フリージング 新訳
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第35話 Goodspeed of the East 4
前書き
一ヶ月以上もお待たせして申し訳ありません‼︎‼︎ようやく最新話です。今回は少し胸糞悪い展開・雑・になっていますが、次回もどうぞお願いします。
カズトがイーストを出た日の翌日。キャシーはいつも通りに自分のパートナーと訓練をしていた。
いつもと変わらない日常。変わったものと言えば、時々あの青年を思い出すことくらいだろうか。
彼は今どうしているのだろう。借した本は読んでくれているだろうか。ちゃんとご飯は食べているのだろうか。
それだけで頭がいっぱいになる。
「不思議な感覚だなぁ……」
昼食のシチューを頬張りながら、ひとり言をつぶやく。こんな感情は初めてだ。
毎日訓練をし、授業を受け、そして好きな本を読む。そんな繰り返しの毎日が、昨日から変わっていっている。
次に会えるのが楽しみだ。そう思っている自分がしっかりといる。本当に初めての感覚だ。そう思っていた時、学園中に警報が鳴り響いた。
「これは……⁉︎」
今までにないこと。出撃要請なら何度か経験したことはあるが、これはまるで襲撃されたのを警戒しろと言っているようなものだ。この要塞とまで呼べるようなゼネティックスに誰が………………
そう思考を加速させた時。食堂の壁が爆裂し、瓦礫が吹き飛んでいく。
「おーおー、いい女が揃ってんじゃねえの。選び放題のより取り見取りってやつだなぁ」
そこから現れたのは、短い髪を下品な金髪に染めたチャラチャラとした青年。その手にはズタズタに傷つけられた生徒がいる。
まるで殺すことが目的ではなく、痛みつけ、肌を晒させることが目的かのような傷が男の卑劣さを物語っていた。
「貴方は……何者……?」
怯えて動けなくなった生徒たちの中で、キャシーだけが怒りを込めた目で男を睨みつけた。その手には既に展開したボルトウェポンが握られている。
「ん?おお、いい女じゃねえの。その面に免じてその態度は許してやる」
尊大な態度を崩さず男はキャシーへと歩み寄ってくる。それだけで、彼女の背筋に悪寒が走った。男が放つそれは、カズトとはまるで逆のものだ。気持ち悪い。
全てが自分の思い通りになると思っている人間の顔。
「で、いつまで王であるこの俺に剣を向けるつもりだ?」
「っ‼︎」
それは、質問という名の命令。従わなければ殺すという意思のこもった悪意。それを、キャシーが見逃すはずもなかった。
アクセルを使い、男へと斬撃とは呼べぬほどの一撃を入れる。手心など加えない一撃が鈍い音を響かせ、男を外へと吹き飛ばした。ここまで重い重い一撃を食らって、無事でいるものは普通に考えているわけがない。
「やったか?とか言わねえのか。まぁ、言ってもテンプレ過ぎて笑えねえか」
そのはずなのに、男はガラガラと瓦礫を踏み分けながら首をゴキりと鳴らす。
それを見て悟った。全力を出さなければ、こっちが殺される。
アクセルのギアを上げ、ダブルにして再び男へと切り掛かった。速度は単純にして倍になっている。
「ハァァァァ‼︎‼︎」
「いいねぇ、いいねぇ、そうこなくっちゃなぁ、緑髪ィ‼︎」
ダブルアクセルのキャシーに、男はついてきた。だが焦りはしない。こんなものは想像の範疇だ。気にもとめず刃をふるう。
右を出せばまた左を出し、その刃を男へと叩きつける。だが、当たらない。まるで何か分厚い鋼を突いているかのようだ。男は何もしていない。なのに、こちらの攻撃は全てが通らないのだ。
ーなんでっ⁉︎
歯をくいしばりながら、アクセルのギアをダブルからトリプルに上げる。届かないのならもっと数を増やし、アクセルで突破するしかない。
連打の数を増やし、一撃一撃に殺意を持って男に叩きつける。
バキバキと、何かを破壊する音が聞こえてくる。その発生源は男の周りにあるナニかだ。トリプルアクセルのまで達したキャシーには、そのナニかの正体が朧気ながら見え始めていた。
ーまさか、ボルトウェポン?
男の周りを囲んでいるのは、ボルトウェポンのそれと同一の物。強度で言えば、カズトのグラディウスを上回るかもしれない。
だが、攻撃してこないのなら攻め続ければ勝機はある。
攻める暇すら与えず、息をする隙すら与えずにラッシュを仕掛けていく。
そして、遂にキャシーはアクセルをトリプルから他に誰も辿り着けない領域、クワトロフルアクセルまで進んだ。
一撃一撃、殺意を込めて叩き込む打撃は、今度こそ確実に男を捉えていた。
そう、思っていた。
「ああ、はいはい。もういいわ。飽きた」
聞こえてきたのは、心の底からどうでもいいというかのような声。
男は、そう言うと、神速の世界にいるはずのキャシーの腕を掴み取った。
そして、その腕が空中に現れた金色の穴より現れた槍に切り落とされた。
一瞬のことで何が起きたかわからなかった。少しの間をおいて、傷口から血が噴き出し激痛が走った。
「ぐ、ああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
絶叫を開けながら傷口を抑えようとするが、再び現れた金色の穴がその動きを止める。数は先ほどのそれをはるかに上回るもの。それら全てから別々の形の武器が現れる。剣、槍、斧、鎌など、大小様々な武具がキャシーの体に寸分違わずぶつけられていく。
肉が裂け、骨が砕かれ、命を削っていく。まるで傷つけることを楽しんでいるかのような攻撃に反抗することもできないまま、体の自由を奪われていく。ふんだんに使われる黄金のボルトウェポンは、一つ一つがミサイルのような威力を持っている。それに太刀打ちできるという方が無理な話だ…
そう言えば、他の生徒たちは逃げてくれたのだろうか。せめて、逃げてくれなければ、自分の努力も無駄というものだ。
ー彼だったら……どうしたのかな……
意識が途切れる前に浮かんだのは、優しい笑顔の青年。自分を空っぽだと言った、どこか哀しげな笑顔の青年。もしも、また彼にで会えるのなら、自分は、何をしたのだろう。
「ああ?もう終わりかよ。まぁ、時間も時間だし、この辺でお開きにするか」
男は金色の穴を一つだけ残しそれ以外は全て閉じた。ジャリジャリと、瓦礫の中を歩きながらこちらへと近づいてくる。
しゃがみ込み、倒れ伏しているキャシーにも顔が見えるようにする。
「よう緑髪。少しは楽しませてくれたなぁ。褒めてやるよ」
「………………」
キャシーは何も答えない。
男は構わず話し続ける。
「だが、俺様には届かねえな。なぜなら、俺様は王だからだ。言ってる意味わかるか?」
「…………………」
キャシーはまた答えない。すると、その四肢の真上に穴が開き、槍が打ち出された。
「………っ⁉︎」
「話してんだから答えろや」
あまりにも理不尽で、不条理な言動と行動。もはや声を発する力も無いキャシーには、そんなことは無理なのに。
「さてと、お前、これが何かわかるか?」
男がポケットから取り出したのはダイア形のナニカ。ナニカは分からない。だな、それは見ただけで、キャシーの内側がかき乱される物だった。
「い、いや……いやぁ……」
動けぬ手足を使って、何としてでも逃げなければと体を動かす。
「逃げんなよ。安心しろ。すぐに、お仲間と同じにしてやるから」
そして、悪意が彼女の中に流れ込んできた。
後書き
次回からは遂にカズトの秘密やら何やらに触れていこうと思いますのでどうぞお願いします。
ガンプラの小説も始めました。
では、良いお年を‼︎‼︎‼︎
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