バレンタインに黒薔薇を
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2部分:第二章
第二章
「日本程じゃないんだ」
「そうなんだ」
「流石ですわ」
そして冴子はこんなことも言った。
「ここまで色々なものが食べられて豊かな国だなんて」
「そういえば世界で二番目だったっけ」
「確かね」
彼女達にはその実感もあまりなかった。
「日本って」
「そういえばそうだったわね」
「それだけはありますわ」
そしてまた言うのであった。
「食べ物だけでなく男の子も」
「いいんだ」
「それも」86
「アメリカやアジアは存じませんが」
彼女は知っているのはあくまで西欧だけである。ある意味において狭い世界ではある。拾いとも言えるし狭いとも言えるものであった。
「ヨーロッパのどの国と比べましても」
「そうなんだ、日本って」
「凄いんだ」
「服も音楽もそうですし」
そういったことも褒める彼女だった。
「今までいた国の中で我が国が一番ですわ」
そしてこうも言うのであった。とにかくはじめて入った祖国に一目惚れした彼女であった。
その中で彼女は。ある話を聞いた。
「バレンタインっていいますと」
「あれっ、知らないの?」
「贈り物をする日よ」
「チョコレートをね」
「チョコレートを」
それを言われて首を傾げるのであった。
「バレンタインデーといいますと」
そして彼女の知識を話した。
「あれですわね。聖バレンタインが殉教した日でしたわね」
「誰?それ」
「さあ」
「知らないわよね」
ところが日本の友人達はその名前は知らなかった。それも全くである。
「そんな人はね」
「美味しそうな名前だとは思うけれど」
「それだけよね」
「美味しそうですの」
それを聞いて首を傾げさせる冴子だった。
「それだけですの?」
「っていうか何かある?」
「ないよね」
「ねえ」
彼女達にしてみればそうだった。首を傾げるだけであった。
そうしてそのうえでまた冴子に対して問うのだった。
「冴子さんのところは違ったの」
「ヨーロッパじゃそういうのはなかったのね、本当に」
「ありませんでしたわ」
はっきりと答える彼女であった。
「バレンタインにチョコレートを」
「これって日本だけだったんだ」
「ヨーロッパからじゃなかったんだ」
「そうですわよ」
また言う彼女であった。
「聞きませんでしたわ」
「日本だけだったなんて」
「意外ね」
「韓国でもそうじゃなかった?」
「ねえ」
彼女達は今度は韓国の話もした。しかしここでこんなことも言うのであった。
「それで振られたらラーメン食べるんだったっけ」
「冷麺じゃなかったっけ」
「ジャージャー麺でしょ」
「あれを食べるんですね」
ラーメンやそういったものもやはり日本に来てから知ったことであった。日本に帰って来たというのははじめて入った祖国なのでそれは言えなかった。
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