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真田十勇士

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巻ノ二十五 小田原城その三

「それが強みであるがじゃ」
「それでもですな」
「街の拡がるのは限られている」
「それで少しでも道を入り込むと」
「そこから乱れたりもしますな」
「かつての都と同じじゃ」
 この場合は平安京だけでなく平城京等それまでの都も同じだ。街が壁に覆われている城塞都市はなのだ。
「だからな」
「街の広さも」
「どうしてもですか」
「限られていて」
「道も最初から整えている」
「そういうことなのですな」
「うむ、そして火事はな」
 この災害についてもだ、幸村は話した。
「とりわけじゃ」
「気をつけている」
「そうしているのですな」
「囲まれているからな」
 街が城の中にだ。
「下手をすれば城全体が焼けてしまう」
「街ごと、ですな」
「そこも悩みどころですか」
「ただ街が城に囲まれていることは」
「強みだけではないのですな」
「そうした悩みもある」
 こう言うのだった。
「この城にはな」
「ですか、いいことばかりではないのですな」
「誰も攻め落とせぬ強みもありますが」
「政には弱みがある」
「そうなのですな」
「あらゆるものに強みと弱みがある」
 幸村はこのことも踏まえて話した。
「いいことばかりでもない」
「あらゆることについて」
「悪いこともある」
「そうなのですな」
「この城もそうで」
「他の全てのことも」
「それがわかってこそじゃ」
 まさにというのだ。
「ことが成せる、拙者もそのことがわかった」
「それが、ですか」
「おわかりになられたのですか」
「拙者もな。では街の中を見て回ろう」
 小田原城のその中をというのだ。
「じっくりとな」
「そして、ですな」
「見聞を広めますか」
「そのうえで飯も食い」
「酒も飲みますか」
「そうじゃな。しかしどうも我等は」
 この旅のことも思う幸村だった、ここで。
「何かあればな」
「何かとは」
「それは一体」
「旅の行く先々で美味いもの、名物を食っておるな」
「はい、そういえば」
「我等は常にですな」
「各地で名物を食っていますな」
 家臣達も幸村のその言葉に頷いて答えた。
「酒も飲んでいますし」
「何かと楽しんでいますな」
「名所も見て回っていますし」
「贅沢か、いや」
 自分で言ったところでだ、また言った幸村だった。 
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