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指切りげんまん

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第二章

 そうした話からだ、二人はこんなことも約束した。今度は良美から十和子に対してこんなことを言った。
「ねえ、阪神のこともだけれど」
「何かあったの?」
「うん、私達友達よね」
「友達だから?」
「お互いにね」
 それこそというのだ。
「助け合おう、お互いに困ったらね」
「その時はなのね」
「助け合おう」
 そうしようというのだ。
「是非ね」
「それじゃあね」
「そう、そのこと約束しようね」
 良美からまた言った、今度は笑顔で。
「指切りして」
「指切りげんまんね」
「うん、それで約束しよう」
「そうね、じゃあ」
「今からね」
 二人はお互いに手を出した、その小指を。
 そして小指と小指を絡め合わせてだ、二人同時に言った。
「指切りげんまん」
「嘘吐いたら針千本飲ます」
「お化けが出て来て襲われるわよ」
 最後の言葉は二人がいつも言っていることだ、こう約束してだ。
 二人はその日笑顔で遊び合った、そしてこの日からだった。
 二人は実際にお互いを助け合った、それは小学校に入っても中学校に入ってもだ。高校も同じ高校でそこでもだった。
 仲良く友人同士だった、部活は同じ美術部だった。その美術部でだ。
 十和子は良美にだ、困った顔で話した。十和子はふわりとした黒髪を肩まで伸ばした大きな黒目がちの目を持つ小柄な少女になっていた。良美は髪の毛を後ろだけ腰まで伸ばし茶色に染めている吊り目の長身の少女になっていた。
 その十和子がだ、良美に言ったのだ。
「ねえ、いい?」
「どうしたの?」
「うん、良美ちゃんだけに言えるけれど」
 こう前置きしての言葉だった。
「実は私好きな人いるのよ」
「あっ、よかったじゃない」
 良美は十和子の告白を受けて明るい顔になって返した。
「十和子ちゃんにもそうした人が出来たのね」
「そうなの、けれどね」
「わかるわ、告白はよね」
「それが出来ないのよ」
 困った顔での言葉だった。
「どうにもね」
「よくある話だけれど」
「自分はそんなことはないって思ってたのよ」
 難しい顔での言葉だった。
「それでもね」
「いざ自分がそうした時になったら」
「そうなの、戸惑ってね」
 そしてというのだ。
「告白しようにも出来ないのよ」
「それで私になのね」
「相談したいんだけれど」
「いいわ、私でよかったらね」
 良美は微笑んでだ、十和子に答えた。
「話してみて、それで誰なのその好きな人は」
「サッカー部の竹内さんだけれど」
「えっ、竹内先輩!?」
 その名前を聞いてだ、良美は。
 聞いたその瞬間にそれまで微笑んでいた顔を曇らせてしまってだ。そのうえで十和子にこう言ったのだった。
「あの人はまずいわよ」
「まずいっていうと」
「女好きでもう見境がないから」
「えっ、そんな人なの」
「しかもね」
 さらに話す良美だった。
「あの人を好きな人がいて」
「その女好きの人を」
「これがまたややこしい人なのよ」
「ややこしいっていうと」
「その竹内先輩を自分だけの彼氏だって思っていて」
 それでというのだ。
「先輩に言い寄ってるって思った人には何をするかわからないのよ」
「その人も先輩?」
「そう、三年のね」 
 良美は学年についても話した。
「その人も厄介だから」
「近寄らない方がいいのね」
「そう、止めた方がいいわよ」
 絶対にという口調での言葉だった。 
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