バレンタインに黒薔薇を
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4部分:第四章
第四章
「今まで見た中で最も高潔で公平で親切な方です」
「相手がどんなになっても見捨てないしね」
「辛い状況の人はそっと支えるし」
「いい奴よ」
「本当にね」
「そうですわ。あの方は」
「よし、それじゃあ」
皆ここで冴子に話すのだった。
「決まりね。あいつに本命チョコよ」
「それプレゼントよ」
「いいわね」
また口々に告げるのだった。
「それでね」
「仕掛けるのよ」
「本命のチョコをプレゼントして」
「そう、手作りよ」
「それをするのよ」
それをするというのである。今度は。
「その手作りのチョコをあげてね」
「いいわね」
「もう一気にやるのよ」
周りの言葉には思いきり力瘤が入っていた。彼女よりもずっと言葉に力が入っている。真剣そのものの戦いに赴くような顔になっての言葉だった。
「いいわね、一気によ」
「とにかくね」
「決めなさいよ、久遠をね」
「わかりましたわ。といきたいですが」
しかしであった。ここで冴子は難しい顔になるのであった。そうして言うのであった。
「ただ」
「ただ?」
「何か迷いでもあるの?」
「チョコレートを作るのですわね」
彼女が言うのはこのことだった。その本命に食べさせるそれである。それの話を今ここでさらにするのである。確かめるその顔でだ。
「そうなりますと」
「それはね、愛よ」
「愛を表現するのよ」
友人達はここでまた力瘤を入れて語るのであった。
「愛をよ、いいわね」
「それを表現するのよ」
「愛をですの」
「日本だったらハートマークのチョコレートとかね」
「そういうのを作るわよね」
「そうそう」
こう顔を見合わせて笑顔で話すのであった。
「告白だとね」
「もうそれしかないわよね」
「けれど。ヨーロッパじゃ違うのかしら」
「いえ、それは」
ハートマークについてはだった。その答えは。
「ヨーロッパからはじまったマークですし」
「そうよね。だったらそれでいいんじゃ?」
「ハートのマークの特製チョコね」
「それで決まりよ」
「どうでしょうか」
しかしここでまた首を傾げさせる冴子だった。そうしてまた言うのだった。
「それは」
「あれっ、ハート駄目?」
「嫌なの」
「オーソドックスな気がしますわ」
これが彼女の意見であった。
「それは」
「まあハートのチョコなんてね」
「ありきたりだし」
「お店でも普通に売ってたりするし」
「確かにその通りね」
それは否定できなかった。確かにそうしたチョコは何処にでもあるからだ。だから今の冴子の言葉にも頷くところがあるのであった。
「じゃあこれはなし?」
「ハートは」
「私は薔薇が好きなのですけれど」
ここでまた問うの冴子が言った。
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