FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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氷の神
前書き
あけましておめでとうございますm(__)m
ついに2016年となりましたね。
昨年はこんな作品を読んでいただいてありがとうございました。
今年もゆっくりだったり突然早くなったりしながら更新を続けていく予定ですので皆様よろしくお願いします。
最後にうちのシリルた・・・ゴホンッ シリルよりお年玉でもどうぞ。
シリル「水竜の・・・鉄拳!!」←ようするにゲンコツ!!中学の時先生にされた記憶ある(笑)
シリルたちが4人での戦いを繰り広げていたのと時を同じくして、ある建物では4日目の再戦が繰り広げられていた。
ボワァ
影になり姿を隠すローグ。彼は目の前の敵・・・ガジルの背後に回ろうとしていたが、ガジルはそれを読んでおりすぐに体を反転させてローグの方を向く。
ローグは対応されたと判断すると再び影になり、振り向いたガジルのさらに背後を取ることに成功した。
ニヤッ
うまくいったと思ったローグ。しかし、ガジルはそれに気付いていたらしく、彼の腹部に強烈な拳を叩き込む。
「ぐあっ!!」
「おらぁ!!」
ガジルは腕を鉄竜棍へと変化させ、ローグの顔や胴体に次々に打ち込んでいく。
「うおっ!!」
後方へと飛ばされるローグはガジルの力の強さと瞬時の対応能力に驚いていた。
「1日やそこらで力の差は埋まらねぇ。諦めろ」
ガジルはそう言い残し、ローグに背を向けて歩き去ろうとしていく。
ローグはその姿を見て何かを考えると、ガジルにこういい放った。
「お前は・・・ナツ・ドラグニルほどでも・・・ましてやシリル・アデナウアーほどでもない」
ガジルはその言葉を聞くと足を止め、彼の方を向き直る。
「なんだと?」
自分のライバルである火竜のナツに力を劣っていると言われるだけでも屈辱なのに、自分よりも幼いシリルに負けていると言われたガジルは顔に血管を浮かべ、ローグを睨んでいた。
その頃、別の場所では・・・
「やっと会えたな、ラクサス」
黒い雷を体から放出しつつラクサスの前にやって来た薄い緑色の髪をした大柄な男。
「黒い雷か」
「もう気づいてんだろ?俺が雷の滅神魔導士だって」
ラクサスに対してそう言うのは剣咬の虎最強の6人の1人、オルガ・ナナギカ。
「神は殺せても妖精は殺せるかな?」
強敵を前にしてもあくまで冷静な表情で・・・余裕を感じさせる佇まいのラクサス。
「雷の滅神魔導士オルガ、だったな」
「フッフッフッ。俺の名を覚えてくれたのか?ラクサス」
腕を組み見下しながら会話をするラクサスと強敵と出会えたことで嬉しそうな表情を浮かべるオルガ。
「剣咬の虎でデカイ顔してるくらいだ。確かにお前の雷は大したもんかもしれねぇ。だが、所詮は2番手止まりだろうな」
「言ってくれるじゃねぇか。一番はお前だとでも言いたいのか?」
ラクサスはその通りだという感じに口角を上げる。
「上には上がいるもんだ。一辺負けてみるのもいい経験になると思うぜ」
「へっ!!面白れぇ」
ラクサスの調子に乗った発言を黙って聞いているほどオルガも優しい性格ではない。
「テメェの雷と俺の雷。果たしてどっちが上か」
オルガは右の拳に黒雷を纏うと、それをラクサスに向けて放出する。
「うおおおおっ!!」
凄まじい黒雷がラクサスに迫る。しかしラクサスは余裕そうに笑みを浮かべたまま目を閉じると、オルガの雷はその横を通過していき、後ろに並んでいた家を数軒破壊していった。
「どうした?まさか足がすくんで動けねぇわけではねぇだろ」
「本気でぶち当てるつもりかどうか、それぐらい見切れねぇとでも思ってるのか?」
ラクサスはオルガが自分の力を見せつけるためにあえて外したことを見破っていたらしく、全く動じることなく仁王立ちしていたらしい。
するとラクサスは次は自分の番だと言わんばかりに拳に雷を纏わせ、オルガに向かって発射させる。
「はぁぁ!!」
オルガも先程のラクサス同様、この一撃が自分に当てるつまりがないことを見切っており、一切動くことなくその魔法が自分の脇を通過していくのを待っている。
ラクサスの雷はオルガのそれよりも威力があり、オルガの倍近い数の家を粉々に粉砕した。
「さすがだな、ラクサス」
オルガは自分の後ろにあった建物が瓦礫と化す様子を見てラクサスのパワーを再確認する。
「そろそろ始めるか。お前相手にいつまでも時間を潰してられるほど暇じゃねぇんでな」
2人はついに戦闘に入るために体から魔力が溢れ出るほどに力を高めていた。
「アイスメイク・・・・・氷柱!!」
「水竜の盾!!」
レオンの手から無数の氷柱が発射され、それをシリルが水の盾を作り出して受け止める。
「アイスメイク・・・氷創騎兵!!」
シリルの後ろからグレイにイルズィオーンしたグラシアンが氷の槍を大量に飛ばして攻撃する。
「その魔法・・・」
その攻撃を見るとすぐにシリルの前に現れた1人の少女。
「使わせてもらうよ!!」
ソフィアはそう言うと大量に向かってきていた槍をすべて後方へと弾き飛ばす。後ろにいたシリルの頭上を通過していったそれは彼に攻撃をしていたレオンに向かって飛んでいる。
「アイスメ―――」
シリルと同じように盾を出して攻撃を防ごうと考えたレオン。だが彼は一昨日のバトルパートである弱点を露呈してしまっている。それは造形の速度の遅さ。
「ぐはっ!!」
それゆえに魔法を発動するよりも早く氷の槍がレオンの全身をヒットする。それを見て好機と捉えたのか、グラシアンはグレイからミストガンへと変化する。
「流星!!」
エルザの飛翔の鎧よりも速いその魔法はシリルとソフィアに攻撃することなど考えていないようで、2人を通り過ぎて体勢の崩れているレオンへと一直線に進んでいく。
「アイスメイク・・・・・盾!!」
「ごはっ!!」
バランスを崩しながらもなんとか盾を作り出してミストガンの攻撃を間一髪で凌ぐことに成功したレオン。今回は逆に彼の造形の遅さが幸いしていた。
グレイやリオンのように素早く造形ができればもっと安全にミストガンから身を守れたと考える人もいるかもしれない。しかし、逆に彼らのように盾や攻撃を遮るものを瞬時に出せると『流星』で高速移動しているミストガンなら軌道を修正して掻い潜るチャンスを与えることになりかねなかった。
今回はレオンが造形が遅かったことによりミストガンは盾が展開される前に潜り込めると考えて真っ直ぐに突進していたため、ギリギリで作り出せた盾に対応することができなかった。ゆえに防げたというところであろう。
「ったく・・・」
かなりの速度で衝突したせいでグラシアンはふらつきながらレオンから距離を取る。そんな彼の敵は1人ではない。
「水竜の・・・咆哮!!」
シリルは目の前に自分から現れた格好の、しかも完全に背を向けて意識を自身の方へ向けていないグラシアンに向かってブレスを発射する。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
「うおっ!!」
ブレスをまともに受けたせいで悲痛の声を上げながら押し出されるグラシアン。そんな彼に巻き込まれてしまったのは当然のように目の前にいたレオンである。
2人は街灯の柱をへし折りながら地面へと落とされる。
「よし!!」
ガッツポーズするシリル。しかしそんな彼の後ろにはまだ敵が潜んでいたことを彼は完全に忘れてしまっていた。
「シリルちゃん、ソフィアと2人っきりになりたかったんだね♪」
「ぎゃあああ!!」
シリルを優しく抱き締めるソフィア。さきほどグラシアンの魔法を弾きレオンへと直撃させたソフィアはまだ彼の真後ろにくっついていたのだ。シリルは目に見えている敵に気持ちが向きすぎており、頭から彼女のことが抜け落ちていた。
「それでね、シリルちゃ―――」
「離せ!!」
「あうっ!!」
シリルもやられっぱなしでは終われない。
ソフィアの顎に頭突きを入れるシリル。ソフィアはなおも何かを話そうとしていたところでシリルから頭突きを食らったせいで舌を噛んでしまい、痛みに涙を浮かべながら舌が切れていないか触って確認していた。
「血は出てない・・・よかったぁ」
とりあえず切れてはいなかったようでホッと一安心のソフィア。しかし彼女はそんなことをしている余裕など本来なかったのである。なぜならここは
「水竜の・・・」
戦場なのだから。
「翼撃!!」
「きゃああああ!!」
シリルのドラゴンの翼のような一撃により空中へと投げ出されるソフィア。シリルはそんな彼女にトドメを刺そうと両手首を合わせて例の技の姿勢に入る。
「雲竜水!!」
広範囲に放たれた威力のある水。水は時と場合によっては人の命をも奪うほどの威力がある。それゆえにこれだけのパワーを秘めた水は人1人を倒すの十分な量と言える。
相手がこの女でなければの話だが。
「やられた分はソフィアもやり返すよ!!」
「なっ!?」
ソフィアは動きが限定されがちな空中にいるにも関わらず、器用に体を回して体勢を建て直すとシリルの魔法に魔力を集中させた右手をぶつける。
するとシリルの強烈な一撃はものの見事に跳ね返され彼に向かって・・・それも威力を増して返ってくる。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
避けようにも自分が放った魔法の範囲が広かったことが仇となり、一瞬で飲み込まれるシリル。
「ありゃ。間違ってシリルちゃん倒しちゃったかな?」
ソフィアは地面に着地すると魔法がぶつかった衝撃で砂煙に包まれている方を見つめてそう呟く。
ガタッ
「!!」
シリルが無事なのか確認しようとしていたはずのソフィアは後ろから微かではあるが物音を聞き取り、その正体を確認するために振り返る。
「はぁっ!!」
そこには剣咬の虎のスティングが・・・いや、スティングに変化したグラシアンが彼女に向かって蹴りを放とうとしているのが見えた。
「キャッチ!!」
「は!?」
ソフィアは顔に飛んできていたスティングの蹴りを一昨日のナツのように片手で平然と受け止めてみせる。スティングは簡単に受け止められてしまったことに驚きを隠すことができない。
「言ったでしょ?ソフィアは剣咬の虎を許さないって!!」
ソフィアは片足を掴んだまま地面についている方の足の脛の部分に向かって蹴りを入れる。
「いってぇ!!」
誰だって脛を蹴られるのは相当に痛い。しかもソフィアは手加減など当然するわけもなく彼の足を撃ち抜いた。
スティングはあまりの痛さに片膝をつこうとしたがソフィアにもう片方の足を捕まれているためにそれをすることができず、ただただ痛みに顔を歪めるしかない。
「ほらほらほらほら!!」
ソフィアはそのグラシアンに容赦なく追い撃ちを加えていく。腹部に向かって足を持っていない方の手でパンチを次々に叩き込み、最後は持っている足を投げてグラシアンを頭から地面に倒れるようにする。
「フーッ。それじゃあこれで・・・」
顔をボールのように蹴ろうと足を振り上げたソフィア。そんな彼女とグラシアンに人の影が重なる。
「アイスメイク・・・・・大槌!!」
彼女たちの上にいたのは氷の造形魔導士レオン。レオンはすでに大きな槌をほとんど完成させた状態でソフィアたちの真上に入っていたらしく、2人が気づいた時には氷の槌が2人を押し潰していた。
「ひゃっ!!」
「ぐおっ!!」
氷の槌が消えるとそれがあった場所からは地面にめり込んでいるソフィアとグラシアンが現れる。レオンは着地しつつそれを見ると次なる攻撃姿勢に入る。
「アイスメイク・・・・・」
「水竜の鉄拳!!」
一気に2人を片付けようとしたレオンにさっきソフィアから雲竜水を返されて沈みかけていたシリルが小さな拳を放つ。
「どわっ!!」
レオンはその鉄拳に押されて片膝をついてしまう。
「やるじゃん。さすがシリ・・・」
レオンは顔をあげてシリルを褒め称えようとしたが、それよりも今の彼の姿に言葉を失ってしまう。
「どうしたの?」
言葉を発しなくなったレオンの態度に首をかしげるシリル。彼はソフィアの攻撃により服が所々破れており、ニーソの部分なんか水玉模様みたいな穴が至るところに空いていた。
「シリル・・・なんかその格好ヤバイ」
「はぁぁぁ!!?」
バトル中とは思えないレオンの発言を聞いて顔に血管を浮かべるシリル。
「いたたたた」
「やってくれるなぁ、お前ら」
シリルとレオンが服装についての会話をしていた間に地面にめり込んでしまっていたソフィアとグラシアンが傷を押さえながら立ち上がる。
「これ・・・決着つくのか?」
立ち上がった2人を見て疲労感たっぷりの声を出したのは水髪の少年。
この4人は皆似たような戦いになってきている。全員がより多くのポイントを取るために、誰かが相手にトドメを刺そうとすると違う誰かがそれを妨害しては戦闘になるの繰り返し。まったく状況が進展することなく、刻々と時間がすぎ、魔力が消費されていくだけだ。
「くっ・・・くはははははっ!!」
突然大笑いし始めるグラシアン・カイザー。いきなり、それも何も笑うようなことが起きていなかったのにも関わらず笑い始めた彼に動揺し、3人はそちらに視線を集める。
「しょうがない。あまりやりたくなかったけど、これ以上無駄に魔力を消耗するのは得策じゃない」
グラシアンはそう言うと変化を開始する。黒くて長い髪を所々三つ編みにしたりお団子のようにした中華風の衣装を着ている女性。
「妾が相手をしてやろう」
その姿を見たと同時にソフィアの表情が先程よりも怒りに染まっているのがその場にいたシリル、レオン、そしてこの試合の様子を見ていた観客たちにも手に取るようにわかった。
『ミネルバだぁ!!剣咬の虎のグラシアン、同ギルド最強の魔導士と吟われるミネルバ・オーランドに変化したぁ!!』
エルザとカグラと三つ巴を演じていた女魔導士ミネルバ。カグラとミリアーナに卑劣な戦法で勝利を納めたこの人物を見た途端、ソフィアが目にも止まらぬ速度で駆け出した。
「ミネルバァ!!」
彼女のギルド最強の魔導士カグラの速度よりも出ているのではと思わせるほどのスピードでミネルバに突撃するソフィア。
「フッ」
そんなソフィアを見たミネルバは彼女に片手を向けると、向けられたソフィアは緑とも何色とも表現しがたい球体によって動きを封じられてしまう。
「な・・・何これ!?」
ガンガンと自分を囲っている球体を叩くソフィア。しかしそんなことで壊れることなどある訳もなく、彼女は完全に囚われの身となってしまった。
「おま・・・うわっ!!」
シリルがミネルバがソフィアに何をしようとしているのかわからずに睨んでいると、彼と同じような球体の中に閉じ込められてしまう。
「シリル!?」
「なんだこれ!?痛くも何ともないぞ!?」
レオンが目の前で球体に閉じ込められたシリルに驚き声をかける。シリルはソフィア同様に壁を叩きながらそう言った。
「当たり前だ。それは貴様らに邪魔をさせないための謂わば“檻”だ」
ミネルバはソフィアとシリルを入れた球体を隣同士になるように操作し、自分とレオンから距離を取るような位置に配置する。
「安心しろ。その空間魔法は人体に何の影響も与えん。ただ自由を奪うだけだ」
「お前は俺にリベンジしたいんだろ!?だったら俺じゃなくレオンを捕まえておくべきじゃないのか!?」
シリルは戦う前にグラシアンが言っていたことを思い出してそう叫ぶ。グラシアンはそれを聞くとミネルバから本来の彼の姿へと戻ってから答える。
「お前はメインディッシュだよ。最後の最後に1対1でケリをつけてやる」
「くっ・・・」
シリルはグラシアンのもっともな意見に何も言えなくなる。
「ソフィアは!?こんなことされて黙ってられないでしょ!?」
シリルは隣にいるソフィアに対してそう問いかける。しかし返ってきた答えは意外なものだった。
「別にいいや」
「え!?」
ソフィアはカグラたちのことがあったためにミネルバにかなりの嫌悪感を持っていた。シリルの考えではてっきりこんな順番待ちのような感じでは苛立っているに違いないと思っていたのに、ソフィアは全く気にしてないようだった。
「もうグラシアンさんに戻っちゃったし。ミネルバさんなら仕返しにお嫁にいけないくらいすごいことしてやろうと思ってたけど」
「そ・・・そうですか・・・」
前言撤回。こいつはただの変態だとシリルは心の中で思っていた。
「なるほど。つまり俺はオードブルってところかな?」
唯一グラシアンに自由を奪われなかったレオンがそう言う。グラシアンはそれを聞くと不敵な笑みを浮かべた。
「確かに今のお前ではオードブルがいいところだろうな。だが、お前を最初に持ってきたのはそれが理由ではない」
彼が何を言いたいのか意味がわからなかったレオンは訝しげに彼を見つめる。
「本来のお前に覚醒する前に叩き潰す。もしくは覚醒しても魔力が全快のうちなら沈められる。そう考えてお前を最初に持ってきたんだよ」
「本来の・・・」
「レオン?」
グラシアンの言葉を聞いていたシリルとソフィアは互いに顔を見合わせて首をかしげる。
レオンはその言葉で何かをわかったのか、ただ黙ってグラシアンの次なる言葉に耳を傾ける。
「勝負しようじゃないか。レオン・バスティア。いや・・・
氷の神よ!!」
「氷の・・・」
「神・・・?」
ますます意味がわからずに頭に大量に?マークを浮かべるシリルたち。この発言にはドムス・フラウで観戦している一般人たちもざわめいていた。
「よく調べたな。もう1年前のことなのに」
すべての人が何が何なのかわからすにいる中、レオンだけは冷静にそう呟くように言う。
「鎖に繋がれた神・・・最強の魔導士を喰らうは罪を背負った幻影の竜なり」
意味深な言葉を並べるグラシアン。2人の男が今激突する。
後書き
いかがだったでしょうか?
やっとここまで来れたぁ!!
次からは実は主人公のシリルよりも細かく決まっているレオンの過去に触れていきます。
次回もよろしくお願いします。
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