死んだ目
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第二章
「それでね」
「行くんだな、ベルリンに」
「あの街に」
「そうしたいんだね」
「そうなんだ」
こう友人達に言うのだった。
「だからこの目で見てくるよ」
「共産主義をだね」
「その素晴らしさを」
「その目で見るんだね」
「思えばね」
ここでだ、グラッグスは残念そうにこうしたことも言った。
「ソ連は前に知識人を招待していたね」
「世界各国からね」
「そしてありのままのソ連を見せていた」
「そうしていたね」
「その時希望したけれど」
しかしというのだ。
「つてがあってもね」
「行けなかった」
「こうしたことも縁だから」
「だからだね」
「そうなんだ」
その時のことを思い出してだ、残念な声で言ったのだ。
「今思っても残念だよ」
「けれどだね」
「今回は最高の機会が来た」
「ベルリンに行って観ることが出来る」
「その共産主義をだね」
「解放されたベルリンから」
「うん、見て来るよ」
実際にとだ、彼は答えてだった。
飛行機それも軍が彼や他の政治学者達の為に用意したそれに乗ってだ。ニューヨークからだった。
ドイツに向かった、彼は飛行機の中でうきうきとして言った。
「楽しみですね」
「はい、戦争が終わりました」
「我々の勝利で」
「勝利を収めた戦士達を見られますから」
「英雄達も」
「いえ、そうではなく」
グラッグスは共に機内にいる彼と同じ学者達に答えた。
「ベルリンに行けるので」
「あのソ連軍が解放した」
「あの街にでるか」
「行けるからですか」
「はい」
だからだとだ、笑顔で答えるのだった。
「楽しみです」
「そうですか、貴方はですか」
「あの街に行かれるのですか」
「ベルリンに」
「そうです」
こう答えたのだ。
「まことに」
「ですか」
「何でも廃墟らしいですが」
「攻防戦で」
「それは仕方ないですね」
戦乱で廃墟になっている、そのことはというのだ。グラッグスもそのことは既にわかっている。戦争がどういったものかは。
しかしだ、それでもこう言ったのだ。
「しかしです」
「それでもですね」
「戦乱があっても」
「それでも」
「はい、ソ連軍は勝って」
子供の様に純粋に輝いている目で言うのだった。一人の若い将校に対して。
「解放されましたね」
「解放、ですか」
だが、だった。
「そう思われますか」
「?何か」
「ベルリンに行かれればわかります」
その時にというのだ。
「その街に」
「解放されたベルリンにですね」
「そうです、ベルリンに行かれたいのですね」
「はい」
その通りだとだ、グラッグスは目を輝かせて答えた。
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