声で
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3部分:第三章
第三章
「音楽も用意してるから」
「ジャニーズと特撮ね」
どちらも鈴子の趣味である。
「それで鈴子今日は何の朗読するの?」
「今日は詩集になってるわ」
それを読むというのだ。放送部では文学作品の朗読もしているのだ。
「それを読むからね」
「詩集ねえ。頑張ってね」
「それじゃあね」
「ええ、頑張るわ」
そんな話をしてだった。鈴子はその日の放課後だ。
放送室に入ってそのうえで音楽をかけ朗読をする。その声を聴いてだ。
あるクラスでだ。男子生徒達がこんなことを話すのだった。
「おっ、今日はこの娘なんだな」
「今日の当番だったんだな」
「相変わらずいい声だよな」
「そうだよな」
そんな話をしてだった。彼等はにこりとしていた。そうしてだ。
そのうちの一人がだ。こんなことを言った。
「何かこの声の娘ってな」
「んっ、どうしたんだ?」
「何かあったのか?」
「ああ、どんな娘なんだろうな」
声の主に興味を持ったのである。
「こんなに奇麗な声の娘ってさ」
「ああ、この声の娘か」
「どんな娘ってか」
「放送部の娘だよな」
そのことから言う彼だった。見ればだ。
一重の鋭い目に細い一直線の眉、前を延ばした赤がかった茶髪を七三分けにしている。
頬は細く唇が引き締まっている。鼻はわりかし高くいい形をしている。肌がかなり白い。制服も白い詰襟だ。ただ袖の辺りが黒くなっている。何処か海軍の軍服に似た制服だ。
名前を宮崎昂輝という。バレー部の二年だ。その彼がだ。
真剣な顔でだ。周囲に尋ねたのである。
「この声の娘って」
「ああ、俺達と同じ二年のな」
「その娘だよ」
「二年か。どのクラスなのかな」
真剣な顔で言う彼だった。
「一体」
「じゃあ放送部の誰かに聞いてみたらどうだ?」
「うちのクラスにもいるしな」
「そうだな。それじゃあな」
友人達に言われてだ。昂輝は頷いた。
そのうえでこの日は部活に入った。しかしその次の日だ。
彼のクラスの放送部員と友人達にだ。こう尋ねたのである。
「おい、昨日の放課後の放送当番誰だったんだよ」
「ああ、三田村さんだね」
「三田村さんっていうのか」
「そう、二年C組のね」
「C組だったのか」
昂輝は彼女の名前とクラスを知った。尚彼はH組である。
「あの娘は」
「そうだよ。で、どうするんだい?」
「もしかして興味ができたとかかい?」
「ひょっとして」
「彼氏はいるのか?」
友人達のいささか茶化す問いにだ。昂輝は今度はこう問い返した。
「三田村さんには」
「おいおい、また直球だな」
「それできたか」
「もうど真ん中一直線だな」
「いきなり彼氏のことかよ」
「で、いるのか?」
真顔で問う彼だった。
「彼氏は」
「いや、いないらしいぜ」
「中学卒業と一緒に自然消滅したらしいぜ」
「前はいたんだな」
昂輝は話を聞いて今度はこう言った。
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