戦国異伝
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第二百三十六話 生きていた者達その十
はっとしてだ、不意に周りを見回して口々に言った。
「安土城の門のところではないか」
「我等は何故ここにおる」
「これは一体どうしたことじゃ」
「上様と奇妙様がおられるが」
「お二人共都におられる筈」
「何がどうなっておるのじゃ」
「ふむ、やはりな」
その彼等を見てだ、信長は頷いて言った。
「この者達は操られていただけじゃ」
「はい、それもかなり強くですな」
長政が信長に応えた。
「そうですな」
「そうじゃ、それはよかった」
「ですな、十兵衛殿達がご自身のお考えではなかった」
「さて、それではじゃ」
信長はあらためて言った。
「十兵衛よ」
「はっ、何でしょうか」
「まずは城に入れ、そしてじゃ」
ここで信長はさらに言った。
「兵は丹波に返し都も穏やかに戻せ」
「よくわかりませぬが」
「すぐにわかる、それにじゃ」
さらに言う信長だった。
「この安土に諸大名を集めよ」
「大名達もですか」
「この安土にですか」
「牛助達もじゃ」
佐久間達もというのだ。
「先に追放した三人もな」
「三人共ですな」
「うむ」
平手にも答えたのだった。
「そうせよ」
「わかりました」
平手は信長の今の言葉に笑顔で答えた。
「それではその様に」
「ではな」
「牛助達のことはわかっていましたが」
「それでもじゃあな」
「何時か何時かと思っていました」
平手にしてもというのだ。
「それがようやくですな」
「そうじゃな。しかしな」
「しかしとは」
「いや、牛助達もご苦労だった」
追放しても頑張ってくれた彼等への労いの言葉だ。
「まことにな」
「では褒美もですな」
「よい茶器を考えておる」
信長は笑ってこうも言った。
「あの者達にもな」
「それはよいことです」
「では一旦城の中に戻ろうぞ」
至って落ち着いて言った信長だった。
「これよりな」
「はい、それでは」
「これで一つのことが終わった」
信長は馬上でこうも言った。
「そして次はじゃ」
「はい、あの者達との戦ですな」
「それに入るわ」
「ですな、ではこれより」
「まことの天下に泰平をもたらす戦に入る」
これからというのだ。
「よいな」
「天下統一はなり」
「泰平を確かにする戦がはじまるからな」
「では上様」
帰蝶が後ろから言って来た、見れば帰蝶も具足と陣羽織に身を固め馬上にいる。実に整った出で立ちである。
「湯漬けを用意してありますので」
「それを食ってじゃな」
「お休みなさいませ」
「さすればな」
こうしてだった、信長は一旦明智達を丹波まで帰らせてだった。自分達は安土に入った。そこで実際に帰蝶と共に湯漬けを食べてだった。
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