女の子らしさ
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3部分:第三章
第三章
「最近変わったわね」
「そうですか?」
帰り道は優と同じだった。そこで彼女に言われたのだ。
「ええ。髪の毛のばしはじめたのね」
「はい、ちょっと思うところがありまして」
先輩に対して言葉を返す。
「それでなんです」
「そうなの。それで髪の毛をね」
「はい」
「それに」
優が気付いたのはそれだけではなかった。他にも気付いたのである。
「お化粧もはじめたのね」
「駄目ですか?」
「いいわよ。私だってしてるし」
このことについては全く構わないというのだ。今の高校生ならばそれ位は当然だった。見れば彼女にしても確かに化粧している。
「別にね」
「そうですか」
「それだけじゃないわ」
また言う優だった。
「雰囲気も変わってきたわね」
「服も考えてみました」
「女の子らしくね。いいわ」
「いいんですか」
「けれどね」
ところがここで。優はさらに言うのだった。
「女の子らしくするのもいいけれど」
「はい」
「それだけじゃまだ不完全だと思うわ」
「不完全なんですか」
「まだそれだけじゃないの」
こう茉莉也に話していく。
「例えば私には私があるじゃない」
「ええ。それは」
このことは茉莉也にもわかった。彼女にとって優は非常に素晴らしい女性である。ただ尊敬できる先輩というだけではない。だからこそよく見えているのだ。
「その通りです」
「そして茉莉也には茉莉也があるのよ」
「私にですか」
「そう。あんたにもね」
笑って優に顔を向けての言葉である。
「あるから。それも出していけばもっとよくなるわ」
「私をって」
「それは絶対にあるから」
また言う優であった。
「探して。それで見つけるのよ」
「やっぱり見つけるんですか」
「見るのよ」
こうも話すのだった。
「あんた自身をね。いいわね」
「私をって」
そう言われてもわからない茉莉也だった。話を聞いていてもどうしてもわからなかった。
「私にあるんですよね」
「あんたはあんたにしかないわ」
優の言葉は変わらない。
「だから探すのね」
「ええと」
「よく見ていれば見つかるわ」
今はこれ以上は言わない優だった。それもあえて、であった。そうしたことにも茉莉也は今はどうしても気付くことができなかったのだがそれでも言わないのだった。
「見ればね」
「はあ」
「そうなればもっとよくなるから」
優の言葉は優しいままである。その優しさのままの言葉だった。
「いいわね」
「はい。それじゃあ」
何が何なのかわからないまま応える茉莉也だった。だがわからないことに変わりはなくそれが一体どういったものか悩む日々が続いていた。しかしその中で男連中は今日も部活で爽やかな汗を流している彼女に対して笑顔で声をかけるのであった。
「バスケ自体は変わらないんだな」
「相変わらずよく動くな」
「当たり前でしょ。バスケは動くものなのよ」
こう彼等に返す茉莉也だった。
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