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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第八章 反転
  第9話 崩れ去る希望

 
前書き
年明けにもう一話投稿したいな 

 
DEMインダストリー社にて。



そこでは、

パリン!という独特の音がDEM社5階にて響いていた。

斬撃を飛ばせる剣の根本は魔術だ。ならば幻想殺しを使えば、それを無効化できる。

しかし、進んでも進んでも出てくるのはその特殊な剣を持った……増援と思われる人ばかりだ。

上条「くそっ、何人いるんだよこいつら!」

士道「ど、どうするんだ!?」

美九「全く、仕方ありませんわねぇ」

と、美九が二人の前に一歩踏み出し、



ワッ!!と大声で叫んだ。







破軍歌姫(ガブリエル)




その『声』を聴いた者は突然、まるで魔法にかかったかのようにその場に崩れ落ち、眠ってしまった。

もちろん士道と上条には効かなかったが。

上条「………流石だな」

美九「グズグズしないでくれますかぁ?さっさと十香さんと涙子さんを助けるんでしょ?」

上条「あ、あぁ」

士道「………ん?琴里は大丈夫なのか?」

先ほどの『声』を聴いていたのならば、彼女達も眠っている可能性が……

琴里『一応大丈夫よ。美九が『声』出す直前にそっちと音を切断したから』

士道「よかった……」

琴里『やるならやるって言って欲しいわね。ヒヤヒヤするじゃないの』

士道「ハハハ……」

この間にも三人は駆け足でその場を駆け抜け、階段を確実に上がっていく。

しかし、やはり現れる増援。行こうとする前に立ちふさがるので、とても面倒だ。

上条「じゃあ、今度は俺の番かな」

と言って、上条は手を前にかざした。

士道は何をしているんだ……と思いながら見ていると、何もないところから白い弦が出現した。

それを手にとって、また何もないところから白い弓を取り出して、それをめいいっぱい引いた。

上条「これには名前が付いてないんだけど、あえてつけるとしたら……」

と、呟きながらその言葉を口にした。




上条「『颶風騎士(ラファエル)』」





弓を離すと同時に、それは凄まじい勢いで放たれ、斬撃を飛ばせる剣″だけ″を確実に破壊していく。

その弓は一直線に放たれたはずなのに、まるで操られてるかのように剣を狙って動いている。

十秒ほど経つと、その弓は自然と消えていった。

士道「な……なんだ今の」

上条「あれは幻想殺しの″記憶″から創り出した魔術だよ……まあ模倣に近いけどな」

士道「え?どういうことだ?」

上条「右手で打ち消した魔術はその魔法式……みたいなものを″記憶″して、それを活用したり出来るんだ」

士道「マジで!?じゃあ今までの……十香や四糸乃の力も使えたりするのか!?」

上条「いや、無理」

士道「え?何で?」

上条「使えるのは一つだけなんだ。魔法式を記憶しても、″こっちの方が使える″という認識だけでもう片方は捨ててしまうんだ」

士道「えーっと……」

士道は分かった分からないような曖昧な顔をした。

例えばの話。

ボールが異能の力だとする。

上条当麻は既に自分のボールを持っているとする。

その時、違うボールが飛んできた(幻想殺しで異能の力を打ち消した時)

二つのボールを見極めてどっちが綺麗だとか、どっちが使いやすそうとかを決める。(異能の力だと、使いやすさや応用性などで決める)

幻想殺しを持つ右手は一つしか無いので、片方は切り捨てなければならない。


こういうことが実際の幻想殺しの中で起こっていた。



それを使うキッカケを作り、能力の識別を行っているのは園神凜祢だ。



美九「でもこれじゃあ根本的な解決になってませんわよぉ?」

そう、これでは剣を奪ったものの、それを操っていた本人たちはピンピンしている。

上条「ま、まぁ突っ切っていけばなんとかーー」

士道「!?」




と、その時気づいたのは士道だけだった。






背後から自分たちを狙ってくる奴がいる……それも斬撃を飛ばせる剣を使って。

この時士道は直感で思った。

これは、マズイと。

美九と上条はそちらに完全に気づいていないから、マトモに喰らえば三人ともタダじゃ済まないだろう。

士道「(なんとか……!)」

と、願うも自分には何も無い。精霊の力を封印するだけであり、それ以外は普通の高校生だ。

そして上条とは違い、こういう危機的状況にも慣れていない。

その間にも向こうは魔術を発動させ、こちらに攻撃しようとしている。



美九「適当過ぎませんかー?」

上条「って言われてもよ、俺には右手以外何も無いし……」



声を出そうにもーーこんな時だからだろうかーー声が出なかった。

まるで他人に助けを求めるのではなく、自分で道を切り開けと言わんばかりに。

士道「(……頼む、)」

心の中で、そう呟いた。

士道「(力が……上条と美九を……いや、みんなを守るだけの力が欲しい!!)」





そう、″願った″。







その時だった。





″何かに応じた″ように右手に、少し前に見たことある剣が顕現し、それを無意識の内に振り下ろしてみせた。


刹那、振り下ろした時の衝撃により斬撃は勿論、それを飛ばした本人や周りにいた仲間まで吹き飛ばし、壁にぶつけて気絶させた。

その音に反応した上条と美九は今の士道の姿を見て驚愕した。

最初、何が起こったか分からなかったが、剣をよく見るとその正体がハッキリした。



美九「な、何ですかそれはぁ!?」


上条「士道……それ、まさか」


士道「あぁ。十香の鏖殺剣(サンダルフォン)だ」


あの時の修学旅行以来だろうか。

一ヶ月ほど経って、またお目にかかれるとは思ってもみなかっただろう。

上条はニヤリと笑って、自分の前にいる剣を削ぎ落とされた増援たちの方を向いた、

上条「だったら、あいつらも吹っ飛ばしてくれないか?」

士道「あぁ!」

魔術を使えるとはいえ所詮は増援。

魔術の知識が無い彼らはその剣を扱うこと以外の魔術は出来ないのだ。

だから、剣さえ奪ってしまえばただの人間。



なので。



士道「はああああ!!」



「「「うがぁぁぁ!!!?」」」



いとも簡単にやられてしまう。




士道「この調子でどんどん行くぞ!」

上条「おう!」

美九「………もう、調子が良いんですからぁ」


少しずつ。


美九は士道と上条に対して心を開いていった。




ーーーー
ーーー
ーー




敵が多かったのは最初だけであり、そのあとはスムーズに階段を登って行けた。

トラップらしきものも見当たらず、上条達は駆け足で十香達がいる場所へと行く。

上条「……で?十香と佐天さんはどこなんだ?」

士道「……さあ?」

美九「……バカすぎませんかぁ?それぐらい調べてから乗り込みなさいよぉ」

「「面目ない……」」

琴里『どーせ、そんなことだろうと思ってこっちで調べておいたわ。そこの階段を上がって左に曲がった突き当たりよ』

士道「お、流石琴里だな」

琴里『士道が無能なだけよ』

士道「…………返す言葉もない」

琴里の助言を受けて三人は階段を上がり、左に曲がった。

進むと、そこには一際目立つ大きい扉があった。

士道「ここか……」

上条「……どうする?入るか?」

美九「当たり前ですー!何のためにここまで来たと……」

上条「あ、いや……いきなり奇襲とかきたらーとか……」

士道「それでも、ここで立ち止まるわけにはいかない」

それには三人も同意だった。

ゆっくりとドアを開けていくと、同時に眩い光が三人を襲った。



ーーーー
ーーー
ーー


そこは、真っ白な空間だった。壁には白く塗られた正方形のタイルみたいなものが敷き詰められて壁を作っている。

辺りを見回すと、そこには……

士道「十香!!」

上条「佐天さん!」

探し求めていた二人がそこにはいた。十香は電子コードが絡まった椅子に座っていて、佐天はその反対側で床に倒れていた。

上条「大丈夫か、佐天さん!?」

なんというか、少し変だった。

上条が佐天の方に近寄って状態を確認した。服は所々破け、かなり乱れているのに身体は傷一つついていなかった。

おまけに。

佐天「………スー……スー」


気持ち良さそうに寝ているではないか。

上条「大丈夫……なのか?」

まあ本人は寝ているだけなので大丈夫だなのだろう。


と。



士道「十香!!?十香ぁぁぁ!!!」

佐天とは反対側にいた十香の方へ向かった士道が大きな声で叫んでいた。

上条「どうした!?」

士道「十香が起きないんだ!それに、なんかここには変な″壁″みたいなのがあるし……」

上条「″壁″、だと?」

気になったのか、美九が士道の方へ向かい″壁″に触った。

それは薄い緑色のような膜であり、その膜はこの部屋を真っ二つに分けているようだった。

美九「……どういう原理かは分かりませんが、かなり強力です。でも、″こちら側″の力とは少し違うような……」




「えぇ。あれは魔術ではなく科学の力ですよ」



と。



それに答えたのは上条でも士道でもなかった。

先ほど自分たちが入ってきたドアとは別のーー隠し扉のようなところから一人の女性が現れた。

それは今後忘れることのない顔であり、″最強″を名乗る魔術師。


上条「エレン……メイザース」


絞るような声でその名を呼んだ時、エレンはニヤッと笑った。

エレン「不思議ですね。そこに横たわっている彼女もそうですが……貴方達も不思議です」

士道「どういう、ことだ……?」

エレン「知らないならまだしも、私という″最強″がいる所に何の力もない貴方達がそこの二人を助けるために生身の身体で進入してくるとは……」

心の底から呆れるような声を上げているエレン。だがエレンの言っていることは正論だ。言い返せることなど何もない。


と、ここで気づいた。


上条「一方通行は……?あいつはどうした!?お前と戦ってたはずじゃ……!」

エレン「あぁ、彼なら一応倒しておきました。まあ向こうは本気を出していなかったのであの程度では殺られるはずがありませんけど」

上条「……」

言い方からして、エレンも本気を出していなかったのだろう。本当に化け物だ。

美九「それでー?貴方は何しにここに戻って来たんですかぁ?」

そうだ。本気で戦ってきたならもっと時間がかかるはずだし、一方通行を生かす理由もない。

ならばどうして……と思った時に返ってきた言葉はすごく簡単なことだった。

エレン「アイクを守ることが私の仕事ですから」

最強の魔術師を従えさせるアイクという奴の顔が見てみたいものだ、と上条は思った。

その思い?が通用したのか、エレンが出てきた扉から一人の男性が入ってきた。

くすんだアッシュブロンドに、長身。そしてどこかの猛禽の類を思わせる鋭い双眸が特徴的な男である。

士道「アイザック……ウェスコット」

そう。DEMインダストリー業務執行取締役、アイザック・ウェスコット。テレビや新聞を見ていれば一度は耳にしたことのある名前だ。上条は知らなかったが。

ウェスコットは大仰な調子で首肯した。

アイク「よく来てくれたね。〈ディーヴァ〉にーー」

と、美九に視線をやり、次いで士道に目を向けた瞬間、言葉を止めた。

訝しげに眉をひそめてくる。

アイク「君は何者だ……?まさか……いや、そんなはずは……」

その行動に士道は首を傾げたが、眉をひそめつつも返した。

士道「俺は五河士道だ!ここにいる十香を助けに来た!十香を解放しろ!」

そう叫びながら〈鏖殺剣〉の先をウェスコットの方へ向ける。

アイク「君が……イツカ、シドウ……精霊の力を扱うことができる少年……なるほど、そういうことか……。滑稽じゃないか!結局……『あの女』の手のひらの上だったというわけだ!」

突然高笑いし始めるウェスコットだったが士道は警戒を強め、柄を握り直した。

美九「何なんですかー?だから男の人は嫌いなんですよぉ」

上条「いや、男は関係ないと思うが……」

と。

やっと。

ウェスコットが上条の存在に気づいた。

士道に気を取られていたせいで、少し離れた位置にいる彼に気づかなかったのだ。

アイク「君は………?」

上条「え?俺か?俺は上条当麻だけど……」

アイク「カミジョウ……?まさかあの『神淨の討魔』か……?」

その名は、何度か魔術師から聞いた名前だった。

恐らく自分自身のことを指しているのだが、上条はその意味も知らず、どうしてそんな通り名で伝わっているのかはよく分かっていない。

アイク「くくく……なるほど、奴は″目覚めさせる気″だな……」

この言葉には流石に首を傾げた。一体誰のことを指して、どんな事をしようとしているのか全く意図できなかった。

士道「おい、早く十香を解放しろ!」

業を煮やしたのか、士道はイラつきを交えながらウェスコットに叫んだ。

アイク「嫌だと言ったら?」

士道「力づくでやらせるまでだ」

アイク「君に出来るとでも?」

士道「やってみなきゃ分かんないだろ?」

言うと士道は力を込めて〈鏖殺剣〉を握り前へと駆け出す。

上条「っ!?やめろ士道!!」

士道を止めるべく、上条も前へと飛び出す。

確かに十香を助けるべきだが、圧倒的に戦力負けしている。流石の上条もこんな理不尽を前にいきなり前へ突っ込んだりはしない。

どう交渉すべきか迷っていたというのに………その考えは全て水の泡になった。

士道「はぁぁぁ!!」

アイク……の前にいるエレンに勢いよく斬りつける。

刹那、キン!という金属と金属がぶつかり合った音が響き、エレンと士道の力比べになった。

だが力比べで士道が勝てるはずがない。

顔が強張る士道に対してエレンには余裕が見える。

士道「くっそぉぉ……!」

エレン「無駄ですよ。いくら足掻いても」

と。

突然横から弓が飛んできた。

エレンは咄嗟に気づき、士道を力で追い払い弓を斬りつける。

斬りつけられた弓はフッと空気中に消えていった。打った本人はもちろん。

上条「くそっ……どうなっても知らねーぞ!」

エレン「面白いですね。あの時の決着でも付けますか?」

上条「……いいぜ、やってやるよ!」

上条は幻想殺しを覚醒させて両手首に青いリングを出現させる。

凜祢『やっと私の出番だね』

上条『頼むぞ、凜祢』

凜祢『お任せあれっ!』

……少し緊張感の無い会話に聞こえるが、これはお互いが信頼し合ってる証拠でもある。

すると、エレンが凄まじい勢いで上条の方へと向かう。

それを何とか避けて逆に殴りにかかる。

勿論避けられるが、エレンのカウンターにも対応し、互角の勝負を見せている。

通常の人間なら対応できないスピードだが、上条の今までの経験と、凜祢の素晴らしいアシストにより何とかエレンのスピードについていっている感じだ。

凜祢は(この時だけ)上条の身体を操作することもできる。そして凜祢には360°全ての方角が見えているので、背後からの攻撃にも対応でき、無理やり上条の身体を動かして避けさせたりもできる。

勿論、無理やり動かして逆に攻撃を食らうこともあるし、ダメージを受けるのは上条自身だ。凜祢にはダメージがないため、リスクがあるのはお互い承知のはずだ。

それでも上条が凜祢に身体を預けるのには相当な信頼がないと不可能だろう。



上条とエレンが戦っている間に、士道は立ち上がった。

上条が目線だけで伝えた作戦に、士道はコンマ1秒以下のスピードで頷いた。

二人の混戦の間に士道がウェスコットを斬り付ける。

それが今回の作戦。

士道「(十香を……返してもらうぞ!)」

気づかれてはいけない。だから全力で駆け出す。

ウェスコットは士道がこちらに向かっているのにも関わらずポケットに手を突っ込んだままだった。

そして。

士道「はぁぁぁ!!!!」

ウェスコットに斬り付ける。






その時だった。




十香「……………ん?なんだ、ここは……?」





ブスリと。

誰かの身体に何かが刺さる音が聞こえた。


ーーーー
ーーー
ーー



頭がクラクラする中、一生懸命何が起こったのか思い出す。

十香「そうだ、確か涙子が助けに来てそれで……」

ハッと顔を上げると……そこには目を疑う光景があった。










夥しい赤い血が壁を塗りつけていたのだから。











その血の持主はーーー













目の前でエレンに刺されている士道のものではないか?












十香「し、ど…………う?」

その声に、士道は身体を震わせながら目線だけこちらに向けた。


士道「と……お、か……っ!」



搾り取るような声で彼女の名前を呼ぶ。


エレン「しぶといですね」


さらに深く、剣を刺す。

同時に士道の口から吐き出た血がエレンの顕現装置を赤く染める。


上条「なっ………!!?」

美九「嘘……ですよね、……?」


上条と美九も驚きを隠せなかった。

先ほどまで戦っていたエレンがいなくなったと思えば、いつの間にか士道を刺していたのだから。

エレン「アイクに向ける剣は全て私が斬ります」



やっと。

状況を把握した。



身体中傷だらけの上条。

上条と士道についてきたと思われる美九。

奥で気を失っている佐天。



そして。



目の前で虫の息になっている士道。




十香「あ………あぁぁ……」



無意識に言葉が漏れる。

自分の中で、何かが壊れ始める。




何かを感じ取ったのか、エレンは刺していた剣をブスリと引き抜く。

それと同時に、士道の身体がドサっと投げ捨てられる。






キッカケには、十分だった。








捕まった自分を助けようとしたがために、こんな自体を振りまいてしまった。

自分が未熟だから。

弱いから。

力が足りないからーー






















ーー天使だけでは、足りない。























十香「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーッ!!!!」


その、瞬間。

意識がふっ途切れるのと同時。十香は、右手に、天使以外の何かを握る感覚を覚えた。

否。もしかしたら、それはーー








何かに、握られる感覚だったのかもしれない。








 
 

 
後書き
今回は少し長めでした。

とうとう十香が反転しました!内容的にはアニメの二期が終わる頃ですねー。

あ、本文ではウェスコットとアイクと使い分けています。ややこしくなるかもしれませんがご了承くださいませ。

あと、アイクが言っていた『あの女』というのはデート・ア・ライブの伏線ですので(予想はしてますが)作者も誰のことか分かりませぬ(・_・;

でも後に大きく関わりそうなので一応書いておきました。そういう事でよろしくです。

次回は佐天さんも目覚めるよ! 
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