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無能騎士の英雄譚

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十一話

 
前書き
過去(後編) 

 
「何なんじゃ、これは…」

サムライ・リョーマすらも、呆然とするほど凄まじい光景

血のように紅い魔力の風が巻き上がる

それを起こした張本人は、サムライ・リョーマを憎々しげに睨みつける

そこで龍馬は気付く……

神の目に……

「(あいつの目……殺す気か!?)」

気付いて咄嗟に一輝を下ろし、固有武装(デバイス)を展開し、構える

直感が騒ぐ……

殺す気で戦わなくば……

死ぬ!

龍馬は姿勢を低くして次の神の行動に全神経を注いで警戒する

「…」

神が、こちらに足を踏み出す

龍馬はさらに姿勢を低くして備えるが、不意に神が前方に倒れ込み始めた

「む…?」

思わず呆然と声を漏らす。

あれだけの力を一気に吐き出したため、神の体に限界が訪れたのだろうか……

まだ子供の体なのだから十分有り得る……

そう思い、神の体を受け止めようと足を踏み出そうとした龍馬だったが、その行動は失敗だったと思い知らされる

「…っ!」

前方に倒れようとした体が、次の瞬間その動きを停止し、神は次の足に力を込めて踏み出すと一瞬にして龍馬との距離を詰める

龍馬が驚き、目を見開いたその瞬間には、神の左手は九宇牙の眼前まで迫っていた

龍馬は大きく上半身を反らせて神の左手を回避する

神が追撃に右手を手刀にして振り上げようとするが、その前に龍馬は神を弾き飛ばそうとする

が━

「なっ…!?」

神を薙ぎ払おうと振るったデバイスが、

"すり抜けた"

龍馬は驚愕する。だが、それだけでは終わらない……

ザシュッ!!

ドサッ……

「んなっ……」

突然の左腕の喪失間に驚き左を向く

そこには……

口に煙管を加え、左肩に一輝を担ぎ……

降り下ろしたような構えをした右手に闇の如く真っ黒な西洋剣を持った神がいた……

●○●○

「……ぐっ……」

ードサッ……

龍馬は左腕を斬り落とされた事による痛みとバランスの崩れによって倒れ込む……

倒れ混みながらも龍馬は混乱していた

「(馬鹿な……どうなっておる!? )」

切り落とされた、だけならまだいい……

自分自身の落ち度なのだから……

だが、それ以上に驚く事がある……

「(何故、固有武装(デバイス)を二つ持っておる!? 其にあの二つは、家の者の固有武装……こやつ、一体……!?)」

そう、神が持っている煙管と西洋剣は黒鉄家の者が使っているものと全く一緒なのである……

実態を持った幻覚だけでなく、記憶すらも操る煙管……"夢見"

そして、"切断"の概念を持つ西洋剣、"デュランダル"……

何故、神が使えるのか……

「……このまま、あの家にいたら、絶対にこいつは壊れる……」

混乱していた龍馬は神の声を聞いた……

「俺はこいつの……一輝の友達だ……魔力が無いだけで差別する様なところに居させたくない、我慢していたけど、もう限界だ……」

そして、言葉を紡ぐ……

龍馬にとって、驚きの言葉を……

「こいつの記憶を操作して、捨てられたことにする。これ以上、あの家にいさせない……あんたの左腕を切り落としたFランクがいるなら、いくら黒鉄家の人間も簡単に手は出せないだろう? もし、手を出したら……」

突然神から溢れ出す殺気……

「……消すぞ?」

そう言って神は去っていった…… 
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