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真田十勇士

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巻ノ二十四 鎌倉その七

 伊佐はしみじみとしてだ、こんなことを言った。
「栄えるものは」
「必ずな」
 その伊佐に望月が応えた。
「衰えてな」
「そして消えます」
「平家物語か」
 筧も嘆息する様にして言った。
「あれは平家と義経公で終わったが」
「結局頼朝公の血筋も消えて」
 海野も今はしみじみとしている。
「そしてその後の北条氏もじゃ」
「幕府を動かす様になったが」
 望月も言う、北条氏が将軍を神輿にして幕府を取り仕切る様になったことも含めて。
「しかしな」
「北条氏は滅び幕府もなくなった」
 清海も今はしみじみとしている声だった、顔もまた。
「その屋敷もな」
「まさに春の夜の夢」
 こう言ったのは穴山である。
「鎌倉幕府の栄華は消え果てた」
「この通りな」
 猿飛はかつての屋敷を見ようとしたがどうしてもその目に見られなかった。
「何もなくなったわ」
「新田義貞公に攻め落とされてな」
 鎌倉をとだ、由利が言うのは太平記の話だった。
「そしてな」
「もう何もない」
 霧隠はそこに無常を見ていた。
「この通りな」
「人の世は常に移り変わり栄枯盛衰がある」
 最後に行ったのは幸村だった。
「まさに諸行無常、盛者必衰じゃな」
「ですな、まさに」
「安土もそうでしたが」
「あらゆるものがです」
「人も町も他のものも」
「やがて全ては消えますな」
「この様にな」
 また言った幸村だった。
「消えるのじゃ」
「今栄えていても」
「後には衰える」
「そして消えていく」
「それがこの世の摂理ですな」
「そういうことじゃ、人の世はじゃ」
 まさにというのだ
「全てがやがては消えるものだ」
「我等も何時かは、ですな」
「この世を去る」
「そうなっていきますな」
「その通りじゃ」
 まさにとだ、幸村は家臣達に答えた。彼もまたその屋敷があった場所を見つつ。
「北条氏、そして鎌倉幕府もそうでな」
「他のものもですな」
「全ては」
「あの大坂城もな」
 築かれようとしていた巨大な城もというのだ。
「あの城もじゃ」
「やはりですな」
「栄枯盛衰の中にある」
「そして羽柴家もですか」
「あの家もまた」
「長く栄えることは出来る」
 これはあるというのだ。
「努力や運、天命次第でな」
「しかしですか」
「それでも全ては何時かは必ず衰える」
「それがこの世なのですな」
「死にそして生まれ変わる」
 こうも言った幸村だった。 
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