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素直でないバーテン

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第五章

「喋らないし」
「流石にあんな変態的な人じゃないでしょうけれど」
「何があっても生きてるみたいな」
「エボラになってもホテルの屋上から飛び降りても」
「どんな状況でも仕事を果たすとか」
「そうした人じゃないと思うけれどね」
「またあの主人公は特別だから」
 原作者の理想のキャラなのかも知れない、しかしそのあまりにも独特なキャラが他の作者の作品でパロディで出た時には必ずいじられいじめられている。
「あの人はね」
「それこそね」
「普通でしょうね」
「幾ら無愛想でも」
「あんなサイボーグじゃないわよね」
「そうでしょうね、とにかくね」
 あらためて言う桜だった。
「あの無愛想、無表情は凄いわね」
「動きもね、機械的に見えてきたわね」
「出来る分だけね」
 こうしたことをだ、桜達は話しながら飲んでいたが。
 ここでだ、その彼のところにだ。
 一人のまだ大学生と思われる可愛い娘、必死に背伸びをして大人のメイクと服で飾った感じの彼女がだ。彼のところに来てだった。
 彼にあるものを差し出した、それは。
 プレゼントだった、小さな箱を奇麗な布で包んで可愛らしいピンクのリボンで縛っている。結びは蝶々だった。
 彼にそのプレゼントを差し出してだ、女の子は言った。
「あの、これ」
「何でしょうか」
「はい、受け取って下さい」
 こう言うのだった。
「プレゼントです」
「そうですか」
「お願いします」
 女の子は必死だった、その様子を見てだ。
 桜達はこれまで以上にひそひそとだ、顔を見合わせて話した。光景を横目で見つつ。
「どうなるかしら」
「これは思わぬ展開ね」
「そうね、ちょっとね」
「まさかああした娘が出て来るなんて」
「大学生か専門学校生みたいね」
「あのバーテンさんが好きなのね」 
 このことをだ、桜達は直感として感じていた。
 そしてだ、こう話すのだった。
「けれど受け取ってくれるか」
「サイボーグみたいなのに」
「果たしてね」
「そうしてくれるかしら」
「受け取らない可能性も高いわね」 
 かなり真剣な顔でだ、桜は言った。
「正直なところ」
「あの無愛想さじゃね」
「その可能性も高いわね」
「実際のところね」
「そうよね」
 同僚達も頷くのだった。
「ちょっとね」
「受け通ってくれるか」
「そこは微妙ね」
「受け取らない可能性も高いわ」
「ここはハッピーエンドになって欲しいけれど」
 こうも言った桜だった。
「けれどね」
「相手が相手だから」
「あんなに無愛想だから」
「今も態度が素っ気ないし」
「望みが薄いかも」 
 同僚達も言う、だが期待しつつことの成り行きを見ていた。
 女の子は必死だった、プレゼントは両手に持っていてその手が震えてさえいた。そのプレゼントを。
 バーテンダーは受け取ってだ、こう女の子に言った。
「有り難うございます」
「受け取ってくれるんですか」
「はい、ただ私交際相手がいますので」
「はい、ただのプレゼントですから」
「わかりました」
 バーテンダーは無表情のまま答えてだった、そして。
 女の子にだ、あらためて言った。
「ではプレゼントをお店の奥に持って行きます」
「プレゼントはケーキです」
「食べものですか」
「召し上がって下さい」
「わかりました」
 淡々とした口調での返事だった、そして。
 彼は実際にだ、そのプレゼントを持ってだった。 
 店の奥に消えた、桜達はその一部始終を見てまた仲間内で話した。 
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