ファーストキスは突然に
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5部分:第五章
第五章
「それはね」
「そうなの」
「とにかく放課後ね」
それでとにかく時間は決めるのだった。
「放課後。行こうね」6
「うん、行こう」
恵美もその言葉ににこりと笑う。こうして二人はそのファーストデートとなったのだ。崇はそのことに言われてからやっと気付いたのである。
その日の昼休みだ。彼は校舎の屋上でまた友人と一緒にいた。そこの隅に並んで座りそのうえで売店で買ったパンを食べながら話すのだった。
「今日の放課後な」
「やるのかよ」
「ああ、決めるよ」
彼は言った。
「絶対にな」
「まあ頑張れ」
友人はサンドイッチを左手に持って応えていた。ハムサンドである。
「応援はしているからな」
「悪いな」
「それで場所はもう決めたのか」
「河川敷な」
そこだというのである。
「そこにいたよ」
「そうか、あそこだったら場所的には悪くないな」
彼もそれはいいとした。
「合格だよ」
「そうか、それだったらな」
「ああ。それでな」
焼きそばパンを食べる崇に言う。
「慎重にいけよ。焦るなよ」
「焦るな、か」
「あときょどるな」
彼にこのことも告げた。
「いつもみたいにな。あんなあからさまに狼狽するな」
「落ち着けっていうのかよ」
「落ち着いていればいいんだよ」
ハムサンドを食べながらの言葉である。
「何でも落ち着いてやれば成功するんだよ」
「そうなのかよ」
「御前落ち着いていれば結構いい顔だしな」
彼の顔も褒める。
「だから落ち着け。いいな」
「わかった。それじゃあな」
「放課後成功させたらな」
この話もするのだった。
「おめでとうと言ってやるよ」
「今言ったのは前金なんだよ」
それだというのである。
「それなんだよ。だから本払いはな」
「その時にか」
「ああ、それだよ」
彼はまた言った。
「期待しているからな、頑張れよ」
「ああ、わかった」
それに頷いて今は決意の昼食を食べる。そのパンもミルクも普段の味とは違っていた。いつもより強くはっきりとした味であった。
そしてその昼食を食べて午後の授業を消化して。彼は校門に出た。するとそこにはもう恵美がにこりとした明るい笑みを浮かべてそこに立っていた。
「それじゃあね」
「ああ、行こうか」
こうして二人は駅前までデートをした。
デート自体はいつもの登下校と変わらない。全くだ。
話の内容もだ。そんな変わらない話をしながら先に進んでだ。その本屋に辿り着いた。
そこで二人が選ぶ本は。まずは恵美のものだった。
「これがいいわね」
「漫画なんだ」
「そう、この漫画好きなのよ」
笑いながら漫画の本棚に向かい取り出したのはドラマにもなったあるメイドとお嬢様の話だった。それを取り出したのである。
「これをね」
「その漫画好きだったんだ」
「そうなの。最新刊が出たからね」
単行本を手ににこにことしている。
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