FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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勝ってよ!!
前書き
成人式で会社の同期が生クリームまみれになってて焦った。
スーツにまで生クリームついてて一体何が起きたのやら・・・
私?私は真面目な一般人を装ってましたよ(ドヤァ)
その頃別の場所ではまた1つ戦いに終止符が打たれようとしていた。
「影がお前を侵食する。そして永久に消えるのだ」
何かに取り憑かれたように別人へと豹変してしまったローグ。彼は一時はガジルとの戦いで自分たちでは妖精の尻尾の仲間意識には勝てないと判断し敗北を認めようとしていた。しかし、突然自分の“影”に体を乗っ取られ、ガジルを殺そうと激しい攻撃を繰り出し始めたのだった。
先程まで首を掴み持ち上げていた彼はガジルを地面へと落とし自らの魔法である影に取り込ませようとする。
「眠れ、暗闇の中で」
徐々に影の中に沈んでいくガジル。しかし、そんな危機的状況なのに彼は笑っていた。
「火竜にできて俺にできねぇはずがねぇ」
そう言うと彼を飲み込もうとしていた影がその体へとまとわりついていく。
その影は次第に顔へと向かって登っていき、ガジルはそれを喰らう。
「!!」
「ギヒヒッ」
影を食べたガジルは力が戻ってきたのか、ゆっくりと立ち上がる。
「バカな・・・」
「影を・・・食べちゃった・・・」
「さすが。やりおるわい」
「影の属性を吸収したのですね」
ガジルの思いもよらない行動に驚く人々。
「誰だか知らねぇが、そいつの体から出ていけ」
「ローグから?」
ガジルは彼の豹変が何かに取り憑かれたからだとわかっており、体を乗っ取っている何かにそう言う。
「それと・・・そいつの名前はローグじゃねぇ。俺の弟分だったライオスだ」
ローグは幼い頃自分の名前が嫌で別の名前を名乗っていたのだ。シリルに花を渡した時もこのライオスという名を名乗っていた。だからシリルとガジルはローグという名を聞いても誰だかわからなかったのである。
「お前は俺に憧れてたんじゃねぇ。あの頃の俺がそんな男じゃなかったのは俺が一番よく知ってる。お前は、俺を恐れていたんだ」
影の属性を吸収したガジル。彼の姿は先程とは大きく違っていた。
「これは・・・」
対戦相手であるローグのみならず、観客たち全ても彼の変化に息を飲む。
「もう一度思い出させてやる。俺の恐怖を!!」
全身が銀色の鉄に覆われ、目は瞳も何も関係なく白くなっているガジル。さらには全身から高くなった魔力が溢れ出ており、それが身体中を包み込んでいた。
「2つの属性・・・だと?」
「ギヒッ」
驚愕の表情のローグと不敵な笑みを浮かべるガジル。
『さぁ!!これは先が読めなくなってきた!!一体どうなると思いますか?ヤジマさん』
『さすがに予想スようがないね。滅竜魔導士というのは底が知れないからねぇ』
『いやいや、ローグ選手は第三世代の滅竜魔導士ですカボ。まだまだここからが本番だと思うカボ』
最初はガジル優勢で始まったこと対決。その後はローグが突如力を増幅させガジルに止めを刺そうとしたがそれが仇となり逆に彼の能力を引き出してしまった。
「なるほど。鉄影竜といったところか」
ローグは化け物のような変貌を遂げたガジルに対し構える。
ナツやシリルと同様に2つの属性を手にいれたガジルはローグに向かって突進する。ローグはそれを叩き落とそうとしたが彼の前でガジルが消える。
「小癪な!!俺と同じ魔法を」
ガジルはローグの影の力を吸収したことにより、彼と同じように自らの体を影へと変える力を手にいれたのである。
影になりローグの背後へと回ろうとしてるガジル。ローグはその魔力を感じとり居場所を突き止めようとする。
「甘いな。そこだ!!」
ローグは背後から気配を感じ後ろを振り向く。しかし、そこにガジルの姿はない。
「オラァ!!」
「ぐはっ!!」
ガジルは振り向いたローグのさらに後ろへと回っていたのだ。そこから彼に鉄竜棍を打ち込む。ローグは前に倒れそうになるがそれを利用し、体を影へと変換して一時ガジルから距離を置こうとする。
「ギヒッ」
それを見たガジルは同じように影へと変化してローグの影を追いかける。
影になった2人は激しくぶつかり合っている様子。しかし、どうなっているのかは全く誰にも理解できない。
『す・・・すごいカボ!!』
『何が何だかわからんねこりゃ』
『ど・・・どうやって実況すれば良いのでしょうか!?と・・・ともかくすごいことになってます!!』
チャパティたちもどうやってこの対決を伝えればいいのか全くわからず焦っている。そんなことなど知るよしもない2人は建物の柱にまとわりつくように動き回りながら激戦を繰り広げている。
並走する2つの影。そのうちの1つから鉄に覆われた腕が現れてもう一方の影を掴む。
「な・・・何!?影から引きずり出されて・・・ぐはっ!!」
ガジルによって影から引っ張りあげられたローグはその顔に彼の強烈な拳を受ける。
「ギヒッ」
ガジルは後方によろけたローグの頭上からもう一度拳を降り下ろす。その反動で彼らのいた建物の床が抜け、下へと落ちていく。
下方へと移動した2人。ローグは危険を感じ逃げようと影になって離れていくが、追いかけていたガジルからまたしても引きずり出されてしまい、その頭を握られる。
(俺の知らない・・・ガジル!!)
「消えろ!!」
持っていたローグを天井へと投げ飛ばすガジル。投げられた彼はレンガで出来た天井を突き抜けて空へと放り出される。
「鉄影竜の・・・咆哮!!」
ローグへと向かって放たれたブレス。そのブレスの勢いは雲を突き抜けるのではないのかというほどに強烈で見ていた全ての者は言葉を失っていた。
「うああああああ!!」
当然、それを回避する術などローグにはあるはずもなく、彼はブレスをまともに喰らい、やがて地上へと落ちてくる。
ガシャアアアアン
再び天井を突き破ってガジルの後ろに力なく倒れるローグ。ガジルは魔力の消耗が激しかったらしく、大きく呼吸を乱し元の彼の姿へと戻っていた。
『あ・・・ええっと・・・勝負あり!!勝負あり!!』
正気を取り戻したチャパティが2人の戦いに終止符が撃たれたことを伝えると唖然としていた観客たちからも歓声が上げられる。
『勝者!!ガジル!!』
『ろ・・・ローグが負けたカボ!?』
『いやぁ、見事だったねぇ』
『ここで剣咬の虎のサブリーダーを倒したので妖精の尻尾に3ポイント入り55ポイント!!』
ピッと音をたて妖精の尻尾に3ポイントが加算される。これにより1位の剣咬の虎との差は4ポイントと縮まり、3位の蛇姫の鱗とのポイントも4ポイントとなっていた。
シリルside
「リオンさん・・・」
グラシアンさんが次なる変化をしたのはレオンのいとこであるリオンさん。もしかしてこの人は造形魔法対決でレオンを倒そうとしているのか?
「リオンくんに化けたところで魔法をするのはグラシアンだ。リオンくんほどの速度でできるはずない」
「ならばやってみるがいいさ、レオン」
2人はほぼ同時に造形魔法の体勢へと入る。
「アイスメイク・・・・・」
「アイスメイク・・・」
2人の魔力が高まってくるのを感じる。それと比例するように周りの気温が下がっていくのも一緒に。
「大鷲!!」
先に造形を完成させたのはリオンさん。俺の見た感じだとリオンさんと速度もほとんど変わってないし造形のバランスも整っていると思う。作られた鷲たちはレオンの元へと猛スピードで突っ込んでいく。
「スノーホーク!!」
遅れてレオンも造形を完成させる。彼はすぐさま鷹たちを自らに向かってくる鷲とぶつけて相殺しようとするが、リオンさんが鷲たちをうまくコントロールし全ての鷲をレオンへとぶつける。
「ごはっ!!」
レオンは多少体を押されたがなんとか踏みとどまり敵に鷹を軌道修正し同じようにダメージを与えようとする。
「アイスメイク・・・大猿!!」
しかしその攻撃は敵の前に現れた氷の大猿に衝突し打ち消されてしまった。
「マジか」
レオンはリオンさんの造形の速度に驚いている。彼の考えとしてはリオンさんほどの速度は出ないだろうからそこを突こうとしていたのに、ほとんど変わらない上にバランスもほぼ完璧。完全に真似できていると言えるだろう。
「悪いなレオン。だが、それがお前の限界だ」
「っ・・・」
リオンさんは絶対にそんなこと言わないとレオンはわかってはいるのだろうけど、いかんせん声や口調が似ているせいで実は本人もこう考えているのではないかと考えてしまっているようではっきりと、誰の目から見てもわかるほど動揺している。
「アイスメイク・・・白虎!!」
リオンさんはすぐさま氷の虎を作り出してレオンに向かわせる。レオンは反応が遅れてしまい、造形の体勢にすら入ることができずに突進を喰らってしまう。
「ぐはっ!!」
ふらつくレオン。そんな彼に追い討ちをかけるようにリオンさんは攻撃を加えていく。
「アイスメイク・・・蛟!!」
蛇のように細長い体をした4本足の動物がレオンの腹部を捉え、たまらずレオンは地面へと倒れる。
「くっそ・・・」
しかしレオンはすぐさま立ち上がり両手を合わせる。彼は一切諦める様子などなく、ただひたすらに勝負を挑んでいく。だけど・・・
「かなり厳しいな・・・」
「そうだね」
俺とソフィアがそう言う。俺たちすぐそばで見ている人間にはわかる。レオンはリオンさんにとてもじゃないがまともにぶつかり合って勝てるほどの要素が見当たらない。
MPFの時の数値を考えるとパワーに関してはレオンの方が上にいると考えていいだろう。だけど造形の速度、バランス、そして操作の能力。それらを考慮するとレオンじゃとてもとても太刀打ちできる相手ではない。それが例えリオンさんの真似をしているグラシアンさんであっても。
「アイスメイク・・・・・」
恐らくレオンも心のどこかでそんなことはわかっていると思う。だけど彼だって戦わなきゃいけない時がある。自分を支えてくれたギルドの皆さんのために。
「スノーライオン!!」
レオンは得意のライオンの造形で対抗する。それを見たリオンさんは瞬時に次の手へと移行する。
「アイスメイク・・・白虎!!」
レオンが出したライオンとほほ同じ大きさの虎で迎え撃つ。両者共に力がある造形だからなのか、下手に操縦して回避させながら相手に直接ぶつけるということはせず、真っ正面から互いの造形をぶつけ合う。
ガァンッ
ぶつかり合う2人の造形。その衝突に耐えて敵への突進を続けたのは
「ガァァァァッ!!」
レオンの造形だった。
「ほう」
自分の作った虎が打ち砕かれたことに少々驚いているリオンさん。彼は向かってきたライオンを体を横に動かして避けるとUターンして戻ってこようとする前にライオンを氷漬けにしてしまう。
「やるな、レオン」
「それくらいならなんとかできるよ。リオンくんはもっと強いから」
先程倒れた際に顔に付いたドロを拭いながらリオンさんを見据えるレオン。彼的には自分の仲間に化けていられるのが相当嫌なのだろう、声に少し怒気を感じる。
「そうか。だが貴様を攻めるならこいつが一番有効だからな!!」
本物より劣っていると言われてもグラシアンさんはイルズィオーンを続行する模様。
「アイスメイク・・・白虎!!」
またしても虎の造形を行うリオンさん。しかし今回はこれだけでは終わらない。
「アイスメイク・・・大猿!!」
虎とは反対側に大猿を出現させるリオンさん。
「アイスメイク・・・スノードラゴン》!!」
2体同時造形というだけでもすごいのにリオンさんは他の2つの属性を軽く凌ぐ大きさのドラゴンも完成させる。
「これってカグラさんと戦った時にやった・・・」
ソフィアの言う通り、4日目のトリプルバトルでリオンさんがカグラさんとの一騎討ちに臨んだ際に使用した3体同時造形。これはかなりの魔力を消耗するはずなのに、それを簡単に再現できるとは・・・
「お前はこれを避けることができるか!?」
3体の氷の造形たちが一斉にレオンに襲いかかる。最初の一撃目は全ての造形が一点に迫ってきていたこともありレオンは高くジャンプしてその攻撃を避ける。
「ふっ!!」
それを見たリオンさんは次は攻撃のパターンを変えてみる。空中から地面に着地したレオンに虎だけを向かわせ、レオンはそれを横にステップして回避した。だがそこにリオンさんは大猿を突進させ、レオンは反応できずに後方へと弾き飛ばされる。
第三者side
「レオン・・・」
魔水晶ビジョンを見上げて映像に映る少年の名前を呟くラウル。
一度攻撃が決まったことにより流れが完全にグラシアン側にいってしまったのか、次々に彼の攻撃が敵であるレオンへと決まっていく。
「がはっ!!」
なす統べなくただ打ちのめされていくレオン。
『これは一方的な展開になってきた!!レオン選手!!リオン選手・・・もとい、グラシアン選手の猛攻に手も足も出ない!!』
口の中が切れたのか、はたまた内臓にダメージでも来たのか、レオンは口から血を垂らしている。
グラッ
そしてついにレオンは力尽きたのか、顔から地面に落ちていこうとする。
「まだだ!!」
しかしそれをリオンは許さない。レオンの腹部にドラゴンの頭突きが入ると、彼は無理矢理立たされた形になってしまう。
「王者としてこれで終わらさせることはしない!!どこまでも追い詰めてやるぜ!!」
見た目や声はリオンだが口調は完全にグラシアンに戻っている。グラシアンは相手をいたぶるのが楽しくなってきたらしくサンドバックのようにレオンに次々魔法攻撃を当てていく。
「もうやめろよ!!やりすぎだ!!」
「レオンが死んじゃうよ!!」
「うるせぇ!!」
見ていることしかできないシリルとソフィア。2人がすでに気を失いかけているレオンへの攻撃をやめさせようとするがリオンは彼らの方を鬼のような形相で睨む。
「こっちはレクターがかかってんだ!!そのためには手段なんか選んでちゃいけねぇんだよ!!」
そう言うとグラシアンはリオンからミネルバへと変化し、シリルとソフィアがそれぞれ入っている球体に腕を向ける。
「王者は勝たねばならぬ。そのためには手段は問わん!!」
ミネルバはそう言うと2人の球体を爆発させる。ただし、その球体が壊れないようにであるが。
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
球体の中で倒れ込むシリルとソフィア。グラシアンは2人の口を封じたことで満足したのか、ミネルバからリオンへと姿を戻す。
「余計なことを言うな。俺はお嬢とは違う。きっちりお前ら全員に勝ち切ってやる!!力を示すために!!」
グラシアンはそう言うとレオンの方へと体を向き直る。目の前にいる金髪の少年は立っているのもやっとの状態でその場にただいるといったか感じになっている。
「辛そうだな、レオン」
「・・・」
レオンは血が流れ出ている脇腹を押さえるだけでグラシアンの言葉には答えない。
「お前には悪いが・・・キセキたちとフロッシュのために俺は如何なる手段を使おうとも・・・必ず勝利する!!」
迷いを捨て去り勝利へとひた走るグラシアン。対するレオンはすでに諦めムードを漂わせていた。
(やべぇ・・・もう体の感覚がねぇ・・・)
グラシアンの度重なる攻撃でもはやグロッキー状態のレオン。
(こんなことなら・・・大魔闘演舞なんか出場しなきゃよかったなぁ・・・)
実はレオンは昨年も大魔闘演舞の選手に選ばれていた。しかし、大会直前のイップスにより土壇場での選手交代。今年も完全に心の傷を癒せていなかった彼は大魔闘演舞に出るつもりはなかったが、蛇姫の鱗のマスター、オーバに言われた『チョコバナナ食べ放題』に釣られて出場してしまったのである。
序盤はジュラと組んでいたことが効を奏し着実に得点を重ねることが出来た。しかし、4日目のバトルパートでリオンと組んだことにより造形の欠陥を露呈し絶対的有利な状況から引き分けに持ち込むのがやっと。
今日に至っては生き残っている蛇姫の鱗のメンバーの中で唯一得点を上げれていない。出場してしまったことに対する後悔だけが彼の中にあった。
(ごめん・・・リオンくん・・・シェリア・・・ラウル・・・みんな・・・)
遠退いていく意識。その中で彼は迷惑をかけ続けた仲間たちに謝罪し、崩れ落ちていこうとした。
「レオン!!」
そんな彼を見てドムス・フラウのある場所から大きな声が挙がる。
「ラウは全然気にしてない!!ラウはレオンが大好きなの!!魔法を一生懸命にやって戦ってるレオンが大好きなの!!」
大声を挙げたのは彼が滅神魔法を使えなくなってしまった原因ともいえるラウル。彼は目に一杯の涙を溜めて叫んでいた。
「お母さんが死んじゃったのはレオンのせいじゃない!!ラウが悪いの!!でも・・・もしそれを気にしてるんだったら・・・ラウたちのために勝ってよ!!」
現在レオンがグラシアンと交戦している場所はラウルたち応援者がいるドムス・フラウから少なく見積もってもキロ単位の距離がある。どう考えてもそんな声など聞こえるはずはない。
しかし、ラウルのこの心の叫びが今にも倒れ、戦闘不能になりそうだったレオンを・・・
ガガッ
踏み止まらせた。
後書き
いかがだったでしょうか。
そろそろグラシアン対レオンは終了する予定です。
たぶん次で新たな展開に移行していけると思います。
次回もよろしくお願いします。
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