誰もいないようだ。
「はあ…脅かさないでよエックス」
『あはは…ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだよ。サイバーエルフの状態で通信出来るのか分からなかったけど、通信出来て良かった…』
「サイバーエルフ…。ねえ、エックス。そんなことして大丈夫なの?無理してない…?シエルがレプリロイドがサイバーエルフの状態で活動するのは危険だって…」
『大丈夫だよ。サイバーエルフとしての力を使わない限りは平気だから。』
「そう…良かった。でもどうしたのエックス?私に通信を寄越すなんて」
『うん…その…君さえ良ければなんだけど…今、会えないかな?』
「え?」
『あ、今が無理なら無理と言ってくれていいんだ。無理してまで来る必要は…』
「ううん…行く。私…エックスに会いたい。」
色々と丁度良いかもしれない。
恐らくこの機会を逃したらエックスとゆっくり話し合うことなど滅多にないだろうから。
『ありがとう』
「場所は?」
『……シティ・アーベル』
「っ…分かった。そこならHXアーマーですぐに行けるから」
通信を切り、部屋を出ると、誰にも気付かれないように屋上に出て、HXアーマーに換装する。
そしてエックスが待っているであろう、廃墟となったシティ・アーベルに向かうのであった。
しばらく飛んでいるとかつて、ルイン達が所属していたハンターベースがあったシティ・アーベル跡に着いた。
「これが今のシティ・アーベル…随分、変わっちゃったな…」
「あれから二百年が過ぎてしまったからね」
「エックス」
「特にシティ・アーベルはコロニー落下の影響やイレギュラーの襲撃があったから尚更だよ。」
サイバーエルフの状態のエックスが廃墟となった街を見つめながら言う。
「ごめんね、そんな大変な時に傍にいてあげられなくて」
「いいんだ。僕はまた君に会えて触れられるだけで充分幸せだから」
「…っ」
その台詞に思わず顔が熱くなるような感覚を覚えたルインはジト目でエックスを見遣る。
「エックスは随分口がお上手になったよね。達者になったその口で一体何人の女の子を落としていったのかな?」
「え!?ち、違うよ!僕がこんなこと言うのは君だけだよ!だって僕は君のことが好きなんだから!!」
「っ…そ、それって仲間として…?」
「違う。僕は君をずっと一人の女性として愛しているんだ」
「っ~~~~!!」
赤面し、思わず両手で顔を塞いでしまったルイン。
シエルの言っていたことが見事に的中した。
「に、二百年も…?」
「そうだよ。僕は…あの日からずっと君のことを忘れたことなんかなかった。」
エックスはルインの華奢な体を抱き締める。
まるで壊れ物を扱うように優しく、自分を包み込む温もりにルインは目を見開いて更に顔が真っ赤になった。
「あ…う…そ、その…エックス…?」
「何だい?」
「あ、ありがとう…エックスの気持ち…凄く嬉しい……私をずっと想ってくれて…でも…」
「何だい?」
「いいの?本当に私なんかで?」
「え?」
何のことか分からないエックスは疑問符を浮かべている。
「ほ、ほら…わ、私…恋愛のこととか良く分からないし…」
「それは知ってるよ。ハンター時代、君に好意を抱いていたハンターに君は全く気付いてなかったし」
「ゔっ…その、エックスのこと、沢山困らせるかもしれないし…第一、一国の統治者のエックスに私なんか釣り合わないよ!エックスにはもっと相応しい人が……」
「ルイン…」
「う……っ…」
寂しげに自分の名を呟くエックスにルインは口ごもる。
「僕は君がいいんだ。君以外の人を好きにはなれないよ…」
「…っ……」
エックスの表情を見て、本心からの言葉だということに気付いたルインは何を言うべきか迷ったが、意を決した。
「本当に…いいの?」
「ん?」
「その…私なんかで…」
「うん」
「私、突っ走っちゃうとこあるし…」
「そこが君のいいところでもあるじゃないか…僕は君がいいんだ…ルイン」
「っ…うん、ありがとう……えっと…よ、よろしくお願い…します」
「こちらこそ」
ルインはエックスにギュッと抱き締められ、温もりと共に言葉では表しきれない気持ちを抱いた。
「(暖かい…多分、これが幸せって言うんだ。)」
二百年の時を経て結ばれた二人を月明かりが優しく照らしていた。
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