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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico48絆は血より強い

 
前書き
絆は血より強い/意:強固な絆があれば、血縁など関係無く家族である、というたとえ。
 

 

†††Sideシャマル†††

PiPiPi♪っていう、目覚まし時計の電子音に「・・・ん・・・」目を覚ます。まずはスイッチを押して目覚まし機能を止める。時刻は午前6時30分。いつもは午前7時起床の私も、朝食作りの当番の時だけはこの時間に起きるようにしている。上半身を起こして、「シグナムはもう起きているのね」隣のベッドをふと見れば、シグナムの姿はもう無かった。日課のジョギングに出たのね。

「私も自分のお仕事をしないと♪」

ベッドから降りて、パジャマから私服のワンピースとカーディガンに着替える。そして鏡台の椅子に座って櫛で寝癖を梳かす。髪型を整えた後は1階の洗面所で顔を洗ったり、歯を磨いたり、身支度を全て整え終える。ついでに昨晩の溜まった衣服を洗うために洗濯機を回しておく。

「よしっ」

身なりを整え終えた後は早速朝食作りの準備をする。まずは何を作るかなんだけど、「昨日は洋食だったし、和食にしましょ♪」昨日の朝はルシル君が当番で、食パンやベーコンエッグなどの洋食だったから、今日は和食ね。和食は私が初めて学んだ料理で、とても思い入れのあるもの。だからやっぱり和食が一番って思いが強い。

「エップロン、エップロン♪ あとはシュシュで髪を纏めて~♪」

鼻歌交じりにダイニングのエプロン掛けから取った私用のエプロンを体に付けて、シュシュで後ろ髪を纏める。これで準備完了♪ ご飯作りの準備が出来たら、冷蔵庫の中から卵数個を取り出す。今でも忘れることの出来ない大切な思い出の1つである卵焼きを作るために。あとは、ルシル君と一緒に作ったひじきの煮物が入ったタッパー、それにシグナム用の納豆を指差し確認。

「あとは鯖の煮つけと、お味噌汁と、大根・きゅうりとツナのサラダ。今日はこれで行きましょ♪」

一番時間が掛かる鯖の煮つけから始める。まずは生臭さを取るために鯖の湯切り、次に鍋に醤油・みりん・砂糖・水と分量を量って入れて、沸騰し始めたら切り身を投入、落とし蓋をして、あとはぐつぐつ煮る。
鯖の煮つけが完成するまでの間に卵焼きやお味噌汁の作業に移る。オーディンさん直伝のお味噌汁の作り方をそのまま手法で作って、卵焼きの卵も今では簡単に割れるし、殻も混ざらないし、焼く作業も焦がすことも無くなってる。

「大根、きゅうりを細切りに~♪」

トントンと包丁で細切りにした大根ときゅうりをボウルに入れて塩で揉む。5分置いておくその間に油や水分を切ったツナとマヨネーズを混ぜて、それから5分経った大根・きゅうりと混ぜ合わせる。お皿に盛ったら鰹節と千切り乗りをパラパラ降りかけて、醤油を小さじで2杯かけて完成。鯖の煮つけも完成して、料理を盛ったお皿をダイニングテーブルに運んでいると・・・

「おはようや、シャマル」「おはよう、シャマル」

「シャマル、おは~」

「おはようです、シャマル」

「はよ~っす」

「おはようございます、はやてちゃん、ルシル君。それに・・・珍しく早起きなのね、ヴィータちゃん、リインちゃん、アイリちゃん」

はやてちゃんとルシル君だけでなく、普段はお寝坊さんなヴィータちゃんとリインちゃんとアイリちゃんも、同時にリビングに入って来た。

「お~。今日は武装隊の仕事だかんな~。なあ? リイン、アイリ」

「はいですよ」

「ん~」

はやてちゃんが特別技能捜査課のお仕事が休みで、シグナムとヴィータちゃんが武装隊の仕事の時、リインちゃんとアイリちゃんは2人の融合騎として付いて仕事をすることになった。リインちゃんははやてちゃんだけじゃなく、シグナムやヴィータちゃんともユニゾンして、ユニゾンの練度を高める訓練として。アイリちゃんは純粋にルシル君に褒めてもらいたいから。

「そうだったわね(それにしても、私も医務局の仕事のはずだったのに急に休みになっちゃったのよね)」

私も医務官としての仕事があったのだけど、今日1日休みになっちゃった。まぁゆっくりできる時間が出来て嬉しいことは嬉しい。

「ただいま」

「おかえり、シグナム、ザフィーラ」

はやてちゃん達が仲良く洗面台で洗顔している間に洗い物を済ませていると、シグナムとザフィーラが帰って来たから迎える。これで家族みんなが揃ったことに。そして、みんながテーブルに着いて「いただきます!」私が作った朝食を美味しそうに食べてくれる。

(家族でこうして談笑しながら、私やはやてちゃんやルシル君の作ったご飯を食べる。これが私にとっての幸せの1つでもあったりするのよね)

みんなで「ごちそうさま!」をした後は、はやてちゃんとルシル君は学校の制服に着替えるために自室に戻って、私はとヴィータちゃんとアイリちゃんと一緒に洗い物、ザフィーラはお風呂とトイレ掃除、シグナムとリインちゃんは洗濯物干し。

「みんなー! 行ってくるな~♪」

「行ってきます!」

登校時間となったはやてちゃんとルシル君を「いってらっしゃい!」家族みんなで玄関でお見送りする。2人を見送ったあとは、本局に向かうシグナムとヴィータちゃんとリインちゃんとアイリちゃんのお見送り。シグナム達が自室で管理局員の制服に着替えてきた。

「リインちゃん、アイリちゃん、ちょっと待って。ネクタイが曲がってるわ」

「あっ、ありがとうです、シャマル」

「ありがと~。ネクタイってメンド~なんだよね~」

未だに1人じゃ上手くネクタイを巻けない2人の歪んでるネクタイを締め直してあげる。そして今日で何度目かの「クロスタイにしたらどう?」提案をアイリちゃんにしてみる。でもやっぱり「ルシルとお揃いが良いから嫌」って言われた。少々ルシル君に依存し過ぎかと思うけど、まぁ、性格も姿形もオーディンさんに瓜二つだから解らないでもないからキツくは言えないのよね。

「じゃあ1人で結べるようにならないとね♪」

「は~い」

リインちゃんとアイリちゃんの身なりを整えたことで今度こそ準備完了。1階のトランスポーター室に集まって、私とザフィーラは装置内に立つ4人を見守る。

「行ってくる。シャマル、ザフィーラ、留守を頼む」

「んじゃ、今日も気合い入れて暴れてやるか。な? アイリ」

「ん! 犯罪者狩りだね!」

「リインも精いっぱい頑張るですよ!」

ヴィータちゃんに乗せられてグッと両手の握り拳を作るリインちゃんとアイリちゃん。アイリちゃんは単独戦闘でも十分すぎるほどに強いからさほど心配はないけど、リインちゃんはまだまだなんだから「シグナム。適度にブレーキをお願いね」そう伝えておく。

「ああ、心得ている。無茶も無理もさせんさ。そもそも無茶するような相手も居らんしな」

フッと小さく笑うシグナム。まぁ、シグナムもただでさえ強いのにリインちゃんとユニゾンしちゃったら、それはもう強いと思うから大丈夫でしょうけど。とにかく「いってらっしゃい。くれぐれも無理はしないで、怪我も無いようにね」もう1度注意しておこう。

「ああ」「おう」

「行ってきますです~」

「いってきま~す」

シグナム達が本局へと転送されたのを見送って、「さて。今日はどうしようかしら?」これからの予定を考える。とりあえずみんなのパジャマを洗濯。終わるまではリビングに戻って「ふぅ」ソファに座って一休み。テレビをつけてワイドショーを観る。

「どこの世界でもやっぱり犯罪って起こるのね~」

殺人・強盗・誘拐・人身事故などなど。観ていて気が滅入る事が多いわ。はやてちゃんは賢いから誘惑には惑わされないのは確実。そして魔導騎士でもある・・・のけど、それは変身した後での話。基本的には普通の女の子。一応、登下校中はルシル君やなのはちゃん達が護衛役として居てくれるから大丈夫だとは思うけど・・・。

「あら、スィーツ特集♪」

スィーツ特集のコーナーになってテンションが上がる。なのはちゃんのご家族が経営していらっしゃる翠屋のスィーツも美味しいし、ルシル君が作るケーキも美味しい。でもやっぱり時々は別の物を食べたくなるというか。解って、この気持ち。

「今日の特売は~っと」

テレビを観ながら、今日――金曜日限定の特売が無いかをチラシを確認。まぁ、家族全員がお給料を貰える公務員として働いているから、特売になんて行く必要はないのだけど、はやてちゃん曰く・・・

――安くて良い物を買うのが主婦の鉄則やよ――

とのことだから、私も鉄則に倣って基本的には派手にお金は使わないことにしてる。チラシを全て確認し終えて、冷蔵庫の中を確認。買い足さないといけない食材が無いかを見たうえで「買い物はなし」そんな結論に至った。いよいよやる事がなくなっちゃったわ。

「・・・・暇、暇だわ~。のんびり出来るのは良いけど退屈過ぎてどうにかなっちゃいそう~」

ワイドショーも終わって、洗濯物も干し終えて、ファッション雑誌なども読み飽きてきた。衣類などの買い物は基本的にはやてちゃん達と一緒に行って、選び合って買うから1人では買いに行かないし。特に買い足す食料品も無いし。じゃあ・・・

「ザフィーラ。散歩でも行く?」

「我は、主はやてとご一緒でなければ散歩には行かん。・・・シャマルよ。軽く掃除などをしたらどうだ? 体を動かせば少しは退屈も紛れるだろう」

「・・・そうね~。昨日もやったけど」

そういうわけで掃除機を物置から持って来てお掃除開始。はやてちゃんのお部屋、リビングダイニング、玄関や1階廊下、そしてルシル君のお部屋へ移る。ルシル君とアイリちゃんが生活するスペースは綺麗に整理整頓されているんだけど・・・

「アイリちゃん。女の子なんだからもうちょっと頑張りましょ・・・」

床に雑に脱ぎ捨てられてる衣服はアイリちゃんの物。それらを拾って畳んで、ベッドの上に置いておく。そして掃除機をかけて、ベッド下にノズルを突っ込むと「あら?」コツンと何かに当たった感触が手に伝わって来た。

「ベッド下に何かあ・・・ハッ!」

ベッド下を覗き込もうとして止めた。男の子、ベッド下。この2つのキーワードが頭の中にデカデカと浮かんできた。掃除機のスイッチを切って「やっぱりHな本とかなのかしら・・・?」ドキドキしながらチラチラとベッドを横眼で見る。ルシル君だって男の子なんだもの。そう言ったことに興味を持ってもおかしくないわ。

(も、もしかして私やシグナムもそういう目で見られて・・・! きゃぁぁぁぁぁ♪)

両手を頬に添えていやんいやんと顔を振る。嫌とか気持ち悪いとかそういった気持ちは全くない。むしろ大人っぽくて欲とか自制できそうなルシル君も、ちゃんと健全な男の子だってことが判って逆に安心したわ。あ、でもはやてちゃんとのそう言ったお付き合いはもっと大人になってからね。

「と、とりあえず、どんな本なのかしら・・・」

掃除機のノズル先端のT字ヘッドを使って、ベッド下にある硬い物を取り出そうと試みてみる。んしょ、んしょ、ちょっと苦戦しちゃったけど「取れた♪」ベッド下から取り出せた。出て来たソレは1冊の「アルバム・・・?」だった。
Hな本じゃなくて写真ってことになると、いよいよ被写体が誰か?になってくる。ドキドキしながら手に取って、ごくっと唾を呑む。恐る恐るアルバムのカバーに手を掛けて、目を細める。そして・・・「えいっ!」バッとアルバムを開いて、そっと目を開ける。

「・・・・」

写真は確かに入れられてた。でも被写体は私やシグナムじゃなくて「ルシル君・・・」だった。とりあえず2枚目、3枚目とページを捲っていく。写真にはどれも「ルシル君の寝顔、料理中、掃除中・・・って、学校のまで!?」ルシル君が写っていて、さらには確実に盗撮された物だった。このアルバムの持ち主は「アイリちゃん・・・」で間違いない。アルバムをそっとベッド下に戻して、私は退室した。

†††Sideシャマル⇒はやて†††

「今日の図画工作は、明後日の日曜日――母の日のプレゼントを作りたいと思います。お母さんへの感謝を込めたメッセージカードや、折り紙でカーネーションを作りましょう」

今日の授業の最後は図画工作。特別教室の図工室で、4人掛けの大きな作業台に着いて、先生から授業内容を伝えられた。そう言えば去年はこんな授業あらへんかったな。

「作り方の描かれたプリントと折り紙、それにカードと封筒を配ります。折り紙は予備がたくさんあるので、必要になったら取っていってください」

先生から白紙のカードや折り紙が配られた。プリントに描かれたカーネーションの作り方は数通りもあって、平面的な折り方、立体的な折り方、カッターでの切り絵、ハサミでの切り絵もある。
わたしが着いてる作業台にはルシル君、アリサちゃん、アリシアちゃんの4人。隣にはすずかちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん、シャルちゃんの4人が座ってるから、アリシアちゃんが以前言うてた通り「ねえねえ、みんなはどのカーネーション作る?」早速お喋りを開始。

「あたしはそうね。・・・時間もあるし切り絵をやるわ。カッターマット借りて来なきゃ」

まずアリサちゃんが難易度・高のカッターでの切り絵に挑戦することを宣言して、図工室後ろにある棚に向かった。すると「私もそっちにしようかな♪」すずかちゃんも続いて席を立って、アリサちゃんの後を追った。

「私は~・・・、ハサミで切り絵やってみようかな♪」

「それじゃあ私も、なのはと同じやつにしようっと♪」

なのはちゃんとシャルちゃんはハサミを使っての切り絵を選択。そんでわたしは「今年は家族の分を作るつもりやから、あんま手の掛からんやつやな」そう言うて、プリントの立体折り紙の絵を指差す。平面の方が簡単で手間も掛からんやろうけど、立体の方が見栄えも良えから立体を選んだ。
去年は本物のカーネーションをシグナムとシャマルとアインスに贈って、ヴィータと生まれたばかりのリインにはお菓子を上げた。なんや“母”の日を度外視してるけど、シグナム達にはお世話になってるからな。それで構わへんって思うてる。あー、あと勤労感謝の日にも贈り物してる。

「な? ルシル君♪」

「そうだな。今年は手作りのカーネーションをシグナム達に贈ってみようか」

そうゆうわけでわたしとルシル君は立体カーネーションを折ることにした。必要な枚数を手に取ってる中、ルシル君が「で、アリシアはどうするんだ?」って訊くと、「ふっふ~ん。切り絵以外全部!」なんて大それたことを言うた。

「まぁそういうわけだから、私とアリシアで全種の花束を作ろうと思うんだ」

フェイトちゃんが苦笑いを浮かべて、早速アリシアちゃんと2人で立体と平面両方のカーネーションを折り始めた。そやから「負けてられへんよ、ルシル君!」わたしも、「ああ、派手な花束を作ってやろじゃないか!」ルシル君と一緒にカーネーションを折り始める。すずかちゃんやアリサちゃん、なのはちゃんやシャルちゃんもそれぞれ作業に入った。

「それにしてもアリシア。はやてや俺のように家族分を作るなら解るが、リンディさん1人にそんなに作ってどうするんだ? エイミィにも贈るのか?」

「は? ルシル、忘れたの? わたしとフェイトにはママが2人いるんだよ」

「プレシアさんのための・・・」

「そう・・か。あぁ、そうだったな。失念していた。すまない」

深く頭を下げるルシル君に、「わわっ、良いから、そんなことしないでも!」フェイトちゃんが大慌てで頭を上げさせた。アリシアちゃんも「わたしもなんか言い方キツかったよね・・・。ごめんね、ルシル」そう謝って、話を戻すために3人で笑顔を浮かべ合った。

「えっと、わたしとフェイトもね。はやてと同じ、ママの写真に供えるの」

「エイミィが砕け得ぬ闇事件の時、私たちが母さんやリニスと一緒のところの写真を撮っていてくれたからね」

以前、ハラオウン邸に遊びに行って、フェイトちゃんとアリシアちゃんの部屋に招かれた時に見してもろうたけど、家族、そう一言で言い表せるほどにとっても綺麗な写真やったこと思い返す。そやけどうちの八神家集合写真も負けてへんって自信はある。

「ちょっと休憩~。・・・ところで。父の日にはなんの花を贈るのが良いか知ってる? あ、フェイトは知ってるから、しぃー、ね」

集中しすぎて話もせんまま作業が終盤になってきた頃、アリシアちゃんが唐突に話題を振ってきた。母の日に比べて影の薄いって言われてる父の日。その日にも贈る花があるってゆうんは初耳で、少し考えた後にみんなと一緒に首を横に振った。

「むむ。ルシルだけ首振らなかったね。ひょっとして・・・知ってる?」

「俺の知識量を侮るなよ、アリシア」

そう自信ありげに微笑んだルシル君が最後のカーネーションを作り終えて、シグナムとシャマルへのカーネーションの花束を完成させた。アリシアちゃんが「じゃあ答えを言ってみて」そう促すと、「薔薇だろ」ルシル君は即答したんやけど・・・。

「え、バラ!?」

わたしの驚きを筆頭に、「なんかイメージと違うわね」アリサちゃんは唸って、「男の人から女の人に贈る花ってイメージが強いもんね」すずかちゃんも同意した。それに「花を贈ること自体が初耳だったよ」なのはちゃんや、「St.オルフェンにもそういう日を制定するように働きかけてみようかな」シャルちゃんが感心した。

「薔薇の色によって意味は違うから、それを考えて贈ると良い。黄色は献身、白色は尊敬、赤は愛情。まぁ、薔薇じゃなくてひまわり、百合、蘭などと言った花を贈るのも良いらしい」

みんなで拍手を送ってると、「じゃ、じゃあこんな話は知ってる? くしゃみの回数別の意味!」アリシアちゃんが作りかけのカーネーション、その最後の1本をルシル君にビシッと突き付けてそう訊いた。緑の折り紙で作られた茎からポーンっとカーネーションの花が飛び出して、ルシル君のおでこにヒット。

「父の日が関係無くなってるぞ」

作業台に落ちたその花をアリシアちゃんに放り返しながら「ま、いいか。諸説あって必ずしもそう、というわけじゃないが・・・」ルシル君は答え始めた。

「まずは、一誹り二笑い三惚れ四風邪。1回目は批判、2回目は笑い者に、3回目は惚れられ、4回目は風邪という意味だな。どの諸説も基本的に4回目は風邪とされているわけだ。2つ目は一に褒められ二に憎まれ三に惚れられ四に風邪をひく。3つ目は、二の憎まれがフラれに変わる」

「むむぅ、正解だよ・・・。じゃあ――」

アリシアちゃんからの知識戦の挑戦は授業が終わるまで続いて、最終的には8戦8勝でルシル君の完全勝利で終わった。

†††Sideはやて⇒シグナム†††

日曜日ということで休みだったはずなのだが、隊からの緊急招集で私とヴィータ、それぞれの緊急時のパートナーとしてリインとアイリが同行し、シャマルは医務官として、ザフィーラはシャマルの護衛として、我らと現場へ。そこで暴れていた武装強盗団を壊滅させてやった。家族揃っての休暇を邪魔された恨みを一緒にぶつけさせてもらったわけだ。

「大変だったわね~」

「雑魚いクセに数だけ多かったのがウザかったよな」

「そのくせ一般人を平気で魔法で傷つけるしね」

「だからこれまで以上の本気でやっつけてやったです!」

そして無事に仕事を終えてヴィータ達と共に家へと帰ると、「すげぇ良い匂い!」ヴィータがダイニングより漂ってくる夕飯の香りに誘われ、「ただいまー!」すごい速さで部屋を飛び出して行った。

「あらあら、ヴィータちゃんたら」

「しょうのない奴め」

「アイリやリイン以上に子供だね♪」

「ですぅ♪」

我々もトランスポーターが設けられた部屋より出、洗面所へ向かう前に「ただいま帰りました」「ただいまです♪」「ただいま~」リビングに顔を出して挨拶をする。

「おかえり、みんな!」

「おかえり。早く手を洗ってくると良いよ」

キッチンで調理している主はやてとルシリオンから挨拶を受ける。そして先に行っていたヴィータは「あ~ん♪」主はやてからエビチリを1つ貰っていた。

「はやてちゃん、リインも!」

「ルシル、アイリも!」

それを見ていたリインとアイリもキッチンへと走って行った。お前たちも十分子供だよ。私は苦笑しながら洗面所へ向かおうとした時、「おーい、シグナム、シャマル、ザフィーラ~♪」主はやてに呼ばれた。右手の菜箸には同様にエビチリが1つ。左手は手招き。表情は満面の笑顔。さすがにこれは断ることが出来ない。シャマルは迷うことなく即座に向かい、「あ~ん♪」主はやてからエビチリを頂いていた。

「シグナム・・・」

「判っているザフィーラ」

ザフィーラと共にキッチンへ向かい、「はい、シグナム。あ~ん♪」主はやてからエビチリを頂き、「あ、あ~ん。・・・とても美味しいです、主はやて」お礼を言う。

「そっか♪」

ソースも自家製で、正しく八神家の味というものだ。それから我々は洗面所で手洗い、自室で私服へと着替えてリビングに戻ってくると、夕食の準備を終えたところだった。それぞれ席へと着いた時・・・

「わたしとルシル君からみんなへの日ごろの感謝を込めて、今日は、みんなが好きな中華料理を御馳走することにしました♪」

中華料理は和食と並んでオーディンからその存在を教わった料理だ。ゆえに自然と洋食以上に好んでいるのが我々だ。まぁ一番は和食、しかも主はやてがお作りになったものだが。

「今日は世話になっている母親を祝う日だが、俺やはやてはみんなから母親以上に支えてもらっているからな。そのお祝いだ」

テーブルに並べられた豪勢な中華料理が、我らの為に作られたというのはとても嬉しかった。家族みんなで「いただきます!」と手を合わせ、主はやてとルシリオン手製の中華料理を頂く。どれも店などで食べるよりずっと美味い。主はやてとルシリオンの想いが詰まっているからだろう。そして談笑しながら食事を終え、片付けも一段落して思い思いにリビングで寛いでいると・・・

「みんなに渡したいもんがあるんやけど、受け取ってもらえるかな」

主はやてとルシリオンがそれぞれの自室へと向かい・・・戻ってきた。その手に携えていた物を見たシャマルが「すごい♪」が歓声を上げ、「折り紙で出来てんのコレ!」ヴィータや、「すごいです!」リイン、「手作りなんだね!」アイリが驚きを見せた。

「ルシル君と合作の手作りのカーネーションの花束と、それに・・・」

「メッセージカードとお菓子を用意したんだ。受け取ってほしい」

主はやてとルシリオンからの祝いだ。受け取らないわけがない。2人の元へ小走りで駆け寄る。

「はい、シグナム。いつも将として頑張ってくれて、おおきにな」

「いえ! こちらこそいつもありがとうございます!」

主はやてから折り紙で作られたカーネーションの花束と、花の間に挟まれた2枚のメッセージカードを受け取る。それからシャマルも「うぅ、嬉し過ぎて泣いちゃいます~」半泣きで大喜び、ザフィーラも「こちらこそ感謝しております、主」静かに感謝を述べ、「ありがと! はやて、ルシル!」ヴィータも花束やカードだけでなく、追加の菓子にも喜びを見せた。

「リイン。いつもおおきにな」

「リインこそありがとうですよ、はやてちゃん!」

「じゃあ、アイリには俺から渡そうか。アイリ、ありがとう。俺たちみんなの支えになってくれて」

「~~~~っ! アイリも今では八神家だもんね! 支え合うのは当たり前だよ♪」

思い思いに主はやてとルシリオンに感謝を返す。手作りというのがまた愛おしい。メッセージカードにも、感謝ばかりが綴られていて、その温かな想いがさらに私の原動力となり、強くする。そして思いもまた強くなる、この現在(いま)を守りたい、と。その為にも私はもっと強くならねばな。
 
 

 
後書き
ヤクシミズ。
遅まきながら、メリークリスマス!
エピソードⅢを執筆し始めてとうとう1年を越えてしまいました。今後のエピソードもおそらく1年越えが当然になるでしょう。完結するのはいつになるのやら。というか、早くForceを再連載してほしいです、マジで。ラストエピソードはForceが入り混じる章ですから。

あ、おそらく今話が今年最後の投稿になるかと思います。
残り僅かの時間を使って積みゲーをプレイしておきたいので。近々テイルズオブベルセリアの発売日発表もあるでしょうし、3月にはスターオーシャン5。未定のギルティギアXrdなどなどのためにも、今の内に消費しておかなければ。

「それでは! 皆様、良いお年をお過ごしください! また来年にお会いしましょう!」
 
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