戦国異伝
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第二百三十六話 生きていた者達その一
第二百三十六話 生きていた者達
長政は小谷城でその話を聞いてだ、すぐにだった。
周りにいる家臣達にだ、こう言った。
「これより兵を安土に入れるぞ」
「すぐにですか」
「そうされますか」
「そのうえで安土を守る」
こう己の家臣達に話した。
「わし自ら安土に入る、この城の守りは任せた」
「まさかと思いますが」
「上様に何かありましたか」
「それでなのですか」
「そうじゃ、義兄上の生死は不明じゃが」
しかしというのだ。
「間違いなく生きておられる、そして安土に向かわれておる」
「だから上様が安土に戻られるまで」
「それまでは、ですな」
「安土城をお守りする」
「そうされるのですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「ではよいな」
「はい、ではです」
「留守はお任せ下さい」
「小谷は我等がお守りします」
「殿はすぐに安土に向かわれてください」
「うむ、安土には船で行く」
こうも言うのだった。
「それが一番速く着くからな」
「だから船をですか」
「いつも用意されていましたか」
「この時に備えて」
「そうされていたのですか」
「そうじゃ」
ことが起こった時に備えて、というのだ。
「今がまさにその時じゃ」
「時が来たからこそ」
「行かれそして」
「守られますか」
「そういうことじゃ。では武具を持って参れ」
長政のそれをだ、こうも告げてだった。
彼はすぐに戦の身なりになって出陣した、浅井家の中でも精鋭達を連れて安土に向かうことにした。その時にだった。
彼は出陣の時にだ、見送りに来た市に微笑んでこう言った。
「義兄上をお助けに行く」
「はい、ご武運を」
「ではな」
「兄上のことはご安心下さい」
至って落ち着いている顔だった、市も。
そのうえでだ、自分達の周りにいる四人の子達を見て言った。
「子供達は私が守ります」
「うむ、頼むぞ」
「安土の城には平手殿がおられますね」
「その平手殿から文が来た」
支給安土に来られたしとだ、平手も話を聞いてすぐに動いたのだ。
「平手殿の文を読む限り落ち着いておられる」
「兄上がご無事だとわかっておられるのですね」
「その様じゃ」
「それでは」
こうしてだった、長政はすぐに船に乗って安土城に向かった。そしてだった。
その安土城に城の裏側の港の方から入ってだ、出迎えて来た平手に問うた。
「それで義兄上は」
「はい、都は明智の軍勢のものとなりましたが」
「それでもじゃな」
「おそらく間もなく」
こう長政に言うのだった、城の中の部屋で。
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