コスプレイヤー
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3部分:第三章
第三章
「今度の休みはいいわよ」
「えっ!?学校でいいの?」
「教室は駄目だけれどね」
相変わらず奇麗なのに無愛想な顔と調子で啓太郎に言ってきた。あの時と同じで周りには彼の仲間達もいる。
「他の場所だったらいいわ」
「何でまた急に」
「何か文句あるの?」
これまたかなり高圧的な言葉であった。
「先生がいいって言っていたから」
「あれ、おかしいな」
今の言葉を聞いて仲間の一人が首を捻るのだった。
「この前は先生がいいって言っていても規則は規則だって言ってたよな」
「そうだよな」
彼等は口々に言う。そういえばそうなのだ。
「それでどうして今そうなるんだ?」
「何かおかしくないか?」
「おかしくはないわ」
しかし由比の言葉は変わらない。ついでに言えば表情も変わらない。
「校則では教室ではしたら駄目になってるだけだから」
「他ならいいのかよ」
「そうよ」
無愛想なままで答えてくる。
「ただ持ち物は教室に置いていいわ」
「そうなのか」
「そうよ。今はね」
「!?今は」
啓太郎は今の由比の言葉が引っ掛かった。
「今はって!?」
「あっ、何でもないわ」
一瞬だがその顔に焦りが見えたように思えた。しかしそれはほんの一瞬のことだったのですぐに消えてしまい見間違いかとも思った。
「とにかく教室で練習するのは駄目だけれど物を置くのはいいからね」
「了解。まあ規制緩和ってことだよな」
「そうだよな。それでよしとしますか」
「そういうことだから。それじゃあ」
「わかったよ。有り難う由比ちゃん」
「由比ちゃんじゃないわ」
それにはまた言い返してきたのであった。
「高見沢って呼んで」
「わかったよ、高見沢さん」
苦笑いでそう呼ぶ一同であった。とりあえず今回は学校の中で練習ができてしかも教室も一応使えることになったのだった。
だがそれは啓太郎には関係がなかった。とりあえず今度の休みはだ。
「御前は次の休みはいないんだな」
「悪いな」
これは前に言った通りであった。
「そういうことでな」
「ああ、わかってるさ」
「そういうことだな」
こうして折角の学校を使ってもいい休みに彼はコスプレ会場に行くことにした。しかしこちらも趣味だったので悪い気はしていなかった。学校に帰ってまたコスプレ会場についてネットで調べるのであった。調べるのは主にそのユイという女の子であった。
「確かに奇麗だな」
調べれば調べる程その感想を持つ。
「しかし。何だろ」
それと共にこの感想も抱くのだった。
「どっかで見たかな」
そう思うのだった。だが彼はこう思った。
「結構色々な会場回ってるしな。そこで見たかな」
コスプレ会場は一つではない。それこそあちこち回っている。だからこう思ったのである。
しかしだ。それでも引っ掛かるものを感じ続けていた。それが気になるのだった。
「もっといつも見ているかな」
次に思ったのはこれであった。
「だとしたら誰なんだろう」
誰なのか考えるが学校には彼の知っている女の子でコスプレをやっていそうな娘はいない。それに見ればこのユイという娘はメイクをしている。だから余計にわかりにくかったのだ。
「まあいいや」
いい加減わからなくなってきたので考えるのを止めた。
「考えてもわかりそうにないし。とりあえず会場に行ってみるか」
こう思ったところで結論にしてこの日も寝るのだった。そして休みになってコスプレ会場に行く。同人誌を少し漁った後で女の子達のいる方に向かった。もうそこには女の子達が集まっていた。
「さて、と」
彼はまずはあちこちにいるアニメやゲームのキャラクターの服を着た女の子達を見回す。スタイルのいい娘もいれば奇麗な娘もいる。目の保養としては最高であった。
その中には彼もよく知っている娘もいた。しかし今は彼女達を真面目に見ずにあの女の子を探すのであった。そのユイという娘をだ。
「何処かな」
「あっ、今日はそのキャラなんだ」
「ユイちゃん似合ってるよ」
左手の方からこう声が聞こえてきた。
「あっちか」
その声を聞いてそのユイという女の子を探した。暫く探していると人だかりを見た。その中央に女の子がいるのが見えてもいた。
「彼女かな」
その女の子を見て思った。見れば髪までウィッグで決めている。
「可愛いじゃない」
「可愛いっていうか奇麗だね」
彼女の周りにいる男達が笑顔でこう声をかけているのがまた聞こえてきた。
「金髪がね」
「そうそう」
見ればある有名なRPGの五番目の作品のヒロインである。金髪で後ろはおさげの髪である。緑の服にスカートの出で立ちで有名である。
「スタイルも相変わらずだし」
「有り難う」
「あれっ!?」
啓太郎は今の声を聞いて違和感を感じた。それはここで聞くとはとても思えない声であった。
「まさか」
「最初はどうしようかと思ったのよ」
話しているのはその女の子だった。にこにこと笑っているのもわかる。
「それでもやってみたら皆がいいって言ってくれるから嬉しいわ」
「あれっ、声は同じだけれど」
別人かと思った。あの娘はこんなに笑った声は出さないからだ。それをいぶかしみながらその女の子のところに入る。すると。
「えっ!?」
その女の子が彼の姿を見ていきなり驚きの声をあげたのだった。彼の顔を見て目を丸くさせている。明らかに驚いた顔であった。
「木戸君、どうしてここに」
「俺を知ってるってことはやっぱり」
誰なのかわかった。そういえばそのコスプレネームは。
「由比ちゃん・・・・・・いや高見沢さん!?ひょっとして」
「どうしてここにいるのよ」
そのヒロインの服のまま驚いた顔をしている。顔はメイクであまりわからないようにしていたようだが自分で言ってしまえばもうどうにもならなかった。彼女の自爆であった。
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